第7章 国際協力
§5 国際的な人事往来

5−1 原子力海外調査団の派遣

 初の原子力予算が成立した29年,原子炉築造のための調査を目的として海外調査団を派遣することとし,原子炉および原子力政策,重水その他化学方面,冶金,地質探鉱の4班14名をもつて,調査団を組織した。
 一行は,同年12月出発以来約3カ月にわたり欧米各地の先進国における原子力事情を視察して帰国したが,30年5月調査団から発表された報告書は,天然ウラン重水型多目的炉の建設を主目標とし,あわせて濃縮ウラン実験炉をこれと並行して考えることを述べており,初の本格的な海外原子力調査報告としてその後におけるわが国の原子力政策に大きな影響をあたえた。

5−2 国際連合原子力平和利用国際会議への参加

 国内において原子力開発体制もようやく準備段階に入つた30年8月,ジュネーブにおいて世界73カ国の参加のもとに,初の原子力国際会議が開催された。わが国ではかねて外務省を中心に関係13機関により設けられた原子力国際会議参加準備協議会によつて提出論文が選ばれ,また代表5名,顧問11名,その他合計21名が派遣された。

5−3 原子力アタツシエの派遣

 31年度原子力予算にはじめて原子力アタツシエの設置のための費用が外務省予算に計上された。これは,原子力の研究開発にあたつては海外情報を迅速正確に入手することが絶対必要な点にかんがみ,はじめて認められたもので,31年10月米国(ワシントン)及び英国(ロンドン)に各1名が大使館書記官として派遣された。

5−4 訪英原子力発電調査団

 英国原子力公社産業部長クリストフアー・ヒントン卿が31年5月来日し,英国における天然ウラン黒鉛型原子炉による原子力発電はすでに既存の火力発電と競合しうるとのべ,わが国各方面に多大の反響をもたらした原。子力委員会としては英国のコールダー・ホール型動力炉について詳細に検討を行うため調査団を派遣することとし,総員10名からなる調査団を10月に英国に派遣した。なお,この調査団の一部は,帰途,米,加における原子力事情を視察した。この調査報告および米加両国原子力事情視察報告は,それぞれ32年1月17日および24日に発表されたが,英国型原子炉については,採算圏内にきたことを指摘し,日本への導入に適したものの一つであるという結論を下した。

5−5 訪米原子力政策調査団

 31年9月国会議員をふくむ原子力政策調査団が米国に派遣された。この調査団は,視察・懇談等を通じて米国の原子力政策を技術・経済の両面より調査検討することを目的としたもので9月8日出発し,10月4日帰国した。とくに,同調査団がストローズ原子力委員長から秘密条項を含まぬ動力協定の締結が可能であるとの言明を得,動力協定の促進に力をかすこととなつた。

5−6 原子力産業使節団

 日本原子力産業会議は,原子力の平和利用に関するわが国原子力産業界の積極的意志を伝えて今後の友好関係を促進し,あわせて先進諸国の原子力施設の視察,関係者との懇談を目的とし,産業界各分野の代表を中心とする原子力産業使節団を欧米諸国に派遣することを決定し,29名の調査団を組織した。一行は,31年9月に出発し,アメリカ原子力産業会議年次大会に出席し,その後力ナダ,英国,フランスを訪問した。

5−7 海外からの来訪

 英国原子力公社産業部長クリストフアー・ヒントン卿は,31年5月来出東京,大阪で前後4回にわたり講演を行い,あるいは各方面との懇談会などを通じて,英国における天然ウラン黒鉛型原子炉による原子力発電計画の体験を語つて各方面に反響をよびおこした。
 アジア原子力センター設立に関連して,団長マーヴイン・フオツクス搏士(ブルツクヘブン国立研究所原子炉部長)以下総員11名からなる調査団が,31年6月来出関東,関西の各地において講演,懇談,視察を行つた。これはアジア原子カセンター設立の可能性を検討するためにアジア各国に派遣された調査団で,その調査の結果は,「アジア地域原子力センター」という報告書にまとめられた。
 なお,アメリカのジエネラル・ダイナミツクス会長ジョン・ホプキンス氏ら一行は原子力平和使節として30年5月来日,31年には,元イギリス燃料動力相ジエフリー・ロイド卿(3月),芙国のノーベル物理学賞受賞者セシル・F・パウエル博士(3月),アメリカ原子力委員会原子炉開発部副部長クラーク・グツドマン博士(4月),アメリカ原子力産業会議会長ウオーカー・L・シスラー氏(7月),フランス原子力庁総合計画局長兼物理化学部長ジュール・ゲロン氏(10月),さらに年末,アメリカ原子力産業会議事務総長チャールス・ロビンス氏(12月)と各国から原子力の専門察がおいついで来日し,わが国官民の原子力平和利用の促進に対して大きな寄与をした。
 さらに32年に入つてからも,アメリカ原子力産業会議理事K・D・ニコルズ氏,シエラーのノルウエー・オランダ合同原子力研究所長G・ランダース氏(3月)等が来日した。
 32年5月に開催された日米原子力産業合同会議においては,アメリカ側から,原子力産業関係者のほかアメリカ政府,議会関係など80名および東南アジアなど12カ国から合計53名という多数の産業人,技術者,学者および政府関係者の来日を見た。


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