原子力委員会ホーム > 決定文・報告書等 > 原子力白書 > 「令和元年度版 原子力白書」HTML版 > 3-3 グローバル化の中での国内外の連携・協力の推進

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3-3 グローバル化の中での国内外の連携・協力の推進

 我が国は、グローバル化の中での原子力の平和利用において、国際機関への支援等を通じて国内外での連携や協力を進め、東電福島第一原発事故の経験と教訓を世界と共有しつつ、国際社会における原子力の安全性強化に取り組んでいく必要があります。IAEAは、グロッシー事務局長の下、国際社会における気候変動対策や社会・経済的発展において、発電分野をはじめとする原子力技術が重要な役割を果たすとの評価を示しています。こうした原子力の役割を踏まえ、世界では原子力の平和利用を継続する先進国に加え、新たにこの利用を導入・拡大する途上国が存在しています。我が国は途上国、先進国との間で、二国間、多国間の協力を推進するとともに、国際機関の活動にも積極的に関与しています。


(1)国際機関への参加・協力

 IAEAやOECD/NEAにおいては、原子力施設及び放射性廃棄物処分の安全性、原子力技術の開発や核燃料サイクルにおける経済性、技術面での検討等、技術的側面を中心に、これに政策的側面を併せた活動が行われています。

① IAEAを通じた我が国の国際協力
 IAEAは、発電分野、及び保健・医療、食糧・農業、環境・水資源管理、産業応用等の非発電分野に係る原子力技術の平和的利用の促進に取り組んでいます。その関係で、2018年11月28日から30日には、原子力科学技術の応用と持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取組の促進を目的としたIAEA原子力科学技術閣僚会議がIAEA本部で開催され、137か国から約1,100名の代表団が参加し、54か国から閣僚・政務レベルの代表者が参加しました[67]
 我が国は、原子力の平和的利用の促進にかかるIAEAの活動を支援するため、IAEAに対する拠出金を通じた支援を行うほか、我が国の研究機関、大学、企業等も、専門家の派遣、研修員の受入れ、関連会合のホスト等を通じて、人的、技術的、財政的な支援を行っています。


1) 我が国の拠出金を通じた支援
 IAEAは、原子力の平和的利用促進の一環として、途上国を中心とするIAEA加盟国に対して、原子力技術に係る技術協力活動を実施しています。我が国は同活動の主要な財源である技術協力基金(TCF27)の分担額の全額を1970年以降一貫して拠出し、IAEAの同活動を支援しています。
 また、我が国は、原子力の平和的利用の促進に係るIAEAの活動を支援するため、平和的利用イニシアティブ(PUI28)を通じた支援も行っています。PUIは、2010年5月に開催された核兵器不拡散条約(NPT29)運用検討会議にて、原子力の平和的利用分野におけるIAEAの活動を促進するための追加的な財源として設立されました。PUIに対しては、現在24か国及び欧州委員会(EC30)が拠出を行っており、これまでに約1.5億ユーロが拠出されています(2020年3月末時点)[68]。我が国もこれまでに、合計3,400万ドル以上(政府開発援助、米国等に次ぐ4番目の拠出額)を拠出し、IAEAの取組を支援しています[69]。IAEAのプロジェクトには国内の大学・研究機関、企業等が参画・協力しており、PUI拠出により国内組織とIAEAの連携を強化し、我が国の優れた人材・技術の国際展開も支援しています。


2) 原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)に係る協力
 「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA31)」は、IAEAの活動の一環として、アジア・大洋州地域のIAEA加盟国を対象に、原子力科学技術分野での共同研究や技術協力を促進・調整することを目的として1972年に発効しました(我が国は、1978年より締約国)。2020年3月時点で、我が国を含む22の締約国が、RCAの下で実施される農業、医療・健康、環境、工業分野の技術協力プロジェクトに参加しています[70]
 我が国は、RCA総会、RCA政府代表者会合、ワーキンググループ会合等への出席を通じて、RCAの政策の決定に積極的に関与しているほか、我が国の専門家や研究機関、大学や病院の協力の下、各分野のプロジェクトに参画し、関連会合の開催や専門家派遣等を含む様々な協力を行っています。特に、放射線医療分野において長年主導的な役割を果たしており、アジア・大洋州地域のがん治療の発展に貢献しています。


