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3-2 環境社会や安全に関する配慮等

     

 東電福島第一原発事故後も、国際社会においては、多くの原子力利用国が原子力を継続的に利用し、新規導入を検討する国もあります。我が国としても、東電福島第一原発事故の教訓を踏まえ、高い安全性を持つ原子力技術等を諸外国に提供することを通じて、国際的な原子力安全の向上に貢献していく必要があります。我が国の原子力産業が国際展開する上で、国や原子力関係事業者等は、国際ルールに従いつつ、厳格かつ適切に行うことが必要です。


(1)原子力施設主要資機材の輸出等における環境社会や安全に関する配慮

 我が国の原子炉施設において使用される主要資機材の輸出等を行う際に、公的信用((株)日本貿易保険(NEXI 15 )や(株)国際協力銀行(JBIC 16 )による貿易保険、融資等)を付与する場合には、「OECD環境及び社会への影響に関するコモンアプローチ」(2001年) 17 遵守の一環として、公的信用付与実施機関(NEXI及びJBIC)は、対象となるプロジェクトについて、環境や地域社会に与える影響を回避又は最小化し、受け入れることができないような影響をもたらすことがないよう、プロジェクト実施者によって適切な配慮がなされているかについて確認を行う 18 こととしています。
 これに加えて、NEXI及びJBICは、2017年12月、原子力分野においては住民への情報公開や住民参加プロセスが適切に確保されていることが重要であるとの国際的な認識等を踏まえ、公的信用を付与するか否かを決定するに際して、対象となるプロジェクトの実施者が情報公開や住民参加への配慮を適切に行っているかを確認するための指針 19 を策定し、2018年4月から指針の運用を開始することとしています。なお、この指針の策定に当たっては、産業界、NGO、有識者等が参加したコンサルテーション会合による検討に加え、パブリックコメント(2017年11月2日〜12月4日)が実施されました。
 また、安全に関しては、同様に「OECD環境及び社会への影響に関するコモンアプローチ」遵守の一環として、NEXI及びJBICの求めに応じて、国が、輸出相手国において安全確保等に係る国際的取決めが遵守されているか、国内制度が整備されているか等について事実関係の確認を行い、情報提供を行います(以下「安全配慮等確認」という)。
 具体的には、2015年10月に原子力関係閣僚会議において決定された「原子力施設主要資機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認の実施に関する要綱」に基づき、関係省庁(内閣官房、内閣府、財務省国際局、経済産業省貿易経済協力局及び製造産業局)により構成される「検討会議」が、      

・相手国が安全確保等に係る国際的取決めを遵守しているか
・相手国がIAEA安全基準に従った規制を整備しているかを評価するIAEAレビューを受け入れているか
・輸出を行う我が国メーカーが保守・補修等の安全関連サービスを提供するための体制を整備しているか等について確認を行い、公的信用付与実施機に対し、情報提供を行います。

 これらの確認に際して、検討会議は、必要に応じて、原子力規制庁や外務省、資源エネルギー庁等に対して情報提供を求めたり、複数の外部専門家の見解を求めることとし、安全配慮等確認の依頼から5か月以内に、確認の結果を公的信用付与実施機関に通知します [21]



  1. Nippon Export and Investment Insurance
  2. Japan Bank for International Cooperation
  3. 途上国等へのインフラ投資において環境や社会への影響に配慮すべきとの問題意識から、輸出国が公的信用付与を行うに当たっては、事前に環境や社会に与える潜在的影響について評価することを求めるもので、OECD加盟国に対して道義的義務が課されています。なお、これまでに2003年、2005年、2007年、2012年、2016年に改定され、2012年の改定では、参照すべき国際基準として、原子力の安全に関する条約及びIAEA基準が例示されました。
  4. NEXIは「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」、JBICは「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」。
  5. NEXIは「貿易保険における原子力プロジェクトにかかる情報公開配慮のための指針」、JBICは「原子力プロジェクトにかかる情報公開配慮確認のための指針」。

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