第2章 原子炉
§6 原子炉の安全審査

原子炉の設置が次第に数を増すにつれて,原子炉の安全性の確保はますます重要な問題となっている。このため原 子力委員会は,個々の炉についての安全審査を行なうため,原子炉安全審査専門部会を設けるとともに,一般的な技 術上の基準についても検討するため,原子炉安全基準専門部会を設けることとなった。

1.原子炉安全審査専門部会

 この部会は,原子炉設置場所における気象,地震,水理その他地域的諸条件ならびに原子炉の構造およびその他の施設全般について安全性の見地から原子炉設置の適否を審査し原子力委員会の意見決定に資することを目的としており,民間企業を除く各分野の学識経験者(現在27名)で構成されている。第1回部会は33年5月に開催され,東海大学の申請にかかる原子炉の安全審査を手始めとして下記の各件について,小委員会を設けて審査を行なっている。
1)東海大学
2)日本原子力発電(株)立地事前審査
3) 〃   〃 原子炉事前審査
4)  京都大学 事前審査
5)  国際見本市
6)  立教大学
7)  日本原子力発電(株)
8)  日本原子力研究所(動力試験炉)
9)     〃   〃 (臨界実験装置)
10)  五島育英会
 これらの審査のうち,7)日本原子力発電株式会社の申請にかかるコールダーホール改良型原子炉についての小委員会は通商産業省に設けられた同一メンバーからなるコールダーホール改良型原子力発電所審査委員会と合同審査を行なう。

2.原子炉安全基準専門部会

 この部会は原子炉施設の安全性についての科学技術的基準を制定することを目的としており,大学,研究所,メーカー,電力会社等の広い分野から選ばれた学識経験者(現在,28名)で構成されている。
 第1回部会は33年6月に開催され制定すべき基準として次の5項目を決定した。
(I)立地条件に関するもの
(2)放射線の許容量等(測定法を含む。)に関するもの
(3)保安規定に関するもの
(4)非常時対策に関するもの
(5)検査に関するもの
 これらの項目についての基準を作成するために,33年7月,放射線の許容量等に関する基準を作成するための小委員会が設置されたのを初めとして,今日までに立地基準のための小委員会,原子炉施設の性能検査の技術上の基準のための小委員会が設置された。
 放射線の許容量等に関する基準は,約4ヵ月の検討を経た後, 「放射線の許容線量および放射性物質の許容濃度について」33年11月専門部会から原子力委員会に答申された。
 この答申は原子炉の設置および運転に関連する範囲に限定してICRPの新勧告を折り込んだものであり,そのおもなる項目は,制限区域およびその周辺の放射線の許容準位,放射性廃棄物の排出基準,事故時の計画的立入りの際の許容量等である。
 立地基準については,小委員会が通商産業省の原子力発電所安全基準委員会(33年4月設置)の立地専門委員会の幹事会と合同して,相互に調整をはかりながら研究炉も含めて審議を行ない,さらに部会において検討が加えられている。
 立地に関する基準は,他の基準に比べて原子炉の出力型式,防護施設,敷地の地形,水理,気象等の種々の因子に密接な関連があるので,一概に定めがたく,各分野の専門家の意見を聞きながら慎重に検討が進められている。
 次に,原子炉施設の性能検査の基準については33年11月から小委員会を設置して審議を開始し,34年3月まで検討され,同部会から原子力委員会に答申された。
 政府はこの答申の線に沿って新たに総理府令に原子炉施設の技術上の基準を追加規定し,東京国際見本市展示用原子炉から適用することになった。
 その後34年7月原子炉の設計基準制定のための小委員会を設けることを決定し,通商産業省の原子力発電所安全基準委員会の原子炉専門委員会と合同して審議を進めることとなった。


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