第1章 原子力基本法の制定まで
§4 原子力三法の制定

 上述のように,海外にあつてはジュネーブの原子力平和利用国際会議に剌戟されて各国とも原子力の研究開発の体制をととのえる動きを示し,またわが国としても懸案の日米原子力研究協定を締結して濃縮ウランを受け入れる準備がととのうに至つたので,原子力の研究開発体制の整備の必要に迫られることとなつた。
 この情勢を反映して国益内には,超党派の原子力合同委員会が設けられ,この委員会を中心として作成された原子力基本法案が議員提案として第23臨時国会に提出された。
 原子力基本法は,原子力政策を推進する憲法ともいうべきものでおり,原子力の利用を平和目的に限り,民主,自主,公開のいわゆる三原則を基本としてわが国の原子炉,原子燃料等の開発の方途の大綱を示したものである。
 この基本法案と同時に,政府は「原子力委員会設置法案」および原子力局を新設する「総理府設置法の一部改正法律案」を第23臨時国会に提出し,基本法の成立をはかるとともに,開発政策推進の中核となる原子力委員会と原子力局とを発足せしめることとした。
 これら三法案は,30年12月中旬に国会を通過,31年1月1日から実施されることになつた。当時,これらは原子力三法と称せられ,わが国の原子力開発態勢整備の契機をなしたものであつた。


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