第3章 核 燃 料
§3 わが国のウラン需給

3−2 供 給

 核燃料の製造という分野において,原鉱石の採堀から粗製錬,精製錬,加工および再処理の各工程を一貫して国内で行なうことは勿論望ましいことであるが,当面わが国で採堀の見通しをたてうるウラン鉱床は人形峠地区に限られ,しかも探鉱と並行して漸やく採堀試験を開始したばかりの段階にあり,前述のように現在は核燃料の需要も少ないので工業化の段階には至っておらず,所要ウランの大部分は輸入に依存している。

 現在わが国において,具体的に建設が予定されている炉の燃料を対象として生産されたものは,JRR-3の第1次燃料用として燃料公社においてつくられた天然ウラン・インゴット約4トンのみである。現在同炉の取替燃料の加工を目指して,原子力研究所および民間企業において天然ウラン燃料体の試作が行なわれているが,燃料製造技術の研究開発の焦点は,将来建設される動力炉燃料の開発に移行しつつある。
 34年度中における海外からのウラン輸入状況は次のようになっている。
 まずイエローケーキであるが,(第3-3表)に示すように昭和34年度中の輸入量は16トン強で,33年度における約7トンの2倍以上に増加した。これは燃料公社の東海製錬所の中間試験工場が34年1月から試験操業に入るとともに,同年度中にJRR-3の第1次燃料用として天然ウランインゴット約4トンの生産を行なったことによるもので,(第3-3)表に示したように燃料公社の輸入量が全体の88%を占めており,その他は1トン以下の研究用のものである。

 民間企業における輸入単価は,品質,契約量等を異にするために価格の相異も大きく,したがってその推移を判断することは困難であるが,国際的な競争入札で比較的まとまった買付を行なっている燃料公社のイエローケーキ輸入価格の推移をみると,(第3-4表)のように世界的なウランの価格低下の傾向を反映して,その輸入価格も漸次低下しており,35年5月に行なわれた入札では4.9ドル/U808ポンドと最低の価格であった。

 金属ウランに関しては国際原子力機関から購入されることになったJRR-3用燃料としての天然ウランインゴット3トンが,34年11月20日にカナダのソレル会社において引渡され,燃料公社で精製したインゴット4トンとともにカナダAMF社に加工を委託することになった。
 以上のほか研究用として34年度中に天然ウラン金属423kg,ウラン化合物886kg,トリウムおよびその化合物3,343kgが輸入された。


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