第4章 アイソトープ
§4研究成果の交流と普及

わが国においては,原子力基本法の精神にのっとり,原子力平和利用の成果は,これを一般に公開し,すすんで国際 協力に資することを根本理念としており,この方針に沿ってこれら研究の技術的情報の交換を積極的に行なってい る。
 この趣旨に基づき33年9月ジュネーブで開催された第2回原子力平和利用国際会議には次の5項目についての論文を発表した。
(I)日本におけるトレーサー量のポロニウムの化学的研究
(2)日本における核分裂性物質および核分裂生成物の放射化学的研究
(3)ベリリウムの分析化学的研究
(4)高分子に関する放射線効果
(5)ガンマ放射線による重合反応の研究
 第2回アイソトープ会議に引き続き,34年9月に第3回日本アイソトープ会議が開催された。第1回,第2回の趣旨と目的(理工農医など各学界相互だけでなく,学界と産業界とよく連絡し,たがいに成果を発表討論し,交流をよくするために,日本におけるアイソトープ関係の総合発表会を開く。)にのっとり,盛況裡に開催され,応募論文も実に279編に及び(理学40,放射線化学43,工学41,放射線関係機器20,安全取扱基準18,生物学27,農学39,医学51)活発な討論がかわされた。また,放射性廃棄物のシンポジウム,その他小規模なアイソトープの研究交流も数回行なわれた。
 その他33年の特筆すべき点としてわが国からアイソトープ工業利用視察団が,(1)アイソトープの利用状況とその経済的効果,(2)アイソトープの新しい利用と将来の可能性,(3)放射線計測器の現状,(4)荷電粒子加速器の現況,(5)アイソトープの生産と照射サービス,(6)放射性廃棄物の処理と利用,(7)安全取扱と防護,をその視察目的として,約2ヵ月あまりアメリカをはじめ欧州の実状を詳細に調査し,今後のわが国におけるアイソトープの利用開発に,その報告が期待されている。


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