第4章 原子力開発の基本的態度
§1計画性

 わが国が原子力の研究,開発および利用を行なうにあたっての基本的態度は,理念的には原子力基本法第2条にうたわれているように「平和の目的に限り,民主的な運営の下に,自主的にこれを行うものとし,その成果を公開し,進んで国際協力に資するものとする」ことであるのはいうまでもない。一方,原子力委員会が現実にこれを推進するにあたっては,計画的であり,効率的であることが要請される。原子力の開発には少なからぬ経費と努力が必要である上に,先にも述べたようにわが国は先進諸国に著しく立ちおくれている。わが国として許される経費でこの立ちおくれを克服して行くには,どうしても計画的に見通しと目標をたて,効率的に進めることが必要である。
 原子力委員会は発足後まもなく31年3月「原子力開発利用基本計画策定要領」を決定し,基本的総合的計画をたてることを明らかにした。この策定要領によれば基本計画はこれを長期計画と,長期計画に基づき毎年策定される年次計画の2種類にわかち,長期計画については31年9月「原子力開発利用長期基本計画」を発表,年次計画については31年度以来毎年策定して今日に至っている。
 長期計画については31年度に発表したものを,さらにより詳細に定め,あるいは補正することとなり,32年12月にはまず原子力発電に関する部分を取り上げて「発電用原子炉開発のための長期計画」を発表した。続いて核燃料,原子力船,科学者・技術者の養成,核融合についても長期の計画を策定するための専門部会を置く等検討を重ねた。そのうち核燃料については,技術的,経済的に不確定の要素が多く,計画策定の段階ではないと考え,その前提としてこの問題に対する原子力委員会の見解を「核燃料開発に対する考え方」として33年12月に発表したが,他の諸計画はいずれも判断の基礎となる諸要素が不確定で,引き続き審議が重ねられてまだ決定を見るに至っていない。
 原子力に関する将来の目標を立て,それに到達する方策を具体的に示すことは,今日の段階ではそもそも無理なことであろう。しかし,それだからといって無計画に進めるわけにはいかない。原子力委員会はあらゆる問題について少なくともそのだいたいの方針を明らかにする責務があり,今後いっそうそのための努力を傾けなければならない。


目次へ          第4章 第2節へ