第2章 原子炉
§2 研究用原子炉

1.JRR-1

 ウォーターボイラー型,熱出力50kWのJRR-1は32年8月臨界に達して以来順調に運転を続け,33年度末現在,総発生熱量22,343kwh,33年度中の発生熱量16,580kWhに達した。現在,常時熱出力40kW,最高熱出力50kWで運転中であり,原子炉振動子実験,放射化分析,照射試験,その他の基礎的研究に使用されており,部外からの利用も行なわれている。
 この間,33年度末までに定期検査4回が行なわれ,部品の取替え,計器の補修等を行なうとともにこの機会を利用して,JRR-1運転短期訓練コースが4回開催された。
 なお,34年5月,分解ガスの流量計の故障が発見されたので応急修理が行なわれた。

2.JRR-2

31年秋米国AMFアトミックス社に発注されたJRR-2(濃縮ウラン重水型,熱出力1万kW)は,32年夏着工以来33年秋完成を目標に工事が進められた。
 しかし,途中においてAMFアトミックス社から設計変更の申入れがあって,冷却系統等一部の設計が変更され,また,AMFアトミックス社ならびにその下請け会社における作業の遅れなどがあって,工事は次第に遅延し,さらに本体に組み込まれる熱交換器3台のうち2台が不良で漏洩試.験に合格せず米国に送り返して修理するようなことも起こったため,工期は1年以上延長され35年春に完成の予定となった。
 この間,燃料の入手については,32年春,20%濃縮ウラン4kgの賃貸借について日本政府と米国政府との間に協定が成立し,32年10月にはAMFアトミックス社の燃料仕様書が日本原子力研究所側に提示された。日本原子力研究所では33年春,担当者を米国に派遣してAMFアトミックス社の推薦する米国の4加工業者と燃料仕様書の検討ならびに契約条件の調査

3.JRR-3

29年から引き続き行なわれていたこの炉に関する基礎研究は,33年4月ようやく設計仕様書の形で実を結び,日本原子力研究所と国内各社との間に,炉の発注についての交渉が行なわれ,34年3月に至ってJRR-3関係機器および支給材料契約が下記の各社との間に成立した。
   (契約業者名)          (契約物品)
(株)日立製作所      原子炉本体,実験設備,主重水ポンプ
 三菱原子力工業(株)    水・ガス系統
 日本原子力事業(株)    中性子計測制御設備,ディーゼル発電機および無停電電源設備,放射性同位元素製造設備
 富士電機製造(株)     水・ガス系計測制御設備,放射線モニター
 昭和電工(株)       黒鉛(素材,成型加工,組立)
 住友商事(株)       ボラル
 古河電気工業(株)     ボラル
 この契約金額は総額約10億円であった。このほか,原子炉建屋,燃料,重水等の価格を加えると,完成までに約23億円が必要であると見込まれ35年末組立完了,36年春臨界に達する見込みである。
 また,この炉に用いる初期装荷燃料要素の地金の一部として,天然ウラン約3tonを国際原子力機関から購入することとなり,34年3月には契約が成立した。その後日本原子力研究所では,カナダおよび西独の加工業者と燃料要素の加工について交渉を重ねていたが,34年8月に至って,カナダを加工先とすることに内定した。

4.東海大学原子炉

 東海大学では,早くから教育用を主目的とする小型原子炉の設置を計画し,米国NAA(North American AviationCo.,Ltd)社からウォーターボイラー型原子炉を購入することとしていたが,33年3月末に至って,原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可申請書が提出された。
 原子力委員会では33年5月の第1回原子炉安全審査専門部会にその安全性について意見を求めた。安全審査部会は,この原子炉設置計画を検討するため6月から11月にわたって,合計15回の会合を開き,慎重に審査した結果,東海大学がL-77型(ウォーターボイラー型)原子炉を東京都渋谷区に設置し運転することについて,現段階では安全性の確保は必ずしも十分であるとは認められないとの結論に達した。
 原子力委員会は安全審査部会からの答申を受けて,さらに検討を加えたが,東海大学においても現計画に検討を加えているので,その処分は保留されている。

5.国際見本市展示用原子炉

 米国原子力委員会では34年5月に東京で開催される予定の国際見本市に原子力関係展示品の一つとして小型原子炉を展示して,原子力に関する日本側の関心を高め,一般人に原子炉に対する親近感を得させたいという意向を34年初めに日本政府に伝えてきた。
 この炉は,いわゆるアルゴノート型(軽水減速濃縮ウラン不均質型)で熱出力は0.IWという低出力のものである。炉の製造,建設および運転は,米国原子力委員会の委託を受けてアメリカン・スタンダード社が行なった。
 原子力委員会は,原子炉安全審査専門部会にはかった上,この炉の計画を十分検討した結果,原子炉等規制法に定める許可の基準に適合しているとの意見を内閣総理大臣に答申した。その結果,3月末には内閣総理大臣から原子炉設置の許可がなされ,以後設計および工事方法の認可施設および性能検査,運転計画および保安規定の認可,主任技術者の選任等,必要な諸手続を完了して4月末臨界に達し,5月5日から22日まで一般に公開された。
 見本市終了後,炉は解体され,米国に送り帰されることになっている。
 ただし,米国原子力委員会としては,日本に適当な買手があれば,置いていきたいとの意向で各方面と折衝中である。

6・立教学院原子炉

 米国聖公会は,数年前から日本に研究用原子炉1基を寄付したいとの計画を持っていたが,33年に至ってこれが具体化し,聖公会関係の立教大学がこの寄付を受けて原子力研究所を設立することとなり,横須賀市大楠町を予定敷地として,34年2月原子炉設置許可申請書が立教学院から提出された。
 この炉は,研究および教育用で,熱出力100kWの水素化ジルコニウム減速濃縮ウラン固体均質型(通称TRIGA-2型)である。炉の製造業者はゼネラル・,ダイナミックス社で,スイミングプール型の1種であるが,燃料体として水素化ジルコニウムと濃縮ウランを均質に混ぜたものを使用し,固有の安全性を増しでいる点に特色がある。
 この炉の安全性については,安全審査専門部会において検討した結果,十分確保しうるものとの結論を得たが,放射線の許容量についでは近くIckP(国際放射線防護委員会)の新勧告がわが国でも採用される見通しであるので,この線に沿って炉心タンク周囲の遮蔽をあらかじめ増しておくことが要望された。原子力委員会はこの趣旨を尊重して,立教学院が要望する線に沿うよう指導し,計画の改正が行なわれた。その結果,原子力委員会としてはこの炉は,原子炉等規制法に定める許可の基準に適合するものであるとの意見を内閣総理大臣に答申し,7月には原子炉の設置が許可された。

7.五島育英会原子炉

 学校法人五島育英会は研究用原子炉の設置計画をもっていたが,34年6月に原子炉設置許可申請書を提出した。
 この原子炉の設置計画は,武蔵工業大学工学部の関係教授をもって構成する原子力研究委員会によって推進されているが,この場合,東京急行電鉄株式会社が株式会社日立製作所と技術援助契約を締結して援助を与えることになっている。これは教育用,研究用および放射性同位元素生産用に用いられ,立教学院原子炉と同じもので,据付工事は,炉の製作者であり,かつこの炉の据付,運転について十分な技術的能力を有するゼネラル・ダイナミックス社が施工にあたることになっている。
 この炉の安全性については,安全審査専門部会において検討した結果,十分確保しうるものとの結論を得,9月この炉は原子炉等規制法に定める許可の基準に適合するものであるとの意見を内閣総理大臣に答申し,10月には設置が許可された。


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