第5章 核 融 合

§1 概 況

 核エネルギーの解放はまず核分裂反応によってその実用化が成し遂げられ,原子炉により連続的にエネルギーを利用できるようになったが,さらに有望な核エネルギーの解放の方法として核融合反応がある。これは太陽のエネルギー源となっており,核融合の特色としてはこの反応に用いられる重水素が,資源的には海水中より無尺蔵にえられること,反応に当っても,放射性廃棄物を出さないこと,また直接発電が可能であり,非常に高い効率が得られることなどが挙げられる。
 核融合エネルギーを平和利用に用いるためには,反応を連続的にかつ大規模におこさねばならない。このために大電流放電により超高温プラズマを発生させ,熱核反応を利用して核融合を起させようとする方法が現在最も有望と考えられており,各国において種々の方法が発表されている。
 これらの方法を大別すると
(1) ピンチ型(ゼータ)
(2) 高エネルギー粒子注入型(D.C.X.,オグラ)
(3) 磁気鏡型(パイロトロン)
(4) ステラレーター型
 などが挙げられる。このほか,米国のアストロンをはじめ新しい着想に基く方法が,相当規模の実験に移されつつある
 しかし,熱核反応を起させるためには数億度に近い超高温を得,さらにプラズマを安定な状態に持続することが必要である。現在の段階におけるこのような装置は,もっぱら,プラズマの挙動の測定,閉じ込め方法の研究を目的としたものであり,実際に熱核反応を起すような高温も得られておらず,核融合反応が実用化に至る迄には,これらプラズマ現象の解明を始め,多くの段階を経なければならぬであろう。このためには実験装置の技術的開発を始め,綜合的,集中的研究体制を確立し,基礎的研究を積み上げてゆくことが必要である。


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