第3章 核 燃 料
§4 わが国の開発状況

4−3 精製錬

 ウラン精製錬の研究は,はやくから国立試験研究機関および民間企業等において進められてきたが,34年1月に金属ウラン日産30kgの規模をもつ精製錬中間試験工場が,燃料公社の手によって建設されるにおよび一段と進展した。
 この工場はわが国において金属ウランを中間規模で生産しうる最初のものであり精錬,還元,溶解,鋳造等の操業に必要なデータを収集するとともに,JRR-3の取替燃料用として35年4月末まで金属ウラン地金約4トンの生産を行なってきた。生産されたウラン地金は使用者である原子力研究所との間で協定した仕様に照らして品質の検定を行ない,35年5月にその引渡しを完了した。
 この工場で採用されている方式は(第3-6図(下))のようになっており,米国オークリツジ研究所で開発さたれ湿式法(Excer法)による精製工程とそれにつづくマグネシウム還元工程である。当初マグネシウム還元の際の原料である四フツ化ウランの比重が湿式法によるものは乾式法(在来法)による場合の比重より低いのでその点が懸念されていたが現在までの操業実績によれば還元成績は非常に良好であって比重は本質的な問題ではないことがわかった。また,操業当初問題とされた装置,および材料の腐食のについては,事実この操業期間中にヒギンス塔のゴム内張りの剥離のほかブロンズ製バルブ,電解還元工程のポンプ等の酸食等がみられたが,これは材質あるいは一部機械の取り換えによって解決された。現在精製工場の装置の中でフツ化沈澱工程におけるろ過器は材質的,構造的に最も問題になっているもので,まだ根本的には解決さいなれていが目下低温ろ過法の検討を進めており,これによって解決できるものとみられている。

 35年6月末現在において精鉱溶解から,インゴツトまでの全収率90.5%の成績を得ており,今後,さらにこれを93%まで引き上げるべく検討を行なっている。
 製造された金属ウラン・インゴツトの品質についてはそのうち1本を縦横に切断し,不純物の分析および偏析状態,製品の各部分の密度,硬さの違いを調べたが,いちじるしい偏析がなく均質なものであるこどが認められた。また,初期のインゴツトのうち2本について加工性試験のためαおよびγ相押出し試験を行ない,良好な結果をえた。
 次にJRR-3用ウランインゴツトの不純物分析値,密度,硬さの1例と原子力研究所の規格および国際原子力機関との協定によって定めた規格のそれとの比較を第3-7表に示す。
 この表からもわかるように不純物,密度等,JRR-3用の規格に合格しうるものであるとともに国際原子力機関から購入したものに比して優るとも劣らない製品であるといえよう。

 民間企業においては,3社がこの分野の技術開発を進めており,そのうち1社は国内の技術で硫酸浸出,有機溶媒(D-2EHPAとTBPのケロシン溶液)抽出の湿式法によるパイロツトプラントを設けて研究開発を進めており,他の2社は33年度において海外からウラン製錬に関する技術情報の導入を行なって工業化試験を行なっている。これらは何れも硝酸浸出,T.B.P抽出精製乾式還元法によるものである。


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