3) 原子力安全の向上
 IAEAを中心として、加盟国の原子力安全の高度化に資するべく国際的な規格基準の検討・策定が行われており、我が国も、原子力施設、放射線防護、放射性廃棄物及び放射性物質の輸送に係るIAEA安全基準文書32の継続的な見直し活動に協力しています。
 また、東電福島第一原発事故後、IAEAと我が国は事故対応と国際的な原子力安全強化のため緊密に協力してきています。IAEAは2013年5月、福島県内に原子力事故対応等のためのIAEA初となる緊急時対応援助ネットワーク(RANET33)の研修センター(CBC34)を指定し[71]、さらに2017年9月には国内2例目となるCBCとして、量研放射線医学総合研究所(以下「量研放医研」という。)を指定しました[72]。CBCでは、国内及びIAEA加盟国の原子力事故対応等に関わる政府関係者等向けに、原子力緊急事態時の準備及び対応の強化を目的としたIAEAワークショップが1年に数回程度開催されており、2019年度は計3回のワークショップが開催されました[73][74][75]


4) 原子力発電の導入に必要な人材育成
 我が国は、IAEAによる原子力発電の新規導入国が国内基盤整備を行うための支援に協力しており、その一環として、世界各国の将来の原子力エネルギー計画を主導する人材育成を目的とする「IAEA原子力エネルギーマネジメントスクール」のアジア版を開催しています。2019年7月から8月に東京、福島、福井、兵庫で開催された第8回マネジメントスクールでは、原子力委員会の岡委員長をはじめ様々な専門家による原子力利用に関する講義や原子力関連施設の見学、研修生によるグループワーク等を行いました[76]


5) 革新的原子炉及び燃料サイクルに関する国際プロジェクト(INPRO)
 革新的原子炉及び燃料サイクルに関する国際プロジェクト(INPRO35)は、エネルギー需要増加への対応の一環として、2000年にIAEAの呼びかけにより発足したプロジェクトです。安全性、経済性、核拡散抵抗性等を高いレベルで実現し、原子力エネルギーの持続可能な発展を促進する革新的システムの整備のための国際協力を目的としています。主たる活動は、経済性、インフラ、廃棄物管理、核不拡散性、核物質防護、安全性、資源枯渇による環境への影響の7つの観点から革新的システムを評価する方法論の開発、これを用いた原子力システムの評価、研究開発への協力、各国の戦略的かつ長期的な計画の支援です。我が国は2006年から参加しており、2020年3月時点で、41か国と1機関(EC)が参加しています[77][78]


② OECD/NEAを通じた原子力安全研究
 我が国は、OECD/NEAにおける様々な原子力安全研究等にも参加しています。例えば、「東電福島第一原発事故のベンチマーク研究(BSAF)プロジェクト」では、我が国が中心となって、炉心溶融した原子炉の過酷事故の進展や原子炉の現状に関する知見を提供しています[79]。また、我が国は、各国規制機関の協力強化、新設計原子炉の安全性向上のための参考となる規制実務、基準確立を目的としてOECD/NEAが2006年に開始した多国間設計評価プログラム(MDEP36)にも参加しています[80]


コラム ~IAEA総会~

 IAEA総会は、毎年1回、加盟各国の閣僚級代表が参加してウィーン(オーストリア)のIAEA本部で開催されています。2019年9月16日から20日に第63回総会が開催され、日本政府代表として竹本内閣府特命担当大臣が一般討論演説を行い、以下のような我が国の取組について説明しました[81]

