原子力委員会ホーム > 決定文・報告書等 > 原子力白書 > 「令和2年度版 原子力白書」HTML版 > 3-3 グローバル化の中での国内外の連携・協力の推進

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3-3 グローバル化の中での国内外の連携・協力の推進

 我が国は、グローバル化の中での原子力の平和利用において、国内外での連携や協力を進め、東電福島第一原発事故の経験と教訓を世界と共有しつつ、国際社会における原子力の安全性強化に取り組んでいく必要があります。我が国は、途上国や先進国との間で二国間、多国間の協力を推進するとともに、国際機関の活動にも積極的に関与し、原子力の平和的利用の促進に取り組んでいます。


(1) 国際機関への参加・協力

 IAEAやOECD/NEAにおいては、原子力施設及び放射性廃棄物処分の安全性、原子力技術の開発や核燃料サイクルにおける経済性、技術面での検討等、技術的側面を中心に、これに政策的側面を併せた活動が行われています。


① IAEAを通じた我が国の国際協力

 IAEAは、発電分野、保健・医療、食糧・農業、環境・水資源管理、産業応用等の非発電分野に係る原子力技術の平和的利用の促進に取り組んでいます。我が国は、拠出金を通じた支援のほか、専門家の派遣等を通じて人的、技術的、財政的な支援を行っています。


1) 拠出金を通じた支援

 IAEAは、原子力の平和的利用促進の一環として、途上国を中心とするIAEA加盟国に対して、原子力技術に係る技術協力活動を実施しています。我が国は、同活動の主要な財源である技術協力基金(TCF26)の分担額の全額を1970年以降一貫して拠出し、IAEAの同活動を支援しています。
 また、我が国は、原子力の平和的利用の促進に係るIAEAの活動を支援するため、2010年5月に開催された核兵器不拡散条約(NPT27)運用検討会議にて設立された平和的利用イニシアティブ(PUI28)を通じた支援も行っています。PUIに対しては、24か国及び欧州委員会(EC29)が拠出を行っており、我が国もこれまでに合計5,100万ドル以上(政府開発援助)を拠出しています。IAEAのプロジェクトには国内の大学・研究機関、企業等が参画・協力しており、PUI拠出により国内組織とIAEAの連携を強化し、我が国の優れた人材・技術の国際展開も支援しています。さらに、2020年度にはPUIを通じて、ZODIAC等の新型コロナウイルス感染症対策の取組に対して1,100万ユーロを、原子力分野での若手女性研究者の活躍推進に向けた取組であるマリー・キュリー奨学金に50万ユーロを、それぞれ拠出しました。


2) 原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)に係る協力

 「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定」(RCA30)は、IAEAの活動の一環として、アジア・大洋州地域のIAEA加盟国を対象に、原子力科学技術分野での共同研究や技術協力を促進・調整することを目的として1972年に発効しました。基本的な枠組みは残しつつ一部を改正して2017年に発効した新協定の下では、2021年3月末時点で、我が国を含む22の締約国が、RCAの下で実施される農業、医療・健康、環境、工業分野の技術協力プロジェクトに参加しています。
 我が国は、RCA総会、RCA政府代表者会合、ワーキンググループ会合等への出席を通じて、RCAの政策の決定に積極的に関与しているほか、我が国の専門家や研究機関、大学や病院の協力の下、各分野のプロジェクトに参画し、関連会合の開催や専門家派遣等を含む様々な協力を行っています。特に、放射線医療分野において長年主導的な役割を果たしており、アジア・大洋州地域のがん治療の発展に貢献しています。


3) 原子力安全の向上

 IAEAを中心として、加盟国の原子力安全の高度化に資するべく国際的な規格基準の検討・策定が行われており、我が国も、原子力施設、放射線防護、放射性廃棄物及び放射性物質の輸送に係るIAEA安全基準文書31の継続的な見直し活動に協力しています。
 また、東電福島第一原発事故後、IAEAと我が国は事故対応と国際的な原子力安全強化のため緊密に協力しています。IAEAは、2013年に福島県内に原子力事故対応等のための緊急時対応援助ネットワーク(RANET32)の研修センター(CBC33)を指定しました。また、量研は2017年にCBCとして指定され、2020年11月にCBCとして再指定を受けました。CBCでは、国内及びIAEA加盟国の政府関係者等向けに、原子力緊急事態時の準備及び対応の強化を目的としたIAEAワークショップが1年に数回程度開催されています。


