第6章 放射線の利用
§3 放射線化学

3−3民間における開発態勢

 民間における放射線化学に対する開発意欲は非常に強く,31年末頃から時に高分子工業に関係ある会社数10社が大学および官公私立研究機関と密接な連繋を保ちつつ,高エネルギー放射線を高分子に利用する研究を強力に進めようと,日本放射線高分子協会を設立し,その研究所を東京と大阪に設置した。そして東京研究所には1,200キュリーコバルト照射装置および3MeVのフアンデグラフ型加速器を,大阪研究所には1,000キュリーコバルト照射装置および2MeVフアンデグラフ型加速器を置き,活溌な研究活動を開始した。また,日本原子力産業会議では,放射線化学部会を設けてその放射線化学に関する研究開発の振興について,活発な活動を行なってきたが,放射線化学の研究はまだ緒についたばかりで応用の段階までには,なお総合的かつ大規模な研究が必要と考え,(イ)中心的な放射線化学研究所機関の設立,(ロ)専門技術者の養成,(ハ)振興開発に関する立案審議機関の設立の3点につき,関係当局に対して要望書を提出した。
 また,一部の会社ではそれぞれ独自の立場から,照射装置を設置して,本格的研究を行っているが,その数は約20社で,さらに原子力産業の五グループでは33年〜34年にかけてそれぞれ原子力総合研究所の設計,建設に着手し,基礎および応用に関する研究,技術者の養成等に乗り出そうとしているが,いずれの研究所でも放射線化学の研究に深い関心を示している。


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