第12章 放射能調査

§1 概 況

 昭和33年10月の北極圏における核実験を最後に米英ソ3国の核実験は停止され,成層圏からの放射性降下物は次第に減少しているが,放射性降下物の地上蓄積は,今なお続いている。
 フランスは,35年2月13日,サハラ砂漠において初の原爆実験を行ない,その影響は,数日後わが国でも認められた。その後もフランスは,36年4月までに3回実験を行なったが,いずれも規模が小さく,放射能調査上にはそれほど大きな影響を与えなかった。
 わが国の放射能調査は,昭和32年度から関係機関の協力のもとに,組織的に行なわれている。35年度には,前年度にひきつづき調査を行なうとともに,新らしく廃棄物の海洋投棄にそなえての深海の放射能測定や原子力船就航にともなう港湾における放射能の測定,大気,海水中の14Cの測定などを開始し,将来の原子力平和利用にともなう放射能水準の変化に備えて資料の収集をつづけている。
 また,35年11月には,放射線医学総合研究所で,科学技術庁主催のもとに,第2回放射能調査研究発表会を行ない,大気,海洋,農作物,動物,食品などの放射能の調査研究論文42編が提出され,活発な討議が行なわれた。

 放射能調査における国際的な協力としては,35年9月および36年3月に開催された第8回および第9回国連科学委員会に代表を送り,第14回国連総会の決議に基づいて科学委員会が37年に行なう「核実験による人体とその環境にたいする放射線の影響」の最終報告の検討に参加するなど活発な活動を行なった,また,気象庁に国際地球観測年(32年7月から33月12月)以来,放射能資料センター(世界で米国,ソ連,スウエーデン,日本の4ヵ国に設置されている。)を置き,(第12‐1表)のように各国の資料の収集,整理を行なっている。


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