第7章 国際協力
§2 国際連合放射能影響調査科学委員会への参加

 国際連合における放射能影響調査科学委員会は,30年12月3日第10回国際連合総会の本会議において採択された第1委員会の報告(「人体とその環境に対する原子放射線の影響に関する情報の調整と普及」と題する決議)に基いて設けられたものでおる。
 この委員会に参加した国は,わが国をも含めて15カ国でおり,その参加国から科学者代表1名と適当数の代表代理及び顧問を集めて委員会が構成されており,その目的は,放射線の影響に関する資料の蒐集調整および普及を図ることにあつた。
 この委員会の第1回会議は31年3月ニユーヨーク市の国連本部で開催され,本委員会の設立趣旨に基き,主として会の運営方針について討議され,収集する資料の種類と提出資料の取扱い方法とについて審議された。すなわち,本委員会の調査範囲は次の5項目とすることにし,各国はこれらの項目に対する資料を提出し,その最終報告を33年中にとりまとめることを申し合せた。
 ついで科学委員会第2回会議は,31年10月ニユーヨーク市の国連本部で開かれ,わが国からも上記の資料として8篇を送付し,代表団を派遣したが,第2回会議で討議された結果とくに委員会として今後力を入れる事項として,原子核兵器(原水爆実験)に由来する放射性降下物に含まれるSr90の定量的測定が挙げられた。またCs137についても同様であつて,成層圏,下層大気,水,食糧,土壌,人体におけるレベル測定を行うととを申し合せた。また,比較的短寿命の放射性核種の測定,自然放射能のレベル測定,放射線の遺伝的影響の研究方針と計画の検討,放射性廃棄物の海洋内への投棄処分問題の解決法,少量放射線の生物学的影響等について資料を提出することになつた。
 科学委員会第3回会議は,32年4月ジュネーブ市の国際連合ヨーロツパ本部で開かれ,わが国からは資料4篇と代表団を派遣した。この会議においては,主として放射性降下物に基くSr90,Cs137の線量が生活環境に及ぼす影響について,とくにその食糧と土壌との関係が大きく取り上げられた。また,第1回会議以来放射線の遺伝学的影響にも重大な関心が払われ,各方面からいろいろの資料を集めたが,突然変異,陶汰等の問題で人類の遣伝に及ぼす影響については,その資料が充分でなく,不明の点があまりにも多いので委員会としての今後の調査研究の促進を各方面に強く要望することにした。


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