第10章 放射線障害防止および廃棄物処理
§4 研究開発の現状

4−1 原子力研究所

(1) しゃ蔽の研究として多結晶γ線用スペクトロメーターを用い,まず線源となるJRR-1の炉心から放出されるγ線のスペクトルを測定中である。また原子炉,臨界実験装置などの事故時の中性子線量の測定のためのThresholdDetectorの開発研究では試作容器が完成し,JRR-1で誘導放射能を測定中である。
(2) 低汚染検出法改善の研究
(i) 尿中のアイソトープの定量分析法およびそれを迅速に行なうための研究として次の3つが行なわれた。
 (a) 尿中の全β,γ線の測定法は確立され,測定器を製作中である。
 (b) 尿中のウラン分析については,螢光々度計を用いて基礎実験を終え,実際の試料について測定を行なって日常の作業におりこむための問題点を検討している。
 (c) 尿および血液中の極微量ウランの分析法については,,ウラン中の螢光妨害物質の分離を検討している。
(ii) 環境中の微量アイソトープの分析法およびその迅速化の研究として,集塵装置によってえた試料を濃縮して大気中の不純物から各種の放射性核種の分離を検討した結果,濃縮は活性炭によるのが効果的であることが分った。
(iii) 全身カウンターの開発では5"φ×5"NaI用プローブを試作,しゃ蔽装置の組立を完了し,テストを行ない一応の成果を得た。
(3) 中性子吸収線量の測定に関する研究として,測定に使用する電離箱の構造上の特性について実験を行ない,種々の改良を行っている。
(4) 廃棄物処理の化学的研究として核分裂生成物ルテニウムの諸化合物の液相中および単離された固体における化学的挙動の解明のため,ルテニウム-塩酸-TBP系の溶媒抽出実験およびルテニウムおよび長寿命分裂生成物のシリカゲル等における吸着の検討を行なっている。
(5) 放射線管理面における研究としては汚染除去法の研究が行なわれ,約30種の塗料についてその汚染除去の難易について実験を行ない,資料を得た。


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