第3章 核 燃 料

§2 世界におけるウラン需給の動向

 1940年代以降軍需の形でウランに対する需要が急激に増大するに伴なって,米国および英国はこぞってウラン獲得のために国内,国外にわたってウランの探鉱,開発のための助成策をとり,またその製品に対して買入価格を保証した長期買付契約を結んで供給の安定化をはかってきた。さらに第1回ジェネーブ会議を契機として原子力の平和利用に対する関心がたかまるにつれ,ウランの探鉱および生産意欲がたかまり,1950年代には相次いで大規模な鉱床が発見され,それに伴なって生産量も飛躍的に上昇した。
 現在ソ連圏を除く世界におけるウラン鉱埋蔵量は,酸化ウランU3O8にして100万トン以上に達するといわれている。((第3-1図))
 このようなウラン埋蔵量に対して精鉱の形におけるウラン生産量の推移は(第3-2図)に示すように生産量は31年の1万4,000トンから34年の4万トン台へと一躍3倍という水準に達している。

 他方,このようなウラン生産状況に対して需要の方は,軍需がその大半を占めており,ソ連圏を除く世界における軍需はU308にしておよそ2万トン強であるといわれている。軍需の将来については,その性格からはつきりした傾向をつかむことは困難であるが,一応大巾な変動はなかろうとみられているものの,ウランの需給を推定する上に大きな不確定要素となっている。
 平和利用面においては,いわゆる世界的な原子力発電計画のくり延べ傾向によって当初予想された程の伸びを示さず,35年の平和利用面における推定需要量はU308にして約6,000トン程度で,軍需をふくめても(第3一2図)に示した34年の生産量をかなり下廻っている。
 このような軍需をも含めた全需要にたいする推定は,種々なされているが,いずれにしてもウランに対する需要が現在の生産能力に見合うようになるのは,約10年後と考えられている。
 このような傾向から,33年に米国原子力委員会(AEC)は,同年11月以降米国内で新規に開発された鉱山からの鉱石に対しては従来から行なわれてきたような買付保証を行なわず,情勢に応じて個々に契約を行なうことにした。さらに34年11月には米国ウラン生産業者保護のため,カナダ産ウランの長期買付を定めた現行協定が37年3月末ないし38年3月末の間に満期にな たあとは,改めて長期買付を行なう意向はないことを発表し,現行買付契約の残量に対しては納期を41年まで延長することになり,英国も同様の措置をとることになった。これによってウラン生産量の大部分を米英両国へ輸出していたカナダは苦境に立たされることになり,新らたな販路の開拓とともに生産機構の再編成を図る必要に迫られている。米国においても原子力委員会との間の契約について企業間での肩替わり,企業の合併等一連の合理化,再編成が行なわれつつあり,34年度は明らかに生産機構の調整過程に入ったといえよう。
 ウランには定まった国際市場といったものはないが,米国原子力委員会の買付量が自由世界生産高の大半を占めているので,その買付価格が国際的な価格の動きを判断する際の目安になっている。そのうち米国産精鉱の買付価格の推移は(第3-1表)のごとくである。

 現在,米国原子力委員会の精鉱買付保証価格の標準は10ドル/U808ポンドであるが,1958会計年度以降の平均価格はすでにその標準値を割っており,1962年以降は8ドル/U308ポンドに改められることになっている。


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