  • 天野前事務局長追悼(天野前事務局長が掲げた「平和と開発のための原子力」の象徴である、IAEAサイバースドルフ原子力応用研究所の改修事業を完遂させるための、100万ユーロの支援決定等)
  • 北朝鮮の核問題(関連する国連安全保障理事会決議に従った、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での廃棄の実現のために国際社会と協働していくという強いコミットメントの再確認等)
  • イランの核合意(核合意の支持、核合意の上限を超過するイランの措置に対する強い懸念の表明、天野前事務局長が推進した中立性、専門性に立脚する検証・監視の支持等)
  • 2020年NPT運用検討会議(意義ある成果を上げるべく取り組む旨の表明等)
  • 保障措置の強化・効率化(保障措置の更なる強化・効率化に向けたIAEAの取組の支持)
  • 核セキュリティの強化(東京2020大会をはじめとする大規模公共行事における核テロ対策に万全を期す旨の表明等)
  • 東電福島第一原発事故後の取組(多核種除去設備(ALPS37)で処理された水は、トリチウム以外の放射性物質がほとんど取り除かれたものであり、その最終的な取扱いについて検討を行っている旨の説明等)
  • その他(我が国のエネルギー政策、放射性廃棄物最終処分及び廃止措置、核融合研究開発の重要性等に関する説明、及び、原子力の平和的利用の促進と核不拡散体制強化に一層貢献していく強い決意の表明)

IAEA総会で演説する竹本内閣府特命担当大臣

(出典)内閣府「第63回国際原子力機関(IAEA)総会に出席」[82]


(2) 二国間原子力協定及び二国間協力

① 二国間原子力協定に関する動向
 我が国は、移転される原子力関連資機材等の平和利用及び核不拡散の確保等を目的として、二国間協力協定を締結しています。2020年3月時点で、我が国は、カナダ、オーストラリア、中国、米国、フランス、英国、ユーラトム、カザフスタン、韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシア、トルコ、UAE及びインドとの間で原子力協定を締結しています[83]。なお、我が国を含む主要国(米国、フランス、英国、中国、ロシア、インド)における、二国間原子力協定に関する最近の主な動向は以下のとおりです(表3-3)。


表 3-3 諸外国における二国間の原子力協定に関する最近の主な動向(過去3年間)
国名 経緯等

日本-インド

2017年7月 日本とインドの原子力協定が発効

米国-メキシコ

2018年5月 米国とメキシコが原子力協定に署名

米国-英国

2018年5月 米国と英国が原子力協定に署名

米国-ポーランド

2019年6月 米国とポーランドが原子力協力覚書に署名

英国-オーストラリア

2018年8月 英国とオーストラリアが原子力協定に署名

英国-カナダ

2018年11月 英国とカナダが原子力協定に署名

ロシア-カンボジア

2017年9月 ロシアとカンボジアが原子力協定に署名

ロシア-ルワンダ

2018年6月 ロスアトムとルワンダインフラ省が原子力協力覚書に署名

(出典)各国関連機関発表に基づき作成


② 米国との協力
 我が国と米国は、日米原子力協定を締結し様々な協力を行ってきています。同協定は2018年7月に当初の有効期間を満了しましたが、6か月前に日米いずれかが終了通告を行わない限り存続することとなっており、現在も効力を有しています38。同協定は、我が国の原子力活動の基盤の一つをなすだけでなく、日米関係の観点からも極めて重要です。
 また、2012年4月の日米首脳会談を受けて設立された「民生用原子力協力に関する日米二国間委員会」第5回会合が2018年8月に開催されました。同委員会下で、核セキュリティ、民生用原子力の研究開発、原子力安全及び規制関連、緊急事態管理、廃炉及び環境管理の5項目に関するワーキンググループが開催されており、このうち第7回民生用原子力の研究開発ワーキンググループ(CNWG39)が2019年4月に、第10回核セキュリティ作業グループ(NSWG40)会合が同年7月に、それぞれ米国で開催されました[84][85]


③ フランスとの協力
 我が国とフランスは、原子力規制、核燃料サイクル、放射性廃棄物管理等の分野において、長年にわたり協力関係を構築してきました。2019年10月に東京で「原子力エネルギーに関する日仏委員会」の第9回会合が開催され、両国の原子力エネルギー政策、原子力安全協力、核燃料サイクル、放射性廃棄物の管理、高速炉や材料試験炉を含めた研究開発、東電福島第一原発の廃炉、オフサイトの環境回復、原子力事故の緊急事態対応、核セキュリティ及び産業協力について、意見交換が行われました[86]


