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7-6 放射線利用分野の人材育成

(1) 国内における人材育成

 様々な分野で利用され、私たちの生活や社会に便益をもたらす放射線ですが、取扱いを誤れば、環境を汚染したり、人体に悪い影響を与えたりする可能性があります。そのため、放射線を取り扱う人が適切な知識と理解をもって、安全に作業や管理を行う必要があります。しかし近年では、予算の減少や施設の老朽化等のために、放射線を利用するための教育や訓練を行う機会が減少しています(図 7-20)。また、人材不足から、技術や知識が継承されないことで、今後の安全管理に支障を来す状況が生じる可能性もあります。


図 7-20 大学等における放射線管理の懸案事項

(出典)第18回原子力委員会 資料第1号 原子力規制委員会「放射線利用の安全確保における課題について」(2016年)


 量研は、7-3(2)の原子力規制委員会の「放射線安全規制研究戦略的推進事業」の枠組みにおいて「放射線防護研究分野における課題解決型ネットワークとアンブレラ型統合プラットフォームの形成事業」を行っています。同事業では、放射線防護の喫緊の課題の解決のために放射線防護に関連する学術コミュニティと放射線利用の現場をつなぐネットワークが構築され、量研、原子力機構、公益財団法人原子力安全研究協会がネットワークによる自立的な議論や調査、アウトプットの創出等を支援する役割を担っています。同事業において、放射線防護分野のグローバル若手人材の育成等が実施されています[23]


(2) 海外における放射線利用分野の人材育成協力

 我が国では、原子力や放射線利用に関する研究人材の交流制度を通じて海外の人材を受け入れています。しかし、途上国の人材には、我が国で育成された後に必要なRI・放射線施設や設備、機器等が母国で不足しているために、研究が十分に行えない場合があります。国際協力での技術交流や共同開発、共同事業において、人的な貢献以外にもRI・放射線機器等の研究資材に関する支援が必要とされています。我が国が主導するアジア地域での原子力平和利用協力の枠組みFNCAでは、放射線利用開発と研究炉利用開発、原子力安全強化、原子力基盤強化に関するプロジェクトが実施されています。放射線利用開発の分野では、マニュアルやガイドラインの作成等に我が国の多くの研究者が携わっており、アジアにおける放射線利用の発展に大きく貢献しています。
2018年12月6日に開催された第19回FNCA大臣級会合では、「アジア農業への放射線技術利用による貢献」をテーマに円卓討議が行われました[24]。FNCAの枠組み内での、アジア諸国の放射線利用分野における国際協力の成果については、第3章3-3、(3)、②「アジア地域をはじめとする途上国との多国間協力」に記載しています。
 また、国際原子力機関(IAEA)は、天野元事務局長の掲げた「平和と開発のための原子力」の下、原子力の平和的利用の促進のため、途上国を中心とする同機関の加盟国に対して、保健、農業、環境、産業応用等の様々な分野において原子力技術を活用した技術協力活動を実施しています。我が国の大学、研究機関、企業等は、研修生の受け入れや専門家の派遣等を通じて、IAEAの活動に人的、技術的な協力を行っています。また、我が国は、IAEAの技術協力基金(Technical Cooperation Fund)に対する拠出や平和的利用イニシアティブ(Peaceful Uses Initiative)を通じた支援により、IAEAの同活動を支援しています。特に、アジア・大洋州において我が国は、「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定:RCA)」(第3章3-3、(3)、2)参照)の枠組において、IAEA技術協力プロジェクトの実施を通じ、同地域における開発課題の解決に向け、がん治療、核医学、放射線育種、食品偽装対策、海洋モニタリングや水資源管理等の多様な分野でこの地域の人材育成に、貢献しています。



    



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