4) 原子力発電の導入に必要な人材育成

 IAEAは、原子力発電新規導入国・拡大国の国内基盤整備のための人材育成の支援を行っており、我が国はその取組に協力しています。その一環として、我が国側のホストを原子力人材育成ネットワークが務め、IAEAとの共催により、「Japan-IAEA原子力エネルギーマネジメントスクール」や「IAEA原子力発電基盤整備訓練コース」等を開催しています。


5) 革新的原子炉及び燃料サイクルに関する国際プロジェクト(INPRO)

 革新的原子炉及び燃料サイクルに関する国際プロジェクト(INPRO34)は、エネルギー需要増加への対応の一環として、2000年にIAEAの呼び掛けにより発足したプロジェクトです。安全性、経済性、核拡散抵抗性等を高いレベルで実現し、原子力エネルギーの持続可能な発展を促進する革新的システムの整備のための国際協力を目的としています。2021年3月末時点で、我が国を含む41か国と1機関(EC)が参加しています。


② OECD/NEAを通じた原子力安全研究への参加

 我が国は、OECD/NEAにおける様々な原子力安全研究等にも参加しています。例えば、「福島第一原子力発電所の原子炉建屋及び格納容器内情報の分析」(ARC-F)プロジェクトでは、我が国が中心となって、炉心溶融した原子炉の過酷事故の進展や原子炉の現状に関する知見を提供しています。また、我が国は、各国規制機関の協力強化、新設計原子炉の安全性向上のための参考となる規制実務、基準確立を目的としてOECD/NEAが2006年に開始した多国間設計評価プログラム(MDEP35)にも参加しています。


コラム ~IAEA総会~

 IAEA総会は、毎年1回、加盟各国の閣僚級代表等が参加して開催されます。2020年9月に第64回総会が開催され、井上内閣府特命担当大臣が一般討論演説(ビデオ録画)を行い、以下の我が国の取組等について説明しました。

  • 新型コロナウイルス感染症との闘いが続く中での、グロッシー事務局長のリーダーシップへの敬意表明
  • 2020年2月のグロッシー事務局長の訪日(協力強化を進める有意義な機会)
  • 東電福島第一原発事故後の取組(多核種除去設備(ALPS)等で浄化した処理水の取扱いの検討状況)
  • 原子力の平和的利用(我が国がPUIを通じて、新型コロナウイルス感染症対策及び奨学金に支援)
  • 保障措置の強化・効率化に向けたIAEAの取組支持
  • 北朝鮮の核問題(国際社会と協働していくという強いコミットメントの再確認等)
  • イランの核問題(核合意の支持、イランによるコミットメントの継続的な低減への強い懸念、イランとIAEAとの共同ステートメントの歓迎、IAEAへの支援継続の表明等)

第64回IAEA総会で演説する井上内閣府特命担当大臣

第64回IAEA総会で演説する井上内閣府特命担当大臣

(出典)IAEA「Video Streaming Portal」より作成



(2) 二国間原子力協定及び二国間協力

① 二国間原子力協定に関する動向

 我が国は、移転される原子力関連資機材等の平和利用及び核不拡散の確保等を目的として、二国間原子力協定を締結しています。2021年3月末時点で、我が国は、カナダ、オーストラリア、中国、米国、フランス、英国、ユーラトム、カザフスタン、韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシア、トルコ、UAE及びインドとの間で二国間原子力協定を締結しています。なお、我が国を含む主要国(米国、フランス、英国、中国、ロシア、インド)における、二国間原子力協定に関する最近の主な動向は表3-4のとおりです。


表3-4 主要国における二国間の原子力協定等に関する最近の主な動向(過去3年間)
国名・地域名経緯等
日本-英国
2020年12月 日本と英国が原子力協定改正議定書に署名
米国-メキシコ
2018年5月 米国とメキシコが原子力協定に署名
米国-英国
2018年5月 米国と英国が原子力協定に署名
米国-ポーランド
2019年6月 米国とポーランドが原子力協力覚書に署名
米国-ポーランド
2020年10月 米国とポーランドが原子力開発に関する協力協定に署名
米国-ブルガリア
2020年10月 米国とブルガリアが原子力協力覚書に署名
英国-オーストラリア
2018年8月 英国とオーストラリアが原子力協定に署名
英国-カナダ
2018年11月 英国とカナダが原子力協定に署名
ロシア-ルワンダ
2018年6月 ロスアトムとルワンダインフラ省が原子力協力覚書に署名
インド-EU
2020年7月 インドとユーラトムが原子力研究開発に関する協力協定に署名

