第7章 国際協力
§3 国際原子力機関設立への協力

 国際原子力機関創設の構想は,29年の第9回国連総会,30年の第10回国連総会の決議を経て,31年春のワシントンにおける国際原子力機関憲章起草会議にまで発展した。ここで起草された憲章草案は,9月20日からニユーヨークの国連本部で開かれた国際原子力機関の憲章採択会議において審議され,わが国はこの会議に代表を送つて憲章草案の採択を積極的に支持した。
 この草案は,世界のほとんどすべての国を網羅する82カ国の代表によつて審議され,10月23日に最終的に採択され,26日には70カ国が署名した。この憲章は,原子力の先進5カ国(米国,英国,ソ連,カナダ,フランス)のうち,少くとも3カ国を合む最初の18カ国が批准書を米国政府に寄託すれば効力を発することになつている。その後32年10月1日にオーストリアの首都ウイーンにおいて,第1回の総会を開くことが定められ,各国ともこの線に沿つて批准の手続きをすませるようにした。わが国においては,32年5月に国会の承認を得て,7月16日米国政府に批准書を寄託することとなつた。憲章採択会議後,機関の創立の準備,および初年度の事業計画,予算,職員の問題について検討する準備委員会の選挙が行われた。わが国は国際原子力機関の発展を期して,準備委員会の選挙を重視していたが,起草国グループ12カ国以外に新たに加えら,れる6カ国の中に,日本も選ばれることになつた。
 わが国は,国際原子力機関の創設に対しては,当初から積極的に支持する態度をとつているが,機関が行う事業の内容は機関憲章に従うと,主として3つの点に要約される。すなわち,第1には世界の核燃料物質のプールとなることでおり,米英ソをはじめとする加盟諸国から提供されたウランなどを,とれを必要とする加盟国に配分することでおる。第2には,このようにして加盟国に提供される核燃料物質が軍事目的に使用されず,専ら平和目的にのみ使用されるような保障措置を講じることであり,第3には加盟国間の情報の交換,技術者の交流を積極化することでおる。この憲章にかかげられた機関の事業の具体化については準備委員会で意見をまとめるとととなり,準備委員会は,ワーキング・グループをつくり,3月上旬および4月下旬と2回にわたつてその会合を開いた。との会合において,日本側としては,とくに機関発足の初期の段階においては,情報および科学者の交換,ウランその他の燃料をふくむ物質および役務の提供に深い関心をもつていること,および,放射線その他に関する国際的標準を設けてこれを加盟国に実施させるべきことを表明した。
 準備委員会は,フーキング・グループからの報告書を検討し,10月1日オーストリアのウイーンにおいて開かれる第1回の総会に附議する報告書を作成した。


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