第8章 原子炉用材料

§3 アルミニウムおよびアルミニウム合金

 新しい燃料被覆料材として最近注目されてきたものとして鉄-アルミニウム合金あるいは鉄-アルミニウムを基としてこれに他の元素たとえば珪素,銅,ニッケルクロム等を添加した合金がある,これらの鉄-アルミニウム合金はステンレス鋼に比して強度があり,耐酸化性が強く,かつ中性子吸収断面積もすぐれ,低価格であるという特長が期待されている。
 したがってわが国において昭和34年度,これらの製造研究ならびに冶金学的研究が行なわれている,すなわち製造研究として消耗電極式アーク炉を利用して鉄-アルミニウム合金およびこれに, 2, 3の元素を添加した合金の鋳塊を製造するに必要な溶解研究を行なうとともにこれら合金の鍛造,圧延,熱間押出等の加工法の研究を行なっている。
 一方冶金学的研究として高純度アルミニウムおよびこれに珪素,銅,ニッケル,その他合金元素を添加したアルミニウム合金につき300°C,100気圧までの高温高圧静的純水による腐食の研究を主として金相学的に行ない各種添加元素の効果と腐食機構の追究,水の温度,pHの影響,溶解水素の影響等につき系統的に検討を行なっている。さらに引き続いて腐食挙動と合金元素の量,種類との関係,加工度の影響についての検討が進められている。
 また各種純度のアルミニウムをJRR-1および60Coガンマー線照射を利用して照射し,照射後の水による腐食を未照射のものと比較検討した。その結果放射線による水分解によって発生するH202に起因することなどが発見された。引き続いて放射線照射下における流動水中の腐食侵食について研究するため,JRR-1にインパイルループを設けて,アルミニウムについて流動水の実験を行なったが,水質,水量,試料の位置,水のガンマ線分解などの水条件が最も腐食を支配している因子であって中性子効果はほとんど見られなかった。よってガンマ線が一定かつ連続して得られるCo-60照射室に同様のループを設けて実験を行なっている。次に炉外ループによる腐食試験を低温により,アルミニウム,アルミニウム合金について行なった結果,流速温度による影響が強く,特に動水による腐食ではアルミニウム溶解が支配的な因子であることを見出した。したがって今後は高温高圧ループによりFe-Al-Cr合金,ステンレス,ジルカロイ等について腐食実験を行なう予定である。


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