第9章 放射線障害防止
§1放射線障害防止法と放射線審議会

32年6月に第26通常国会で成立した「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」が33年4月から施行されることとなり,これまでに関係政令,総理府令などの整備が行なわれ,放射線取扱主任者の国家試験も33年3月に実施された。
4月以降法律の施行に伴って放射性同位元素等の使用許可および販売許可の申請が続々と提出され,その件数は使用許可申請710件,販売許可申請52件(34年6月末現在)で内訳は(第9-1表)のとおりである。
33年度はこの申請の審査に重点をおいて努力してきたが,件数が当初予想していたよりはるかに多く,現場検査を行なう必要があると認められたものが約半数あったので,これら申請の審査を完了するのを34年9月末を目標として努力している。
 これらの施設の審査にあたって問題が多いのは,古くから使用されていたものに多く,全面的改造を行なう必要があるものが相当数あった。比較的新しく設けられた施設はおおむね良好であるが,一部簡単な修理を行なう必要があるものもかなりあった。
 次に放射線取扱主任者の国家試験は33年10月に第2回,34年4月に第3回,さらに9月には第4回を行なったが,第2回は応募者460名中,合格者は178名,第3回は応募者530名中合格者は217名,さらに第4回では696名中,合格者124名であった。またこの主任者の認定は,申請者1,797名中,認定されたもの166名となっており,国家試験合格者と合わせて現在放射線取扱主任者の資格のある者は831名であるが,この数ではまだ十分といえない状況である。
33年5月に放射線障害防止の技術的基準に関する法律が制定公布され,従来の障害防止法に基づく放射線審議会は6月に基準法に基づくものに改組された。この審議会の所掌事務は,1)放射線障害の防止に関する技術的基準に関すること,2)自然に賦存する放射性物質から発生する放射線,核爆発に伴う放射性生成物から発生する放射線等の線量およびこれらを発生する物の放射性物質量の測定方法に関することである。この法律の制定により,今後関係行政機関の長が放射線障害の防止に関する技術的基準を定めようとするときは,この審議会に諮問しなければならないことになった。
 委員は,関係行政機関の職員および放射線障害の防止に関する学識経験者30名から成っている。
 現在までに,労働大臣,運輸大臣,内閣総理大臣および厚生大臣から諮問があり,いずれも慎重な調査審議のすえ答申が行なわれた。これらの答申に基づき,33年度から34年度にかけて電離放射線障害防止規則,医療法施行規則の一部を改正する省令,原子炉の設置,運転等に関する規則の一部を改正する総理府令および放射性物質車両運搬規則の一部を改正する省令が制定され,放射線障害防止の法令が急速に整備されるに至った。これらの諮問とは別に,国際原子力機関の放射性物質取扱手引についての検討をも行ない,さらに34年3月に発表されたICRP(国際放射線防護委員会)の新勧告については,審議会内に特別の部会を設け,現在調査審議を行なっており,その結論がどうなるかについては各方面から注目されている。


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