④ 英国との協力
 2012年4月の日英首脳会談を受けて開始された、両国政府高官による「日英原子力年次対話」の第8回会合が、2019年11月に英国ロンドンで開催され、原子力安全・規制、原子力研究開発、パブリック・コミュニケーション、両国の原子力政策、廃炉・環境回復等について意見交換が行われました。日英原子力協定は、英国のEU離脱及びユーラトム脱退後も英国に適用されますが、英国のユーラトム脱退に伴い同国において適用される保障措置等に変更が生じるため、日英原子力協定にこれを反映すべく、2018年10月に両国政府は、同協定を改正する交渉を開始することで一致しました[87][88]。これを受けて、2019年6月に東京で日英原子力協定改正交渉が開催され、改正の内容や今後の取り進め方について協議が行われました[89]


⑤ その他

1) 文部科学省による放射線利用技術等国際交流(研究者育成事業・講師育成事業)
 文部科学省は1985年から原子力分野での研究交流制度を実施しており、近隣アジア諸国の原子力研究者や技術者を我が国の研究機関や大学へ招へいし、放射線利用技術や原子力基盤技術等に関する研究、研修活動を実施しています。
 また、講師育成事業では、アジア諸国から講師候補者を我が国に招へいし、専門家による講義や各種実験装置等を使用した実習、原子力関連施設への訪問等を通じて、母国において技術指導ができる原子力分野の講師を育成しています。これに加えて、講師育成研修の修了生が中心となり、母国で研修を運営し、講師を務めます。我が国から相手機関に専門家を派遣し、講義を行うとともに、各国の研修の自立化に向けたアドバイスを行っています。(図3-2)。


図3-2 招へい者の実習の様子

(出典)左:原子力機構 講師育成事業ニュースレターVol.6(2020年3月)[90]、右:原子力安全研究協会 文部科学省研究者育成事業(原子力研究交流制度)ニュースレター第6号(2020年3月)[91]


2) 経済産業省による原子力発電導入支援に関する取組
 経済産業省資源エネルギー庁は、原子力発電を新たに導入・拡大しようとする国に対し、我が国の原子力事故から得られた教訓等を共有する取組を行っています。2017年度はトルコ、カザフスタン、ポーランド、UAE等の原子力発電導入国等からの研修生の受入れ、我が国専門家等の外国への派遣等を通じて、原子力発電導入に必要な法制度整備や人材育成等を中心とした基盤整備の支援を行いました[92]


3) 外務省による各国に対する非核化協力
 旧ソ連時代に核兵器が配備されていたウクライナ、カザフスタン、ベラルーシの3か国は、独立後、非核兵器国としてIAEAの保障措置を受けることとなりました。しかし、技術的基盤を欠いていたため、我が国は3か国に対して国内計量管理制度確立支援や機材供与等の協力を実施し、非核化への取組を支援してきました。


4) 原子力機構による高温ガス炉技術に関する協力
 2017年5月18日に行われた日・ポーランド外相会談において「日・ポーランド戦略的パートナーシップに関する行動計画」が署名され、同計画には、原子力機構及びポーランド国立原子力研究センターとの間における高温ガス冷却炉技術の研究・開発に向けた協力を両政府が奨励することが明記されました[93][94]。この計画に基づき原子力機構は同日、ポーランド国立原子力研究センターと「高温ガス炉技術に関する協力のための覚書」を締結し、我が国の高温ガス炉技術のポーランドへの展開に向けて、高温ガス炉の研究開発協力に関する検討を進め、技術会合や人材育成を行ってきました[95]
 さらに、両者は2019年9月に「高温ガス炉技術分野における研究開発協力のための実施取決め」に署名し、研究データ共有等による研究協力の範囲で、高温ガス炉の設計研究、燃料・材料研究、原子力熱利用の安全研究等の協力を開始しました[96]


