第8章 原子炉用材料

§6 ステンレス鋼および含ボロン鋼

 ステンレス鋼については,非金属介在物が少なく,熱間加工性の良好なステンレス鋼の製鋼法ならびに引抜等による寸法,精度良好な小径薄肉管の試作研究等が行なわれている。特にCo,Mn,Ta等を極度に制限した改良型ステンレス鋼を誘導式真空溶解炉で溶解し,板材および棒材に製造したのちこれを使用して電縫管およびシームレス管の製造方法を研究し,さらに得られた試作品のおのおのについての性能試験を行ない,溶接管と継目無管との比較検討を行なっている。
 次に制御材に適する材料はHf,B,Cd,希土類などの熱中性子吸収断面積の大きい元素を含むものである。このうち冷却型原子炉用として多く使用されるのは,ボロン鋼,ボロンステンレス鋼である。したがってわが国において,そのすぐれた核的性能をそこなうことなく,冶金学的な性能を改善するボロン鋼製造上の基礎資料を得るためボロン鋼およびボロンステンレス鋼の製造法ならびにその鋳造性,機械的性質等について研究が行なわれている。この研究のおもな問題点としてステンレス鋼はボロン添加によって靭性が低下するが,製鋼に際して添加物を加えることにより改良できる見込みがあるのでその点を中心にして検討されている,今後はステンレス鋼とボロン鋼,またはボロンステンレス鋼,ボロン鋼またはボロンステンレス鋼自体の溶接が必要であるのでこれらの研究開発が期待される。


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