第3章 核 燃 料
§5 ウラン濃縮および再処理

5−2 再処理

 原子炉開発の具体的進展にともない,炉の運転によって生成される照射済燃料を再処理回収することが当然問題となってくる。再処理専門部会はこの問題に関する当面の研究開発方針の検討を目的として34年5月以降審議を重ねていたが,35年5月その結果をとりまとめ,中間報告を原子力委員会に提出した。この報告によればわが国の要再処理燃料の見込量はJRR-2から出る使用済燃料をはじめとして41年にはJRR-3, JPDR,コールダーホール型動力炉の使用済燃料を合わせてウラン換算60トンにのぼり,それ以降この量は漸次増加することが予想されるので,同中間報告では将来経済的にも,また外貨節約の見地からも国内において再処理を行なうことが要求されるものとして,再処理技術の確立,技術者の養成およびプルトニウム燃料研究開発のための原料供給を目的とした適切な規模のパイロットプラントを建設し,一連の操作による試験を行なうことが望ましいとしている。
 濃縮ウランは米国から,また原子力発電会社の1号炉(コールダーホール改良型)の燃料は英国から供給される。その使用済燃料の再処理はそれぞれ燃料供給国において再処理されることになっているが,使用済燃料の輸送は,厳重な梱包容器を用いて行なわねばならぬため,運賃がかさみ海外への運賃を考慮に入れればわが国で再処理を行なった方が有利な場合も考えられる。しかしながら再処理の問題はプルトニウムを燃料とする動力炉の開発と密接な関連を有しており,それとの関連において慎重に検討されねばならない。
 現在世界で研究開発が進められている再処理法は溶媒抽出法,沈澱法,イオン交換樹脂法さらには高温冶金法,フツ化物分留法等があるが,そのうち溶媒抽出法は欧米においてすでに実用の域に達し,現在では装置の改良あるいは適用範囲の拡大に研究の主眼が向けられている。
 わが国においては原子力研究所を中心に再処理に関する研究を進めているが,原子力研究所においは溶媒抽出法のほか,イオン交換法,フツ化分留法,高温冶金法等について基礎的研究を行なっている。
 溶媒抽出法については,多角的に検討が行なわれ,アルミニウムおよびウランの溶解速度,アルミニウムの沸騰カ性ソーダへの溶解,抽出塔内の流体の軸方向の混合,TBP/ケロシンの放射線損傷と抽出挙動の変化,さらには抽出機構の解明のため単滴および液柱ジェットにおける物質移動等が研究され,工学実験装置として多目的抽出塔,連鎖脈動塔およびミキサセトラが組抱立てられた。
 これらの研究の進展にともなって,原子力研究所ではJRR-3の使用済燃料を再処理するために工学汎用ホットケーブを建設することを目的として溶媒抽出法による再処理試験装置設置計画をたて,装置の設計,ケーブ,建屋の調査に入った。この建設調査にあたっては,35年3月に米国からW.Weinrich社をコンサルタントとして招いた。
 イオン交換法においては核分裂生成物の相互分離とクロマトグラフィに関する理論,イオン交換反応速度とその物質移動,イオン交換の理論と同位体分離との関係などをしらべた。高温冶金法として酸化物滓化法,ビマス溶融電解法について研究を行ない,また「低温乾式法による照射済核燃料の再処理法」に関し特許申請を行なった。
 フツ化物分留法に関しては文,Harshaw製の70A容量の小型電解槽を用いて研究を進めているが,電解時の爆発,F2に含まれるフツ酸の除去,および陽極の分極等の問題点を解決するとともに,これによって得たフッ素と臭素を反応させて,BrF3,BrF5液体フッ化剤の生成条件の検討を行ない,年度末にはBrF3-BrF5-Br2系の分留塔(蒸留温度40°C,減圧蒸留)の組み立てを終了して漏洩試験を行なった。
 このような状況にかんがみ,燃料公社は,企画室内に再処理調査班を組織して,再処理の事業化に関する資料を収集し,検討を進めている。


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