第1章 概説

 原子力研究開発の特徴はアイソトープの利用から動力炉の建設に到るまで非常に広範囲にわたり,しかも未知な新しい分野が多く,研究に多額の費用と長い期間を必要とすることである。
 なかでも原子核物理,固体物理,放射線化学等の基礎研究は原子力実用化の基礎としてきわめて重要な意味を持つものであり長期にわたり継続的に行なわれねばならないものであるが,その成果は短期間には期待できない。このような研究は大学において行なわれていることはいうまでもないが,日本原子力研究所においても建設の初期から基礎研究施設の整備を重要視してきた。すなわちファンデグラフ加速器の設置,JRR-1付属のクリスタルモノクロメーター,スローチョッパー等の調整を終り,また電子線状加速器,熱中性子線回折装置の建設をいそいでいる。今後これらの設備を利用した基礎研究におおいに期待することができる。
 原子力実用化の研究はいうまでもなく日本原子力研究所,原子燃料公社および放射線医学綜合研究所を中心として行なわれており,国公立試験研究機関,民間企業等もそれぞれの分野を分担してこれに協力している。
 民間企業は日本原子力研究所の研究に協力する過程において,この分野における先進国の技術を修得し,進んで新しい技術の開発研究を行なおうとしている。政府は研究補助金あるいは委託研究費を交付することによってこれらの企業の技術開発を促進している。
 この期間においては原子力開発の初期に着手した成果が次第に明らかになってきた。また研究の内容がより実際的,具体的となってきた。以下本年度中に行なわれた主な研究開発について述べる。


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