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5-3 コミュニケーション活動


(1)国の取組

 原子力の利用に当たっては、その重要性や安全対策、原子力防災対策などについて、様々な機会を利用して、国民全体及び立地地域の住民に対し、丁寧に説明することが重要です。
 例えば、原子力発電所の再稼動に当たっては、政府の職員が地方公共団体主催の住民向け説明会に参加する等、国の方針や対応を説明する取組が実施されています。2017年2月から3月にかけて佐賀県等で開催された玄海原子力発電所に関する住民説明会には、原子力規制庁から新規制基準適合性に係る審査の概要を説明するとともに、資源エネルギー庁、内閣府からそれぞれ、我が国のエネルギー政策、原子力防災の取組について説明しました [6]
 立地地域とのコミュニケーション活動以外にも、経済産業省では、原子力を含めたエネルギーに関するシンポジウム・説明会等を270回以上実施するとともに、近時ではウェブサイトを通じた活動等の充実に努めています。例えば、2017年から、ウェブサイトにエネルギーに関する話題を分かりやすく発信するスペシャルコンテンツを掲載しています(図5-3)。同コンテンツには、基礎用語・トピックをタイムリーに解説する「ショート記事」と6つのテーマ 1 について詳しくかつ分かりやすく解説した「特集記事」があり、データに基づく政策情報を提供しています。2018年1月時点では月に10万回のアクセスがありました。
     


     

図 5-3 スペシャルコンテンツ

(出典)資源エネルギー庁「スペシャルコンテンツ」 2


 加えて、経済産業省では、核燃料サイクルや、高レベル放射性廃棄物の最終処分を含む原子力政策等に関する広報・広聴活動を実施しています [7] 。この活動では、立地地域はもちろん、電力消費地も含めた国民全体に対して、シンポジウム・説明会の開催等による丁寧な理解活動に取り組んでいます。また、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関しては、2017年7月の科学的特性マップ公表に伴い、全国各地できめ細かな対話活動を実施しています [8]
 科学的特性マップが公表されて以降、経済産業省・原子力発電環境整備機構(以下「NUMO 3 」という。)によって2017年10月より対話活動が行われましたが、同年11月に説明会への不適切な動員が発覚しました。これにより一時活動を中断し、経済産業省・NUMOは、NUMOの体制強化や再発防止策の検討等を行い、これを踏まえた試行的取組(2018年2〜3月)を経て、4月には対話活動改革アクションプランを策定しました。このアクションプランに基づき、5月から全国的な対話活動を再開しています。
 さらに、地方公共団体に対しては、原子力発電施設等に関する地域住民の理解の促進を図るため、「広報・調査等交付金」によって原子力発電に係る知識の普及や、住民の生活に及ぼす影響に関する調査等を支援しています [9]
 経済産業省は、今後の対話や広報活動等のコミュニケーションの在り方について、スペシャルコンテンツの充実化、広報・広聴活動や交付金の改善など原子力委員会の提言も踏まえつつ取り組んでいく方針です。また、双方向の対話活動を更に強化するために、地震・津波などの一般的な防災も含めて、地域の実情に応じて構築するプラットフォームを活用し、専門的な知見を有する科学者の参加も促しながら、地域住民ときめ細かな対話を行うことなどを検討しています(図5-4) [10] 。      


     

図 5-4 対話、理解促進への地域共生のためのプラットフォームの活用

(出典)第17回総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会資料 第3号資源エネルギー庁「対話・広報の取組」(2018年) [10]


 原子力規制委員会では、2017年11月に行った5年間の活動に関する振り返りの議論の中で、立地地域の住民や地方公共団体とのコミュニケーションの向上の必要性を確認し、これを踏まえ、委員による現地視察と地元関係者との意見交換を実施することを決定しました。具体的には、委員が手分けして国内の原子力施設を視察するとともに、当該原子力施設に関する規制上の諸問題について、被規制者だけでなく、希望する地元関係者を交えた意見交換を行う取組を継続的に行っていく方針です [11] 。同方針に基づき、2018年2月11日に更田委員長と山中委員が佐賀県を訪問し、各地方公共団体の代表と意見交換を行いました。そのほか、2017年12月〜2018年1月にかけて更田委員長が福島県内の市町村を訪問し、首長との意見交換を行いました [12] 。      


(2)原子力関係事業者の取組

 各原子力関係事業者は、原子力発電所の周辺地域において地方公共団体や住民等とのコミュニケーションを行っています。例えば、発電所周辺の住民訪問対話や周辺の地方公共団体が主催する住民との意見交換会に参加し、原子力の必要性やリスクについて地域の住民とともに考える取組を行っています。また、原子力発電所の立地地域や周辺地域だけでなく、広く国民全体やメディアに向けて、報道会見やプレスリリース、広報誌の発行等を通じた情報発信も行っています [13] [14]
 これらの原子力関係事業者による取組を継続するとともに、より一層強化する必要があります。経済産業省の「自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループ」では、2018年2月に、これまでのワーキンググループを踏まえたアクションプランを提示しており、社会への情報発信についても、産業界の取組実績の分かりやすい説明や、情報発信の効果の分析と受け手に応じた発信の工夫等の必要性について議論がなされました [15] 。      


(3)東電福島第一原発の廃炉に関する取組

 東電福島第一原発の廃炉については、福島県や国民の理解を得ながら進めていく必要があり、正確な情報の発信やコミュニケーションの充実が重要です。
 そのため、経済産業省では、廃炉・汚染水対策の進捗状況を分かりやすく伝えるためのパンフレットや解説動画の作成に取り組んでいます(図5-5) [16]
 また、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が2017年7月に開催した第2回福島第一廃炉国際フォーラムの1日目では、「地元の皆さんと考える1F廃炉」をテーマに、地元住民を対象として講演やリサーチセッションが実施されました。リサーチセッションでは、パネリストである経済産業省、東京電力及び原子力損害賠償・廃炉等支援機構の東電福島第一原発廃炉の関係者が住民の関心事や不安に対する情報提供や、会場の参加者との質疑応答等を行い、双方向のコミュニケーションが実施されました [17]
 東京電力は、2016年9月、東電福島第一原発における廃炉等の取組を安全かつ着実に進めることを目的として、福島県及び東電福島第一原発周辺の11市町村と「福島第一原子力発電所の廃炉等の実施に係る周辺地域の安全確保に関する協定書」を新たに締結しました。同協定では、廃炉等に向けた取組について、県、町、議会、県民に対して情報公開を行い、透明性を確保することが規定されています。そのほか、英国で原子力施設の廃止措置に関連して様々な取組を実施しているセラフィールド社とも協力して、地域や国民、海外への情報発信やコミュニケーションを実施しています [18]
 なお、福島の復興・再生に関するリスクコミュニケーションの取組については、第1章1−1「福島の着実な復興・再生の推進と教訓の活用」に記載しています。      


     

図 5-5 東電福島第一原発の廃炉・汚染水対策に関する広報資料

(出典)経済産業省「廃炉・汚染水対策ポータルサイト」 4 より作成



  1. 地球温暖化・省エネ」、「福島復興」、「原子力」、「再生可能エネルギー」、「エネルギー安全保障・資源」、「電力・ガス改革」の6テーマ。
  2. http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/
  3. Nuclear Waste Management Organization of Japan
  4. http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/



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