第1章 原子力のあゆみ
§2 34年度におけるおもな発展

2−4 核燃料の開発

 原子燃料関係については,人形峠地区等の探鉱が順調に進み,今のところ量的および品位的にも必ずしも十分なものとはいえないけれども,原子燃料公社において粗製錬および精製錬の研究が行なわれ,その結果無機酸に溶けやすい鉱石であるため処理上取扱いか容易である利点があるので,鉱石の探掘を行なった。
 すなわち34年7月には,わが国で試験的に採取した鉱石から溶媒抽出法により初めてkgオーダーの量のウラン精鉱が得られた。
 また精製錬においては34年1月に金属ウラン日産30kgの能力をもつ中間試験工場が燃料公社東海製錬所に完成し,この施設で輸入鉱石を用いて,国産1号炉(JRR-3・天然ウラン重水減速型研究炉)に使用すべき金属ウラン地金約4トンの生産を34年度中に完成し,35年5月同研究所へ引渡しを終っている。
 以上はウラン地金の製錬であるが,これを燃料要素に仕上げる点については,JRR-3用第1次装荷分として必要な燃料約6トンを,上記原子燃料公社の生産にかかる地金4トンと34年11月国際原子力機関を通じて購入した3トンとを合わせ,日本原子力研究所の作成した仕様書に基づきカナダAMF社に燃料製作を依頼し製作中である。
 しかしながらJRR-3の取替燃料(年間約6トン)については,できるだけわが国で製作した燃料要素を使用する方針であり,現在民間企業において試作研究を行なっており,35年度には米国へこれら試作品の照射試験を依頼し,性能をテストしている。
 なお燃料に関しては,安全性の観点から装荷前に検査を行なう必要があるので,適切な検査方法に関する研究を原子燃料公社において行なっており,またこの目的をもって10名からなる核燃料検査技術調査団が34年秋,米国,英国,フランスおよび西ドイツヘ派遣された。また濃縮ウランに関しては,さしあたり米国の供給にまつほかないが,将来需要が急増することも考えられるので,各種のウラン濃縮法のうち,特にわが国に適していると考えられる遠心分離方式について,理化学研究所に委託して設計試作研究を行なった。


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