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6-3 現世代の責任による放射性廃棄物処分の着実な実施

 放射性廃棄物は、原子力発電所や核燃料サイクル施設、大学、研究所、医療機関等における原子力のエネルギー利用や放射線利用、関連する研究開発、施設の廃止措置等に伴って発生します。これらの放射性廃棄物を人間の生活環境に有意な影響を与えないように処理・処分することは、原子力利用に関する活動の一部として重要です。この放射性廃棄物の処理・処分に当たっては、原子力利用による便益を享受し、放射性廃棄物を発生させた現世代の責任として、その処分を確実に進め、将来世代に負担を先送りしないという認識を持つことが不可欠です。


(1) 放射性廃棄物の処分の概要と安全確保

① 放射性廃棄物の処分の概要

 放射性廃棄物の処理・処分に当たっては、原子力利用による便益を享受し放射性廃棄物を発生させた現世代の責任として、その処分を確実に進め、将来世代に負担を先送りしないとの認識を持つことが必要です。また、国際機関の要件14では放射性廃棄物の発生は可能な限り抑制することとされており、一般に、廃棄物発生の低減、当初意図されたとおり品目の再使用、材料のリサイクル、そして最終的に放射性廃棄物として処分(減容を含む)する、という順序で検討されます。我が国でも、これらの努力が行われており、最終的に処分する放射性廃棄物は含まれる放射性核種の種類と量に応じて適切に区分し処理・処分する方針を検討・決定し、必要な安全規制等の枠組みの整備を進めています。
 また、クリアランス制度15に基づき、原子力施設等において用いた資材、その他のものに含まれる放射性物質についての放射能濃度が「放射線による障害の防止のための措置」を必要としないものとして取り扱うことができます。さらに、放射性廃棄物の合理的な処理・処分の実施のために必要な技術に関する研究開発を推進するとともに、国民・地域住民との相互理解活動にも取り組んでいます。

② 放射性廃棄物の処分の安全確保

 我が国では、放射性廃棄物の処分事業(原子炉等規制法では「廃棄物埋設の事業」と呼ばれます)を行おうとする者は、埋設の種類(第一種廃棄物埋設16、第二種廃棄物埋設17)毎に、原子力規制委員会の許可を受ける必要があります。許可を受けるに当たり、廃棄する核燃料物質又は核燃料物質によって汚染されたものの性状及び量、廃棄物埋設施設の位置、構造及び設備並びに廃棄の方法、放射能の減衰に応じた第二種廃棄物埋設施設についての保安のために講ずべき措置の変更予定時期等を記載した申請書を原子力規制委員会に提出しなければならないとされています。原子力規制委員会は、許可を与えるに当たり、その事業を適確に遂行するに足りる技術的能力及び経理的基礎があること並びに廃棄物埋設施設の位置、構造及び設備が核燃料物質又は核燃料物質によって汚染されたものによる災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであることを審査します[36]


(2) 放射性廃棄物の処理・処分に関する取組と現状

 我が国では放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物に大別されます。このうち、高レベル放射性廃棄物は地層処分されます。低レベル放射性廃棄物はさらに発生源別及び処分方法別に分類されています。具体的には、再処理施設、MOX燃料加工施設から発生するもの(TRU廃棄物といいます。)、原子力発電所から発生するもの(発電所廃棄物といいます。)、ウラン濃縮施設、ウラン燃料加工施設から発生するもの(ウラン廃棄物といいます。)、大学、研究所、医療機関等における原子力のエネルギー利用や放射線利用、関連する研究開発から発生するもの(研究施設等廃棄物といいます。)に分類されています。このように低レベル放射性廃棄物の発生源、性状等は幅広く、含まれる放射性核種の種類と量に応じて、地層処分、中深度処分、ピット処分、及びトレンチ処分に適切に区分して処分されます。また、地層処分の実施主体は原子力発電環境整備機構、地層処分以外の処分の実施主体は、発電所廃棄物等は発生者責任の原則の下、原子力事業者等(一部の発電所廃棄物の処分については、廃棄事業者である日本原燃(株)が実施中)、研究開発施設等の廃棄物は原子力機構となっています。以下では、処分実施主体毎の対象廃棄物を念頭に、処理・保管・処分の取組と現状を説明します。

① 高レベル放射性廃棄物の処理・処分に関する取組と現状

1) 高レベル放射性廃棄物の発生・処理・保管の現状
 原子炉を稼働させると使用済燃料が発生します。この使用済燃料を再処理することで生じる放射能レベルの非常に高い廃液は、ガラス原料と混ぜて溶融し、キャニスタと呼ばれるステンレス製の容器に注入した後、冷却し固体化します(出来上がったものは高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)と呼ばれます)。ガラス固化体は発熱量が十分小さくなるまで地上の貯蔵施設で30・0年間程度貯蔵し、その後、地下300m以深の安定した地層中に処分(地層処分)することとされています。