第1章 原子力のあゆみ
§2 34年度におけるおもな発展

2−6 アイソトープ利用

 わが国におけるアイソトープの利用はすでに10年の歴史を経て,いまや試験研究の段階から実用化の段階へ移りつつあるといってよい。35年7月現在のアイソトープ使用事業所数は約900箇所に達し,そのうち医療機関および民間会社等の応用面における利用が全体の63%を占めている。
 34年度のアイソトープの出荷件数は約9,000件であるが,専門分野別にみると医学関係が70%を占め圧倒的に多い。しかし最近工学,農業関係の利用も伸びつつあり,特に全般的に大線量のコバルト60の使用が急激に増加してきている。
 アイソトープの国内生産については,量的には余り多くなく,その供給はいまのところもつぱら輸入に依存している。しかしながらその輸入金額は,30年度以降毎年急増していたのが34年度には初めて若干の減少をみた。この理由は主としてこの2, 3年に顕著な増加をみたコバルト60大線源の輸入が一段落したためである。
 次に放射線化学分野については34年9月原子力委員会に放射線化学懇談会が設けられ,今後の研究開発方針の検討がすすめられ,次第に原子力開発利用の重要な部門に発展しつつある。
 現在放射線化学の研究を行なっているおもなる研究機関は,日本原子力研究所,東京工業試験所,名古屋工業技術試験所,理化学研究所,日本放射線高分子協会等10施設に及んでいる。


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