第14章 規制と放射線防護

§1 概 況

 わが国では原子力の平和利用を促進する一方,この面の安全についても万全を期するため,昭和32年12月から原子炉等規制法を,33年4月から障害防止法を施行し現在に至っているが,両法の骨子とするところは各種の義務を当該事業者に課して作業従事者,ひいては周囲の一般の人達の安全を担保することである。
 原子力を利用する場合に,一番問題となるのは放射線による障害であるが,放射線障害はその影響からして2つの種類に大別される。すなわち1は個人の身体に発生する直接の障害-例えば白血病の誘発-であり,2は人類全体の遺伝的な問題である。
 近来規制および放射線防護の問題は世界的に新たな方向に発展しつつあるのは注目すべきことである。それは規制面については,原子炉の立地基準問題であり,防護面でいえば遺伝の問題を中心とする各国民全体の総被曝線量,地球全体としての環境汚染の問題および緊急事態にたいする考慮である。
 前記2法令共に施行以来,その後の経験と世界の動向に照らしておのおの数度の改正を経て現在に至っているが,今後の規制および防護の問題は広くわが国全体の見地から検討されなければならない。


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