(出典)各国関連機関発表に基づき作成


② 米国との協力

 我が国と米国は、日米原子力協定を締結し様々な協力を行ってきています。同協定は2018年7月に当初の有効期間を満了しましたが、6か月前に日米いずれかが終了通告を行わない限り存続することとなっており、現在も効力を有しています36。同協定は、我が国の原子力活動の基盤の一つをなすだけでなく、日米関係の観点からも極めて重要です。
 また、2012年の日米首脳会談を受けて設立された「民生用原子力協力に関する日米二国間委員会」が定期的に開催されています。同委員会の下には、核セキュリティ、民生用原子力の研究開発、原子力安全及び規制関連、緊急事態管理、廃炉及び環境管理の5項目に関するワーキンググループが設置されています。


③ フランスとの協力

 我が国とフランスは、原子力規制、核燃料サイクル、放射性廃棄物管理等の分野において、長年にわたり協力関係を構築してきました。2021年1月にオンラインで「原子力エネルギーに関する日仏委員会」の第10回会合が開催され、両国の原子力エネルギー政策、原子力安全協力、原子力事故の緊急事態対応、核燃料サイクル、放射性廃棄物の管理、研究開発、東電福島第一原発の廃炉、オフサイトの環境回復について意見交換が行われました。


④ 英国との協力

 2012年の日英首脳会談を受けて開始された「日英原子力年次対話」の第9回会合が、2020年12月にオンラインで開催され、原子力政策、廃炉及び環境回復、原子力研究・開発、パブリック・コミュニケーション、原子力安全及び規制に関する両国の考え方や取組について意見交換が行われました。
 日英原子力協定は、英国のEU及びユーラトム離脱後も英国に適用されます。しかし、英国のユーラトム離脱に伴い同国において適用される保障措置等に変更が生じるため、日英原子力協定にこれを反映すべく、両国政府は2020年12月にロンドンで、現行協定の一部を改める日英原子力協定改正議定書に署名しました。


⑤ その他

1) 原子力委員会による原子力技術及び放射線利用分野における国際交流

 原子力委員会は、インドネシア原子力庁との共催により、2020年11月にオンラインで「原子力技術研究に関する日インドネシア共同シンポジウム」を開催しました。このシンポジウムは、両国の原子力技術及び放射線利用分野における研究・高等教育機関間の交流の促進を図るとともに、当該分野の研究開発の進展及び国際的な人材育成・確保に貢献することを目的として、初めて開催されたものです。

コラム ~インドネシアにおける原子力利用の進展と我が国との協力~

 インドネシアにおける原子力利用は、1954年に、太平洋における核実験に対する放射能調査に係る国家委員会が設立されたことから始まりました。原子力エネルギーの平和利用の促進を目的として、1958年には原子力評議会と原子力機関が設立され、その後の組織改編によりインドネシア原子力庁が設置されました。
 1965年にインドネシア初の原子炉(TRIGA-Ⅱ)が運転を開始して以来、研究開発や放射性同位元素の製造等を目的とした原子炉が稼働しています。ジャカルタの原子力研究センターでは、コバルト60を利用したガンマ線照射装置を運用しています。また、セルポン原子力研究センターに設置された同国3番目の研究用原子炉は、放射性同位元素の製造や中性子ビームを利用した医療の基礎研究等、様々な用途で活用されてきました。また、放射線の農業利用も精力的に進められており、2014年には、放射線を用いた品種育成の成果に対してIAEAから優秀賞を授与されました。
 一方で、発電を目的とする商業用原子力発電所はありませんが、設置に向けた検討が進められています。1991年からは、日本企業である株式会社ニュージェックが参加した研究プロジェクトにより、原子力発電所の設置サイト選定及び実現可能性の評価が行われ、2000年代の早い時期に原子力発電所を導入するための妥当性検討結果が取りまとめられました。
 原子力機構とインドネシア原子力庁は、2007年に原子力の平和利用分野における取決めを作成しています。また、原子力機構は2014年に、インドネシア原子力庁との間で「高温ガス炉の研究開発に関する協力のための附属書」を作成しています。


セルポン原子力研究センターの多目的炉

セルポン原子力研究センターの多目的炉

(出典)インドネシア原子力庁「The GA Siwabessy Multi Purpose Reactor」



2) 文部科学省による放射線利用技術等国際交流(研究者育成事業・講師育成事業)

 文部科学省は1985年から原子力分野での研究交流制度を実施しており、近隣アジア諸国の原子力研究者や技術者を我が国の研究機関や大学へ招へいし、放射線利用技術や原子力基盤技術等に関する研究、研修活動を実施しています。
 また、講師育成事業では、アジア諸国から講師候補者を我が国に招へいし、専門家による講義や各種実験装置等を使用した実習、原子力関連施設への訪問等を通じて、母国において技術指導ができる原子力分野の講師を育成しています。加えて、講師育成研修の修了生が中心となり、母国で研修を運営し、講師を務めます。我が国から相手機関に専門家を派遣し、講義を行うとともに、各国の研修の自立化に向けたアドバイスを行っています(図3-6)。2020年度は、オンライン形式に変更して、研修等を実施しました。


