第7章 原子力関連機器

§3 放射線測定機器

 放射線測定機器は,原子エネルギーを安全に運転,保守するために必要な放射線を測定する機器で,GM管式サーベメーター,比例計数管式サーベメーター,電離箱式サーベメーター,シンチレーション式サーベメーター,ガスモニター,水モニター,ダストモニター,エリヤモニター等がこれに属する。
 これらの機器は,昭和29年はじめてアイソトープの輸入が許可されそれが医学,農学,工学等に利用されここに放射線の利用がわが国においても開始されるとともに試作研究に着手されその後引続きアイソトープ利用の増大,JRR-1,IRR-2,JRR-3の建設等にともないその研究開発も発展してきているが,その母体は主として民間企業である。
 政府はこれら民間企業の研究開発を積極的に助成するため,昭和29年度から34年度までの6年間に約1億5,000万円の研究補助金ならびに研究委託金を支出している。とくに30年度には約3,100万円,31年には4,100万円,32年度には約3,800万円とこの3年間を頂点として放射線測定機器の研究開発が,大いに促進されている。 ((第7-2表参照))
 このように積極的な助成が行なわれた結果,列国にさきがけてサーベメーター,モニター類のトランジスター化,ユニット化が実現化され,現在では,殆んどの機種の真空管回路はトランジスター回路に置き換えられてきている状況である。このようなわが国の放射線測定機器工業の発展は電子工業の異常な発展と深い関係をもっており,一部の高度性能を要求されるものを除けば,わが国需要の大部分は国産製品でまかなわれている。
 ゲルマニウム結晶片を用いて,トランジスター回路を形成しているトランジスター放射線サーベメーターを例にとれば,従来の同種真空管式サーベメーターと比較すると,重量において約1/6,消費電力は約1/20となり,かつ耐久性も大で超小型となるため携帯に非常に便利であるという長所を有している。しかしながら他方,熱に弱く,温度特性ならびにノイズが大になるという短所があるので,現在これらの短所を償うための研究が行なわれている。なおトランジスター化に用いられるゲルマニウム等の半導体の電気的諸特性に及ぼす放射線の影響についての工学的データーを求めるという放射線損傷の研究が日本原子力研究所を中心に行なわれている。
 現在のところトランジスター化製品としては一般にゲルマニウムが用いられており,シリコン・トランジスターは,わが国のみならず列国においても,まだ経済上の採算が採れないので使用されてない。
 サーベメーター,モニター類を中心としたわが国の放射線測定機器は,このようにわが国における放射線利用の増大やJRR-3の建設等に伴って国産化が急速に推進され,原子力関連機器としては最も実用規模の生産段階に到着したものといえよう。したがってその性能においてもなんら列国に劣らぬ製品ができるようになり,その感度も10-7uc/cm2〜10-8μc/cm2程度のものがつくられている。さらに電子工業の発展にともない,より高性能の製品を得るための改良研究が行なわれ,34年度にも次のような研究開発が行なわれている。例えば電離箱と振動容量電位計を組み合わせ,いわゆるチャージングメソッド法により極微弱線量率(0.6μγ/h〜6mγ/h)から強線量率(0.6my/h〜600γ/h)まで変化する場合にこれを無調整で自動記録でき,しかもその積算値をも求めうる微弱放射線量測定器であるとか,256チャンネルのパルスハイト,アナライザー等の研究開発がそれである。


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