第12章 放射能調査

§2 調査の実施状況

 わが国における放射能調査は,前年度にひきつづき,関係機関の協力のもとに,大気,海洋,陸上,動植物,食品,人体などの放射能を対象にして行なわれている。
 大気放射能については,気象庁,気象研究所,防衛庁技術研究所が塵埃,降雨などを調査し,海洋放射能については,気象庁,気象研究所,海上保安庁,水産研究所が,表層海水,深海水,沈澱物,海底土,海洋生物の調査を行なった。陸上放射能については,陸水の放射能を各都道府県衛生研究所が行ない,農業技術研究所,各地域の農業試験場および放射線医学総合研究所が,農作物の汚染との関連において土壌中の90Srの調査を行なっている。
 動植物,食品の汚染については,米,麦などの穀類や野菜について,農業技術研究所,地方農業試験所,放射線医学総合研究所,都道府県衛生研究所が調査を行なっている。動物については,家畜衛生試験所が,牛や馬の骨のなかに含まれる90Srの分析を行なっいる。食品については,35年度から栄養研究所があらたに標準食中の90Srおよび137CSの分析を開始した。
 人体については,放射線医学総合研究所が臓器や骨のなかの90Srおよび尿中の137CSの調査を行なっている。
 原子力平和利用に備えての放射能調査としては,気象庁と海上保安庁が,将来の廃棄物の海洋投棄に備えて,深海水や沈澱物の調査を行なっている。また,海上保安庁では,原子力船の入港に備えて35年度から,横浜港,神戸港の海水,海底土の放射能の調査を開始し,36年度には,気象庁がこれに加わり,港湾附近の空気中の放射能の調査をはじめることになっている。
 また,原子力研究所周辺にたいしては,同研究所,水戸地方気象台,茨城県衛生研究所が,大気,土壤,海洋,食品などの調査を行なっているが,原子力研究所の原子炉などの施設の運転による放射能水準の変化はみとめられていない。
 なお,放射能調査のために使用された予算は,34年度,5,939万円,35年度,4,823万円である。


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