第8章 原子炉用材料

§5 ジルコニウム合金

 水冷却型原子炉の燃料被覆材としてジルカロイおよびステンレス鋼がおもに使用されているが,燃料被覆材は信頼度の高い良質のもので寸法も細径薄肉でありさらに良好な耐食性のものが要求されている。したがってわが国でもこのような被覆材を目標に研究開発が推進されている。すなわちジルカロイについて偏折等の少ないジルカロイ鋳塊の製造研究を終え引抜,溶接等による小径薄肉管の試作研究が進められている。不活性ガス中アーク溶接ならびに真空中電子衝撃溶接による溶接引抜きパイプ素管の製造研究,熱間押出しによる継目無しパイプ素管の製造研究ならびに冷間抽伸の前後および中間の汚染の防止,焼付の防止等を研究するとともに試作したパイプの機械的性質,耐食性,耐酸化性等を検討している。また,高温炭酸ガスに対する耐食性とクリープ特性のよい材料として,ジルコニウム,銅モリブデン系合金の研究が進められているが,これは,国産のジルコニウムスポンジを使用し,スカル熔解炉を用いて合金溶製を行ない,ジルコニウム,銅モリブデン系合金の均一なインゴットを得るための諸条件について研究した。得られた合金について,高温高圧炭酸ガスに対する耐蝕性の試験,高温における各種機械的試験を行ない強力合金としての銅,モリブデン量を検討するとともに,この系の合金に第4元素を添加して熱処理効果について検討し,最終的な合金の組成ならびに熱処理方法の確立を目指して研究が行なわれている。


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