第3章 核 燃 料
§4 わが国の開発状況

4−1 探 鉱

 わが国のウラン探鉱は主として工業技術院地質調査所および燃料公社の手で行なわれている。地質調査所ではわが国でウラン資源賦存の可能性がある地域20万km2のうち,主として酸性迸入岩地帯*の8万km2を対象として31年度より3ケ年計画による概査を行ない33年度をもってその計画された地域の調査を終えた。その結果,わが国の重要なウラン鉱床は主として堆積岩中に期待されることが判明したので,34年度からは探鉱の重点を鉱脈型鉱床から堆積型鉱床に移行した。
 34年度は予算5,462万円,参加人員86名をもって上記20万km2の残り12万km2のうち2万5,800km2の地域について放射能強度分布概査を実施するとともに,有望と思われる地点に対して放射能異常地調査および鉱床調査を実施した。((第3-3図参照))地域の選定にあたっては花崗岩類を基盤とする新第三紀層の分布地域,すなわち,東北裏日本地域,北陸,北近畿,山陰等裏日本一帯に重点をおいて行なった。その結果現在までに山形県東田川地区,新潟・山形県境,新潟県中条地区にウラン鉱床の賦存が推定され,また京都府宮津地区,秋田県田沢地区,石川・福井県境地区などにおいて堆積岩中に放射能異常が発見された。これらの多くは花崗岩類を基盤とする新第三系の堆積岩中のものであって,今後の調査の方向を示している。34年度に行なわれた調査状況は第3-5表のごとくである。
 燃料公社は置質調査所の基礎的概査に対して,主として開発に直結する精査を行なっているが,34年度は人形峠およびその周辺地区に重点をおいて調査を実施した。((第3-5図参照))


 酸性迸入岩:一花こう岩のように珪酸にとむ火成岩

第3-5表 34年度中における地質調査所の探鉱状況

 人形峠地区は,比較的はやくから探鉱が行なわれている絋床であるが,現在までに人形峠鉱山の峠,夜次,赤和瀬の各地区の探鉱を終了し,中津河地区については竪入坑道を約1,500m堀進して鉱床の直下に到達した。
 中津河地区の鉱床は,試錐探鉱によってかなり優勢な鉱床が存在することが確認されており,35年度には鉱体に沿って坑道探鉱を実施し鉱床の品位,鉱量を確認することになっている。さらに中津河地区東方の倉見および黒岩地区においても,最近かなり広範囲に含ウラン堆積層が存在していることが判明し,放射能異常が認められているので今後の探鉱の成果が期待されている。


 (1)エアポーン;―飛行機にシンチレーション・カウンターを積んで放射能異常をしらべること。
  (2)カーボン;―自動車にカウンターを積んで放射能異常をしらべること。

 また人形峠鉱山からその北方約15kmにわたってかなり広範囲に優勢な含ウラン堆積岩が露出しており,現在までに方面,麻畑および神ノ倉地区において坑道探鉱を含む精査を実施中である。この地区における鉱床の性質,鉱物の種類などは人形峠鉱山とほとんど同様であって今後の探鉱の進展により,鉱量の飛躍的増加が期待されており,本地域は東郷鉱山として入形峠鉱山から独立した単位で探鉱が行なわれている。
 人形峠鉱山および東郷鉱山ならびにその周辺におけるウラン鉱床の鉱量,品位は今後行なわれる精査の結果をまたなければ的確には見積れないが,いままでの探鉱状況をもとにして行なわれた鉱量計算によれば品位,埋蔵鉱量は(第3-6表)のようになっている。

 上の表によれば確定,推定および予想鉱量を合わせて品位平均0.06%にして約200万トンの鉱石があると推定される。この数字はあくまでも中間段階における概算値であって,今後の探鉱の進展に伴なってさらに増加することが考えられる。
 人形峠地区以外に新潟・山形県境小国一金丸地区においてかなり広範期に含ウラン堆積岩の露頭およびウラン鉱物が発見され,35年度も引きつづき地表探鉱および試錐探鉱が行なわれることになっている。
 従来探鉱が進められていた岐阜県黒川鉱山は金属鉱床に伴なうもので局部的には高品位のウラン鉱が発見されているが平均品位は低くかつ鉱量の少ないことから経済価値が低いものと認められ,34年度をもって探鉱を打ち切った。
 通商産業省は民間企業にたいして31年度以来,探鉱補助金を交付して,これを奨励推進しているが,34年度には約2,000万円を13鉱山へ交付した。
 31年度から34年度末までに合計62鉱山に対して1億467万円の探鉱奨励金を交付したことになるが,現在までのところ思わしい成果は挙っていない。


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