第2章 世界の動き
§4ウラン需給

第2次大戦中,軍事利用のためにひき起こされたウラン鉱の大規模の需要に対して当時のウラン鉱生産量はきわめ て乏しかったので,原子力の先進国は広く世界にその供給源を求めた。このような背景に基づき,ウラン鉱は長期 契約によってウラン生産地から先進国へ集中的に供給されている。
 したがって大部分は契約生産の形であって,需要と供給の間に現在大きな差はないようである。
 しかしながら探鉱と生産の急速な進展に伴い,ウラン鉱の供給余力は著しく増大してきたのに対し,軍需をも含めて実際上の需要の伸びは緩慢なので,今や供給過剰のきざしがみえはじめている。特に世界最大の需要者である米国において国内ウラン生産力が飛躍的に伸びたため,長期契約によって米国をはじめとする先進国ヘウラン鉱を供給していた生産国は,その契約の満了する1960年代の前半以降,このような大量の買付保証をうることは不可能な状態になった。そのころになればウラン鉱の価格はおそらく現在の価格より大幅に下るものと予想されている。
 これは原子力発電を計画する場合にかなり有利な条件となる。もっとも,より長期的視野に立って考えると,原子力の開発が進んで,たとえば原子力発電が日本のような発電コストの高い国ばかりでなく,世界的に利用されるようになれば,ウランに対する需要はふたたび増大して,第2のウラン需要興隆期がくると予想する向きもある。
 その考え方の当否は別として,近い将来ウランの需給が緩和することは確実のようで,わが国が必要とするイエローケーキについてみても価格は漸次低下の傾向を示している。


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