(3) 多国間協力

① 主要国との多国間協力
 2010年6月に発足した国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC41)は原子力安全、核セキュリティ、核不拡散を確保しつつ、原子力の平和利用を促進するための互恵的なアプローチを目指し、参加国間の協力の場を提供することを目的としています。我が国も、原子力の平和利用の拡大に向けて、我が国の経験と知見を活かしながら各国と協力する方針を表明しています[97][98]
 IFNECは、2020年3月時点で、参加国34か国、オブザーバー国31か国、オブザーバー機関4機関で組織されています[99]。各参加国、機関の閣僚級メンバーで構成される執行委員会、米国、アルゼンチン、中国、日本、ケニア、ロシアの6か国の局長級メンバーにより構成され、活動を実施する主体である運営グループ、特定分野での活動を実施するワーキンググループの3階層で構成されており、我が国は、運営グループの副議長を務めています。
 2019年11月には、第10回執行委員会等会合が米国のワシントンDCで開催されました。グローバル・ミニステリアル・カンファランスとして、「SMRと先進炉」をテーマとした基調講演、プレゼンテーション、パネル討論等が実施され、SMRの開発に多数の民間企業が参画する米国のみならず、カナダや韓国等の供給国側やヨルダン等の導入国からも積極的な発言がありました。また、執行委員会会合では、運営グループ、基盤整備作業部会、燃料供給サービス作業部会、及び需給国関係作業部会の活動状況が報告されました。


〈IFNEC第10回執行委員会会合 共同声明のポイント〉[100]

  • 原子力が、気候問題に応えるクリーンで豊富なエネルギー源として、安全で核セキュリティを確保しつつ、電力・非電力の両分野において、世界に貢献していることを再確認。執行委員会は、IFNECが次の課題に重要な働きをすることにも留意。
    • 新規プロジェクトに対するファイナンス、費用効果、競争の増す世界市場への投資
    • 強固な安全文化の維持
    • 原子力関係規則の強固な独立性
    • 各種手段を講じた公衆意識の向上及びステークホルダー関与の維持
    • 地域・国際協力に対する法規制及び地政学的障壁の低減
    • 核燃料サイクルのバックエンド管理に係るコスト問題の探求
  • 執行委員会は、これら課題について、運営グループがビジョンと戦略を構築することを求める。運営グループは、次回執行委員会において、ビジョンと戦略に基づいた成果を報告すること。
  • 執行委員会は、燃料供給サービス作業部会の多国間処理に係るファイナンス問題の活動成果を認め、今後も同部会が核燃料サイクルのバックエンドに係る問題の活動に傾注することを奨励。
  • 執行委員会は、基盤整備作業部会が輸出管理について2019年に中国及びポーランドで行った活動を称賛し、同部会が開発銀行及び融資機関と協力して原子力関連プロジェクトのファイナンスに関する課題に取り組み、運営グループの活動に資することを推奨。
  • 執行委員会は、需給国関係作業部会による原子力安全推進に資するベストプラクティスを重視した活動の労を多とし、同部会が原子力関係プロジェクトのファイナンス問題に取り組むことを奨励。
  • 執行委員会は、米国のスーザン・ジャワロスキー氏が運営グループ議長に就任することを祝する。また同委員会は、日本の佐藤文一氏に代わって十時憲司氏が運営グループ副議長に就任し、さらにアルゼンチンのファクンド・デルチ氏が副議長に就任することを歓迎。
  • 執行委員会は、今後IFNECが取り組むべきビジョンとして、OECD/NEA、IAEA、WNA、原子力発電に関する国際イニシアティブのNICE Future42、原子力青年国際会議と連携して、気候変動及びクリーンエネルギーといった喫緊の課題に優先して取り組むことを表明。また執行委員会は、これら目標を達成するために原子力の先進技術が果たす役割に注力することを奨励。

② アジア地域をはじめとする途上国との多国間協力
 我が国と開発途上国との協力は、相手国の原子力に関する知的基盤の形成、経済社会基盤の向上、核不拡散体制の確立・強化、安全基盤の形成等に寄与することを目的としています。
 我が国はアジア地域における地域協力として、アジア原子力協力フォーラム(FNCA43)、アジア原子力安全ネットワーク(ANSN44)、ASEAN45+3(日中韓)等の活動等に貢献しています。


