第3章 熱伝達回路の研究
§1軽水冷却方式

この方式で現存する動力炉は沸騰水および加圧水型が代表的なものであるので,この両方式とほぼ相似した条件に おいて実験を行なっている。
 沸騰水型において最も重要な問題は,燃料要素表面の沸騰と焼切れ現象である。日本原子力研究所ではこの問題の基礎的な解明を行なっている。
 まず常圧下における沸騰試験装置を作り,焼切れの予備実験として熱流束と表面の発泡現象を調べ,これをもとにして高圧試験ループを設置し高温高圧下の実験を開始した。特に沸騰焼切れ限度の研究を放射線下で行ない,その限度の再現性について実験を進めている。
 これに対してさらに実規模に近い大型ループを製作して実際的なデータを得る研究が民間企業において31年から行なわれていたが,その結果が明らかになった。この研究は次のような条件で行なわれた。
 冷却水圧力       3 〜 60ata
〃  温度      133 〜 274°C
〃  流量      0.2 〜 0.6m3/min
〃  流速     0.35 〜 3mlsec
電熱入力(模擬燃料)[10 〜800W(45×104〜2.4×lO6kcallm2h)
この実験により熱流束と冷却水流速の関係,温度の分布状況等かなり満足すべき結果が得られたが非常に高い熱流束(6×106kcal/m2h)における現象は十分得られていない。また沸騰現象についてもかなり確かな再現性を示し,特殊な窓を通じて,その写真撮影に成功している。これをもとにしてさらに非定常状態における熱伝達特性の研究を続けている。
 他の民間企業においても加圧水型に近い条件を想定した実規模大のループを設置し,前者よりさらに高い冷却水圧力,温度下における特性の研究を開始した。


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