第6章 放射能調査
§1 概説

 広島,長崎の原爆,ビキニの死の灰と3回も放射能障害を受けた日本人としては,原水爆実験による放射能については深い関心をもつている。
 原水爆実験によつていわゆる「死の灰」が成層圏まで吹き上り,それが数年もかかつて降下して全世界をくまなく汚染する。その結果Sr90とか,またはCs137とかが身体に入り障害を起させる心配がある。
 しかし,この心配は感情的でなくどこまでも科学的でなければならない。米,英,ソ連の原水爆実験の死の灰の谷間となつているわが国では,大気から海洋,地表,食品にいたるまですべての分野に放射能汚染が増加しつつあり,これに対して諸外国に原水爆実験禁止を要請するにしてもその科学的資料が必要である。一方近く原子力発電を実現しようとする気運にある現在,日本人の環境汚染について不必要な恐怖をなくするためにも,一般社会に対して正確な数量的な資料によつて解明する必要がある。これら両者の基礎資料として放射能調査が重要である。


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