招へい者の研修の様子

図3-6 招へい者の研修の様子

(出典)左:原子力機構 講師育成事業ニュースレターVol.7(2021年3月)、右:原子力安全研究協会 文部科学省研究者育成事業(原子力研究交流制度)ニュースレター第7号(2021年3月)


3) 経済産業省による原子力発電導入支援に関する取組

 経済産業省資源エネルギー庁は、原子力発電を新たに導入・拡大しようとする国に対し、我が国の原子力事故から得られた教訓等を共有する取組を行っています。2020年度はインドネシア、ポーランド、チェコ、UAE等の原子力発電導入国等について、オンライン形式のセミナー開催や我が国専門家等の派遣等を通じて、原子力発電導入に必要な法制度整備や人材育成等を中心とした基盤整備の支援を行いました。


4) 外務省による各国に対する非核化協力

 旧ソ連時代に核兵器が配備されていたウクライナ、カザフスタン、ベラルーシの3か国は、独立後、非核兵器国としてIAEAの保障措置を受けることとなりました。しかし、技術的基盤を欠いていたため、我が国は3か国に対して国内計量管理制度確立支援や機材供与等の協力を実施し、非核化への取組を支援してきました。


5) 革新炉等の研究開発における協力

 高温ガス炉や高速炉等の革新的な原子炉等に関する研究開発に当たっては、政府間や研究機関間で協力覚書等を作成し、取組を進めています37


(3) 多国間協力

① 主要国との多国間協力

 2010年に発足した国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC38)は、原子力安全、核セキュリティ、核不拡散を確保しつつ、原子力の平和利用を促進するための互恵的なアプローチを目指し、参加国間の協力の場を提供することを目的としています。我が国も、原子力の平和利用の拡大に向けて、我が国の経験と知見を生かしながら各国と協力する方針を表明しています。
 IFNECは、2021年3月末時点で、参加国34か国、オブザーバー国31か国、オブザーバー機関4機関で組織されています。各参加国、機関の閣僚級メンバーで構成される執行委員会、米国、アルゼンチン、中国、我が国、ケニア、ロシアの6か国の局長級メンバーにより構成され、活動を実施する主体である運営グループ、特定分野での活動を実施するワーキンググループの3階層で構成されており、我が国は運営グループの副議長を務めています。


② アジア地域を始めとする途上国との多国間協力

 我が国と開発途上国との協力は、相手国の原子力に関する知的基盤の形成、経済社会基盤の向上、核不拡散体制の確立・強化、安全基盤の形成等に寄与することを目的としています。
 我が国はアジア地域における地域協力として、アジア原子力協力フォーラム(FNCA39)、アジア原子力安全ネットワーク(ANSN40)、ASEAN41+3(日中韓)等の活動等に貢献しています。


1) アジア原子力協力フォーラム(FNCA)における協力

 地理的に我が国に近い近隣アジア諸国は、経済的にも我が国と密接な関わりがあり、農業・工業・医療・環境の各分野での放射線の利用、研究用原子炉(以下「研究炉」という。)の利用、原子力発電所建設や安全な運転体制の確立等、多くの課題を共有しています。
 FNCAは、原子力技術の平和的で安全な利用を進め、社会・経済的発展を促進することを目的とした、我が国主導の地域協力枠組みで、我が国、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ及びベトナムの12か国が参加しています(IAEAがオブザーバー参加)。毎年1回、大臣級会合、スタディ・パネル、コーディネーター会合の3つの会合と、それらの準備会合である上級行政官会合を内閣府主催で開催しています(図3-7)。また、放射線利用を中心とする4分野において7件のプロジェクトが実施されており、それらのうち6件を文部科学省が実施しています。


イ) 大臣級会合

 大臣級会合では、FNCA各国の原子力所管の大臣級代表により、原子力技術の平和利用に関する地域協力のための政策対話を行っています。
 2020年12月には、第21回FNCA大臣級会合がオンラインで開催されました。同会合では、グロッシーIAEA事務局長による「IAEAにおける新型コロナウイルス感染症対策への取組」をテーマとした基調講演や、「新型コロナウイルス流行下での原子力関連活動状況と新型コロナウイルスに対応する原子力技術開発状況について」をテーマとした各国による報告が行われ、新型コロナウイルスにより停滞を余儀なくされたFNCAプロジェクト活動の正常化、医療分野でのFNCAとIAEAの将来的連携の可能性等に言及した共同コミュニケが採択されました。


