第6章 放射線の利用
§2 アイソトープの利用

2−2 アイソトープの国内生産

 アイソトープの国内での生産は,これまで24Na(半減期15時間),42K(12.5時間),64Cu(13時間)等の半減期が非常に短かく輸入の不可能な核種に限られており,これら核種は理化学研究所等の加速器を使って生産されている。(第6-3表)に国産アイソトープの販売量をあげる。

 原子力研究所ではJRR-Iを使ってアイソトープ製造研究を続けており,24Na,42K,32P,35S,131I,198Auなどの核種については製造法の比較検討を終了し,さらにターゲット分離精製,高比放射能をもつアイソトープ製造法,不純物の検定,核分裂生成物からの分離生成法等につき詳細な技術的問題の解決に努力している。かくて35年度には原子炉で照射したアイソトープの分離,精製を行なう製造工場の建設予算が計上され,JRR-2(35年臨界),JRR-3(36年臨界予定)の操業開始とともに本格的に生産を行なうべく準備を進めている。生産計画によると,24Na,42Kのほか需要量の多い131I,32P,198Auおよび35Sの6核種につき,37〜38年頃にはほぼ国内の需要量をまかなうべく目標を立てている。
 原子力研究所では,このようなアイソトープ製造とともに,JRR-1および60Co,10,000キュリー照射装置については大学,民間会社等との共同利用を行なっているが,34年度のサービスの実績は(第6-4表)の通りである。


* 比放射能=ある一定量のアイソトープの全放射能/その一定量のアイソトーブの質量

 この使用件数よりすると,原子力研究所以外での利用が15〜20%にとどまっているのは照射料金,研究の秘密保持といった問題があるためであるといわれているがさらに多くの利用を期待したい。
 標識化合物*の国産については,すでに30年より民間会社によって始められ,32年にば補助金も交付され,生産量は(第6-5表)に示すように33年,34年と増加している。またその化合物の種類も95種,使用されているアイソトープも6核種におよんでいる。標識化合物はその製造に特殊の技術を必要とし,かつ化合物の種類も非常に多岐にわたるため現在のところそのコストは高い。しかしながらその利用は医学,生物,農学方面においての研究あるいは実際的応用の面でますます盛んとなりつつあるので,わが国としては新らしい化合物の製造法の開発とともにその大量生産化によるコスト低下にも力を入れる必要がある。


* 分子の一部に天然の元素の代りに放射性又は安定同位元素を含む化合物。


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