第10章 放射線の利用
§2 アイソトープ

2−1 輸 入

 わが国で利用されるアイソトープの供給は,もっぱら外国からの輸入に仰いでいる.35年度のアイソトープの輸入量は,約55,500キュリーに達し,最高値を記録した。

 (第10-1図)および(第10-1表)のように,60CO(大線源)および32Pは33年度に,それぞれピークを示し,34年度には,全体的に減少した.35年度には,再び増加し,60COは5万5,300キュリーが輸入されて131Iとともに,今までの最高値を更新した.32Pについては医療用に使われる0が,大部分であるが,最近これが90Srなどのβ線源におきかえられつつあり,減少の傾向にある.また35年度には,1,000キュリー以上の線源が,医学関係で7件,理工学関係で5件,合計で12件輸入されている.大線源の需要は,今後も増加するものと推定される。

 一方,これをアイソトープの輸入に費した外貨の上からみると(第10-2図)のように35年度では,53万2,000ドル(約1億9,000万円)で,33年度の55万8,000ドルにはおよばないが,34年度の36万5,000ドルと比較すると45.7%の増加を示した。

 アイソトープの価格については,(第10-2表)にみられるように著しい低下がみられる.価格の低下の影響は,35年度の輸入金額にあらわれている.すなわち,35年度の輸入量は,最高を記録しながら,33年度の輸入金額を下廻っているのはこの結果によるものである.ことに35年度では,5万5,300キュリーを輸入した60Coは,輸入金額の約半分をしめ,約8,300万円に達しているが,33年度の60COの輸入量および輸入金額は,それぞれ約4万9,000キュリー,約1億円であった。

 輸入アイソトープの推移を国別にみると,(第10-3表)のように,米国,英国およびカナダ3国からの輸入が約95%をしめている.34年度にくらべると,米国および英国は,それぞれ4.6%,6%減少した.カナダは8.4%の増加をみせた.これは60COの高比放射能*のものおよび需要家の希望に合致した形状のものが得られたからである.最近では,ソ連からの輸入もわずかではあるが行なわれている,


*比放射能=ある一定量のアイソトープの全放射能/その一定量のアイソトープの質量


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