1) アジア原子力協力フォーラム(FNCA)における協力
 地理的に我が国に近い近隣アジア諸国は、経済的にも我が国と密接な関わりがあり、農業・工業・医療・環境の各分野での放射線の利用、研究炉の利用、原子力発電所建設や安全な運転体制の確立等、多くの課題を共有しています。
 FNCAは、原子力技術の平和的で安全な利用を進め、社会・経済的発展を促進することを目的とした、我が国主導の地域協力枠組みで、我が国、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ及びベトナムの12か国が参加しています(IAEAがオブザーバー参加)。毎年1回、「大臣級会合」(協力推進のための政策対話)、「スタディ・パネル」(政策課題や技術課題に関する情報交換)、「コーディネーター会合」(協力プロジェクトの審議)の3つの会合と、それらの準備会合である「上級行政官会合」を内閣府主催で開催しています。また、放射線利用を中心とする4分野で7件のプロジェクトが実施されており、それらのうち6件を文部科学省が実施しています[101]


イ) 大臣級会合
 大臣級会合では、FNCA各国の原子力所管の大臣級代表により、原子力技術の平和利用に関する地域協力のための政策対話を行っています。
 2019年12月5日には、第20回FNCA大臣級会合が東京で開催されました(図3-3)。同会合では「医療・健康への放射線技術利用」をテーマに円卓討議が行われ、以下の内容の共同コミュニケが採択されました[102]

図3-3 第20回FNCA大臣級会合の様子(2019年12月、東京)

(出典)文部科学省「アジア原子力協力フォーラム(FNCA)第20回大臣級会合 概要」[103]


〈第20回FNCA大臣級会合(2019年)で採択された共同コミュニケに示された活動内容〉

1.放射線治療の促進
 アジア地域における放射線を利用したがん治療の拡大を促進する。

2.気候変動対策及び環境保護における協力
 2020年スタディ・パネルにて、「核同位体技術と気候変動科学」をメイントピックとして取り上げることを含め、気候変動対策及び環境保護における協力の強化を加盟国に促す。

3.農業と工業分野における研究開発成果の利用の拡大
 放射線育種、放射線加工、研究炉利用及び中性子放射化分析等のプロジェクト技術成果の最終ユーザーによる利用を、社会経済へより効果的な貢献ができる商業化の可能性も考慮しながら、加盟国において促進する。

4.その他促進すべき分野と活動
 加盟国全般で優先度の高い、放射線治療、環境保護、農業・食品安全に関連する原子力科学・技術の応用に関する分野、及び核の安全と保全文化のための基盤開発についての分野における活動を拡大する。
 また、加盟国が幅広く関心を持ち、持続可能な発展に寄与する将来的分野を積極的に採択する。

5.原子力科学・技術分野における人材基盤強化のための協力
 FNCAのネットワークを活用して大学、研究機関間の組織的な人材交流を活性化するとともに、人材基盤強化に関する取組の情報交換を促進する。

6.パブリック・コミュニケーションの拡大と関連国際機関との協力強化
 原子力エネルギー関連技術の公衆認識と信頼性の積み上げをFNCAのウェブサイト、オープンセミナーやオープンレクチャー等の広報機能を通じて引き続き促進し、またIAEA、OECD/NEA等関連国際機関との協力関係を維持、強化する。


ロ) スタディ・パネル
 FNCAは従来、放射線利用等の非発電分野での協力が主でしたが、参加国におけるエネルギー安定供給及び地球温暖化防止の意識の高まりを受け、原子力発電の役割や原子力発電の導入に伴う課題等を討議する場として、2004年以降スタディ・パネルを開催しています。
 2019年3月には、原子力の法的分野に関し、豊富な知識や経験を有する国際機関等との連携を通じてFNCA参加国の理解を深めるため、「法的、及び規制的枠組みから観た原子力に関わる環境影響評価(EIA46)」というテーマについて、国内外の報告や討論が行われました。


ハ) コーディネーター会合
 FNCAの協力活動に関する参加国相互の連絡調整を行い、協力プロジェクト等の実施状況評価や計画討議等を行う場として、コーディネーター会合を年1回我が国で開催しています。
 2019年3月には第20回コーディネーター会合が開催されました。同会合では、各プロジェクトについての活動報告が行われたほか、今後の活動についての討議が行われました。


