第3章 核 燃 料

§6 トリウム

 トリウムはこれを使用する原子炉系の開発に密接な関係を有するものであるが,現在世界的にみてまだこの型の原子炉の開発がウラン系のもののように進んでいないので大きな需要はない。
 34年度中に,わが国では米国およびフランスからトリウムおよびその化合物約3トンを輸入したがその大部分は原子力研究所における熱中性増殖炉の開発に供せられている。
 原子力研究所では半均質炉,水均質炉の開発を目指して半均質臨界実験装置および水均質臨界実験装置を設置した。
 半均質炉は二酸化ウランまたは炭化ウラン粉末を減速材である黒鉛中に均一に分散させたペレットに黒鉛の鞘をかぶせた半均質固体燃料を使用するものであるが,ブランケットにトリウムを使用することにより熱中性子増殖炉として設計することも可能である。34年度においては半均質燃料に適するような特殊形状の二酸化ウラン,酸化トリウム粉末製造の基礎的条件の把握を主として検討し,これらの高温における黒鉛との反応について究明が行なわれた。
 水均質炉開発のための臨界実験装置は燃料として濃縮ウランを用い,ブランケットに親物質として酸化トリウム約2トンを,重水3.1トンを混ぜたスラリーの形で用いるものである。34年度においては流動伝熱試験ループを完成し,このスラリーの流動実験を行なう予定であったが燃料や重水の入手がおくれ,本格的試験は35年度にもちこされた。
 金属材料技術研究所においても,33年度から金属トリウムおよびその合金の製造に関する研究が始められ33年度において溶融塩電解法の基礎データ,操業最適条件のデータをうることができた。34年度はトリウムフッ化物より金属トリウムとその合金を直接製造し,さらにモナズ石より純粋なトリウムフッ化物をつくる工程Q研究も行なわれた。
 一方民間企業においては政府の補助金によって酸化トリウムから高純度金属トリウムをうるための製錬に関する研究,および粗トリウムから原子炉級高純度の酸化トリウムを精製する研究が,31年度から進められ,実験室規模では一応の成果が収められている。


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