ロ) スタディ・パネル

 FNCAは従来、放射線利用等の非発電分野での協力が主でしたが、参加国におけるエネルギー安定供給及び地球温暖化防止の意識の高まりを受け、原子力発電の役割や原子力発電の導入に伴う課題等を討議する場として、スタディ・パネルを開催しています。2021年3月にオンラインで開催されたスタディ・パネルでは、「原子力同位体技術と気候変動」をテーマとして、各国からの発表や議論が行われました。


ハ) コーディネーター会合

 FNCAの協力活動に関する参加国相互の連絡調整を行い、協力プロジェクト等の実施状況評価や計画討議等を行う場として、コーディネーター会合を年1回開催しています。


ニ) プロジェクト

 FNCAでは現在、図3-7に示す4分野で7件のプロジェクトが実施されています。プロジェクトごとに、通常年1回のワークショップ等が開催されており、それぞれの国の進捗状況と成果が発表・討議され、次期実施計画が策定されます。2020年度は、オンライン形式でワークショップ等を開催しました。


FNCAの構成

図3-7 FNCAの構成

(出典)FNCAウェブサイト「FNCAとは」


2) ASEAN、ASEAN+3、東アジア首脳会議(EAS)における協力

 アジアの新興国は原子力発電の新規導入を検討しており、ASEAN、ASEAN+3(日中韓)及び東アジア首脳会議(EAS42:ASEAN+8(日中韓、オーストラリア、インド、ニュージーランド、ロシア、米国))の枠組みにおける原子力協力も行われています。
 2020年11月には、ASEAN+3及びEASのエネルギー大臣会合がオンラインで開催されました。ASEAN+3エネルギー大臣会合の共同声明では、ASEAN+3諸国における原子力リテラシー、国民の受容と意識、原子力科学技術に係る人的能力開発に関する継続した協力を確認し、民生用原子力開発に関する核の安全、セキュリティ及び保障措置の重要性に留意し、原子力機構の核不拡散・核セキュリティ総合支援センターのイニシアティブへの期待を表明しました。また、民生用原子力開発の最良事例と経験を共有するため、ASEAN+3メカニズムを引き続き活用することを推奨しました。


ASEAN+3エネルギー大臣会合の様子

図3-8 ASEAN+3エネルギー大臣会合の様子

(出典)経済産業省「ASEAN+3及び東アジアサミットのエネルギー大臣会合が開催されました」(2020年)


3) アジア原子力安全ネットワーク(ANSN)における協力

 ANSNは2002年に開始したIAEAの活動の一つで、東南アジア・太平洋・極東諸国地域における原子力安全基盤の整備を促進し、原子力安全パフォーマンスを向上させ、地域における原子力の安全を確保することを目的としています。ANSNには我が国、バングラデシュ、中国、インドネシア、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、タイ及びベトナムが加盟しているほか、準加盟国としてパキスタン、協力国としてオーストラリア、フランス、ドイツ、米国が参加しています。我が国は設立当初から活動資金を拠出し積極的に活動を支援しています。



  1. Technical Cooperation Fund
  2. Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons
  3. Peaceful Uses Initiative
  4. European Commission
  5. Regional Cooperative Agreement for Research, Development and Training Related to Nuclear Science and Technology
  6. 安全原則(Safety Fundamentals)、安全要件(Safety Requirements)、安全指針(Safety Guides)の3段階の階層構造。各国の上級政府職員で構成される安全基準委員会で承認を経て策定。2021年3月末時点で、約130件の安全基準文書が策定済。
  7. Response and Assistance Network:2000年にIAEA事務局により設立された、原子力事故又は放射線緊急事態発生時の国際的な支援の枠組み。2021年3月末時点の参加国は、我が国を含む35か国。
  8. Capacity Building Centre
  9. International Project on Innovative Nuclear Reactors and Fuel Cycles
  10. Multinational Design Evaluation Programme
  11. (日米原子力協定第16条1及び2)
    1(略)この協定は、三十年間効力を有するものとし、その後は、2の規定に従って終了する時まで効力を存続する。
    2 いずれの一方の当事国政府も、六箇月前に他方の当事国政府に対して文書による通告を与えることにより、最初の三十年の期間の終わりに又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
  12. 第8章8-2「研究開発・イノベーションの推進」を参照。
  13. International Framework for Nuclear Energy Cooperation
  14. Forum for Nuclear Cooperation in Asia
  15. Asian Nuclear Safety Network
  16. 東南アジア諸国連合:Association of Southeast Asian Nations
  17. East Asia Summit



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