ニ) プロジェクト
 FNCAでは現在、以下の4分野で7件のプロジェクトが実施されています。プロジェクトごとに、通常年1回のワークショップ等が開催されており、それぞれの国の進捗状況と成果が発表・討議され、次期実施計画が策定されます。

  1. 放射線利用開発:産業利用・環境利用(放射線育種、放射線加工・高分子改質、気候変動科学)、健康利用(放射線治療)
  2. 研究炉利用開発(研究炉利用)
  3. 原子力安全強化(放射線安全・廃棄物管理)
  4. 原子力基盤強化(核セキュリティ・保障措置)

2) ASEAN、ASEAN+3、東アジア首脳会議(EAS)における協力
 アジアの新興国は原子力発電の新規導入を検討しており、ASEAN、ASEAN+3(日中韓)及び東アジア首脳会議(EAS47:ASEAN+8(日中韓、オーストラリア、インド、ニュージーランド、ロシア、米国))の枠組みにおける原子力協力も行われています。例えばASEANでは、2008年に設立された原子力安全サブセクター・ネットワーク(NEC-SSN48)において、ASEAN内での原子力発電に関する情報共有や技術支援が実施されています。
 また、ASEAN+3の枠組みでは、2019年9月に開催された第16回ASEAN+3エネルギー大臣会合の共同声明で、民生用原子力開発に関する原子力の安全、セキュリティ、及び保障措置の重要性を改めて表明しました。また、原子力機構の核不拡散・核セキュリティ総合支援センターの知見を活用した、保障措置やセキュリティに関する人材育成活動への継続的支援の妥当性を確認しました[104]


3) アジア原子力安全ネットワーク(ANSN)における協力
 ANSNは2002年に開始したIAEAの活動の一つで、東南アジア・太平洋・極東諸国地域における原子力安全基盤の整備を促進し、原子力安全パフォーマンスを向上させ、地域における原子力の安全を確保することを目的としています。ANSNには我が国、バングラデシュ、中国、インドネシア、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、タイ及びベトナムが加盟しているほか、準加盟国としてパキスタン、協力国としてオーストラリア、フランス、ドイツ、米国が参加しています[105]。我が国は設立当初から活動資金を拠出し積極的に活動を支援しています。



  1. Technical Cooperation Fund
  2. Peaceful Uses Initiative
  3. Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons
  4. European Commission
  5. Regional Cooperative Agreement for Research, Development and Training Related to Nuclear Science and Technology
  6. 安全原則(Safety Fundamentals)、安全要件(Safety Requirements)、安全指針(Safety Guides)の3段階の階層構造となっており、各国の上級政府職員で構成される安全基準委員会で承認を経て策定されます。現在、約130件の安全基準文書が策定されています[106]
  7. Response and Assistance Network:2000年にIAEA事務局により設立された原子力事故又は放射線緊急事態発生時の国際的な支援の枠組み。2020年3月時点の参加国は日本を含む35か国。
  8. Capacity Building Centre
  9. International Project on Innovative Nuclear Reactors and Fuel Cycles
  10. Multinational Design Evaluation Programme
  11. Advanced Liquid Processing System
  12. (日米原子力協定第十六条1及び2)
    1(略)この協定は、三十年間効力を有するものとし、その後は、2の規定に従って終了する時まで効力を存続する。
    2 いずれの一方の当事国政府も、六箇月前に他方の当事国政府に対して文書による通告を与えることにより、最初の三十年の期間の終わりに又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
  13. Civil Nuclear Energy Research and Development Working Group
  14. Nuclear Security Working Group
  15. International Framework for Nuclear Energy Cooperation
  16. Nuclear Innovation: Clean Energy Future
  17. Forum for Nuclear Cooperation in Asia
  18. Asian Nuclear Safety Network
  19. 東南アジア諸国連合:Association of Southeast Asian Nations
  20. Environmental Impact Assessment
  21. East Asia Summit
  22. Nuclear Energy Cooperation Sub-sector Network



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