第3章 熱伝達回路の研究
§3液体金属冷却方式

原子炉用冷却材として液体金属を用いることは熱伝達上きわめて有利なことはいうまでもない。特に小型大出力 炉あるいは増殖炉等では非常に小さな表面積の炉心部から大きな熱量を除去しなければならないので,その冷却材 として液体金属が有望視されるのである。
 しかしながらトリウム系の液体金属は取扱がきわめて困難であり,特にナトリウムは空気中において爆発の危険があるのでこの取扱技術の熟練が最も重要視されるのである。
 このため民間企業においては31年度からナトリウム系冷却回路の試作を始めた。この目的は第1義的には試作経験を得ることであったため回路も非常に小さく付属設備も簡単なものであった。
 この研究は33年に終了し,その結果多くの困難に遭遇しながらも第1目的である試作に成功するとともに32年度から引き続いて研究を開始されたより大規模な装置による研究に各種の資料を提供している。
32年度から開始された研究の規模は
熱  出  力      150kW(129,000Kcal/h)
加熱器入口温度     200°C
〃 出口温度      500°C
使用金属NaK(Na56% K44%)
であって,この研究により次のような項目が解明されるものと期待される。
 i)液体金属の熱伝達
 ii)純度管理方法
 iii)NaKによる金属材料の動的腐食
 iv)Nakの流動
 V)特殊機器の特性
 ともあれ液体金属の研究は非常に困難な問題であるので,日本原子力研究所で開発中の増殖炉の進捗を考慮して継続的に行なわれるはずである。


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