第3章 日本の立場
§1 日本の後進性

 世界の原子力の研究,開発において,わが国はどの程度の順位にあるのだろうか。原子力の場合に国別に順位をつけることはむずかしいが,先頭のほうを走る一団と,おくれて走るその他の国々の間にかなりの距離があり,わが国はどちらかといえば遅れて走る組の中にいる。いろいろな見方があるだろうが,先を走る組とおくれて走る組の相違は,自分の力で原子炉を開発しているかどうかによっても区別できよう。米国,英国,ソ連,フランス,カナダ等はいずれも自分独自の考え方で独自の型の原子炉を開発してきた国であり,すでにその成果としての動力炉を持ち,あるいは建設中である。また原子炉を建設し,運転していくためには核燃料が必要であるが,その製造設備を持っているのもこれらの国々である。さらに原子炉を動かせば使用済の燃料を処理しなければならぬが,みずから使用済燃料を処理しうる能力を持つのもこれらの国々に限られている。
 日本は32年から茨城県東海村の日本原子力研究所で50kWのウォーターボイラー型の研究用原子炉を動かしているが,研究用原子炉ならば上に述べた五つの国のほかにもすでに20数ヵ国が持っているし,さらに数十の国が建設または計画中である。日本ではようやく33年になって核燃料の中間規模の製錬試験工場が完成したばかりであり,再処理については研究を始めた程度である。


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