第10章 放射線の利用
§2 アイソトープ

2−2 国内生産

 アイソープの国内生産については,34年度まで24Na,Kなどの半減期の短かいものを毎年数キュリー程度,理化学研究所の加速器によって生産してきた.34年9月以降は中止されている.36年2月からは,原子力研究所のJRR-1を使用して,24Naを生産し日本放射性同位元素協会で精製のうえ販布された.同年3月末までに金額にして3万円程度であった。
 原子力研究所では,原子力委員会の原子力開発利用長期計画にしたがって,将来の国内のアイソトープの需要をまかなうため,JRR-3の利用開始とともに本格的な生産を行なうための準備をすすめている.35年4月に同研究所のアイソトープ製造委員会が発表した生産計画によると,(第10-4表)のように第1次生産目標として24Na,32P,35S,42K,131Iおよび198Auの6核種をとり上げ,37〜38年までに,国内の需要をまかなう予定である。

 現在,これらの製造研究を行なう準備をすすめるほか,JRR-1を用いて14C,18F,64Cu,76Asなどについて,分離精製法,ホットアトム効果**による高比放射能アイソトープ製造法,不純物検定などの研究を行なっている.また,アイソトープ試験製造工場も完成した.また,(第10-5表)のようにJRR-1および60CO照射装置は利用されている。


** アイソトープを製造する場合に,放射線照射によってつくられた放射性アイソトープのもつ余分のエネルギーを利用する方法

 標識化合物の生産については,30年から民間企業で開始されていたが,生産されている核種は14C,35S,131Iなどが主なもので,6核種,化合物の種類は95となっている.国産標識化合物の販売量は,(第10-6表)のように,35年度から131Iがかなり多く販売されている.現在のところ,コストが高くまだその種類も少ない.医学,農業などの分野の利用の開発のために,新らしい製造法の研究を行なう必要がある。


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