第10章 放射線障害防止および廃棄物処理
§3 廃棄物処理

3−3 廃棄物処理に関する国際会議

 国際原子力機関の文献によれば世界における原子力の各分野における現在の原子力開発計画が実現した時には廃棄物の量は年間約60トンに,また原子力が世界のエネルギー供給の大きな部分をまかなうようになる時には年間約1,000トンになると推定されており,廃棄物の廃棄はますます重要な問題である。これについて,国際原子力機関は2つの国際会議を開催しまた海洋学政府間会議においても討議された。以下これらの会議について略記する。

  3−3−1 国際原子力機関による会議

 国際原子力機関では34年11月にモナコにおいて廃棄物処理会議を,また33年10月から数回にわたり廃棄物の海洋投棄に関する専門家会議を開いた。これら2つの会議の結果を要約すれば次の通りである。
(1) 廃棄物を廃棄する場合,第1に考えなければならないことは,それが再びわれわれのところに帰って来る可能性のあるため,それによる障害からわれわれをまもることである。
(2) 土中に廃棄する場合においては液体廃棄物も移動性,容器に対する腐食性を少なくするため,固体状にするのがよい。高放射能レベル廃棄物の場合はその発生熱の除去を考えること,またいかなる方法でも廃棄地点とその方法が重要あでり,水が自然循環の過程において汚染される可能性のあることを十分考慮しなければならな。
(3) 水中への廃棄の場合においては河川へ液体廃棄物を廃棄する場合には,廃棄前に放射能を調べること,および事故に備えて貯蔵槽を設けることが必要である。沿岸,港,入江にすてる場合はさらに人間が海産物を採取すること,埋め立てて使用することを念頭におかねばならない。公海へ捨てる場合は,海は非常に大きいので将来の廃棄場所として好適とされているが,廃棄物の影響が多数の国々におよんで国際的紛争になるかも知れないような場合には,すべての放射線源に対する全遺伝線量の割当は,その国の事情にもよるが,その1/25が海産物の摂取等の海からの可能な照射に対して配分されるべきである。また海の廃棄場所は責任のある国家または国際的な権威者によって決められるべきであり,さらに海への廃棄の十分な記録を保持するために必要な情報を適当な国際的機関に報告すべきである。いずれにしても水中に投棄する場合は人間がそこを利用する事を考慮して,前もってそれの物理的化学的および生物学的過程を十分調べておくべきである。
(4) 大気への放出の場合では空中拡散の研究は過去において石炭の煙などの非放射性物質について行なわれ,多くの有用な資料があり,そのあるものは現在利用されている。また核実験は大気移動について広範な知識を与えてくれた。大気の汚れが長期間のときはもちろん,短期間の場合でも大気へ放出する廃棄物の濃度が低いのがよく,浄化器の発達は空気の汚れを制限することを可能にしつつある。
 以上が2つの国際会議の要約であるが廃棄物処理についてはわが国においても将来原子力発電,放射線利用,原子力船の運航,核燃料の処理等原子力の大規模な利用を計画しており,上記国際会議にも専門家を派遣するなどこれには重大な関心を持っている。

  3−3−2 海洋学政府間会議

 35年7月国連教育科学文化機構主催の下にデンマークのコペンハーゲンで開かれた海洋学政府間会議において,海洋汚染防止措置の緊急性および放射能の許容量決定促進のための決議案が採択された。この内容は「加盟国,国際原子力機関および関係機関は海洋の汚染防止のため全力をつくし,放射能汚染の測定には権威ある国際機関と協力し,またそれらに関する調査研究を強化すべきである」ということであった。


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