第3章 核燃料
§2核燃料物質の管理

32年末に施行された「原子炉等規制法」に基づいて,この法律の施行時に現に核燃料物質の製錬を行なっていたモ ナズ石処理業者約10社は,製錬事業の指定をうけるため申請中であるが,これらは生産量も少なく,かつ,従来から 希元素の分離精製を主目的とし,酸化トリウムはその副産物としている程度であるので,その生産工場が放射能汚 染上,特に問題がなければ,事業として指定する方針を決定し,その過半については現場検査を済ませており,若干 の設備の改良,整備を待って指定する予定である。
 なお加工事業の許可は需要がないのでまだ問題となっていない。
 他方,前記法律第52条による核燃料物質の使用の許可件数は約30件である。その内訳は製錬(11件)や加工(7件)の研究用あるいは原子炉物理実験用にあてられているもののほか,陶磁器の釉や展示用等数件で,使用者は民間企業,国立機関の研究所が大部分を占めている。いずれも換気に留意し排気はフィルターでろ過し廃液には沈殿槽を設け,また放射線サーベーメーターで監視する等,管理に十分な配慮をしている。33年度下半期にこれら使用者が実際に使用した物質の量はウラン,トリウムを合わせて約1.3ton程度であるが,使用者から申請された年間使用予定量は当初のkgオーダーから数百kgオーダーに増加し試験研究の発展を物語っている。
 従来,濃縮ウランやプルトニウム等いわゆる特殊核物質は国有の線がはっきりしていたが天然ウラン燃料について,33年4月に原子力委員会は「核燃料物質の所有に関して,しばらくの間は原則として民間にその所有を認めないこと,ただし内外における諸条件が整うに従い民間の所有を考慮すること」と決定した。


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