第2章 原子力開発態勢の整備
§6 産業界の開発態勢

 原子力行政機構の確立,原子力研究開発機構としての日本原子力研究所および原子燃料公社の発足とならんで31年度においては,産業界も活動をはじめた。30年までにも産業界としては原子力調査団やジュネーブ国際会議に参加し,29,30両年度の助成費により地味ながら民間企業の研究も行われて産業界の原子力開発に対する気運も醸成されつつあつたが,30年までのわが国の原子力問題のイニシヤテイブをとつていたのは学界と政界であつたといえよう。
 しかし31年に入つて情勢は一変した。1月20日原子力委員会委員長はアメリカのそれにならつて日本にも「原子力産業会議」を設立する構想を原子力委員会にはかり,2月3日産業界,言論界の代表者を招いてその設立を提唱した。
 その結果,民間諸団体は,あげて協力することとなり,3月1日には社団法人組織による日本原子力産業会議が発足することになつた。設立当初の会員は約250社といわれたが,この会議の設立の1年後にはその会員数も700社を越えるに至つた。原子力産業会議はアメリカの原子力産業会議に加盟し,多種の海外情報を集め,国内の動きを把握するとともに資料を各会員に提供するほか,海外からの原子力専門家の来日を機会に講演会やゼミナールを開き,またみずから各種の専門部会を持つて調査研究を行い,あるいはアイソトープの利用促進のための展覧会を開催する等の事業を行つた。
 つぎに31年に入つての産業界での注目すべき動きは,グループの結成である。原子力が逐次産業界の関心と熱意の対象となつて行くに伴つて各種の集りが生れて行くことは自然の成行きであり,30年末には原子力船調査会が造船会社を中心として発足し,31年に入つても原子力金属懇話会が誕生する等,原子力産業会議とは別に業種別の組織もみられてきたが,30年10月から31年8月の間に五つの原子力産業グループが結成されるに至つた。


目次へ          第3章 第1節へ