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2-4 核燃料サイクルに関する取組

 エネルギー資源の大部分を輸入に依存している我が国では、原子力発電所で発生する使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を再び燃料として有効利用する「核燃料サイクル」の確立を基本方針としています。この基本方針に基づき、立地地域を始めとする国民の理解と協力を得つつ、安全の確保を大前提に、国や原子力事業者等による取組が進められています(図2-28)。
     

図 2-28 我が国の核燃料サイクル施設立地地点(2017年8月時点)

(出典)日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」を一部編集


 このうちウラン濃縮施設や使用済燃料の再処理施設は、核兵器の材料となる高濃縮ウランやプルトニウムを製造するための施設に転用されないことを確保する必要があります。我が国は、「原子力基本法」(昭和30年法律第186号)に則り、原子力利用は厳に平和の目的に限り行います。日本の全ての核物質及び原子力活動は、IAEA保障措置の厳格な適用を受け、原子力の平和利用を担保しています。また、核不拡散へ貢献し、国際的な理解を得ながら取組を着実に進めるため、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持し、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮しつつ、プルサーマルの推進等によりプルトニウムの適切な管理と利用を行うことで、平和利用に係るプルトニウム利用の透明性向上を図っていきます。


(1)核燃料サイクルの基本的考え方

@ 核燃料サイクルの概念
 核燃料サイクルは、ウラン燃料の生産から発電までの上流側プロセスと、使用済燃料の中間貯蔵や再処理、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料製造及び放射性廃棄物の適切な処理・処分等からなる下流側プロセスに大別されます(図2-29)。
 上流側のプロセスは、@)天然ウランの確保・採掘・製錬、A)六フッ化ウランへの転換、B)ウラン235の割合を高めるウラン濃縮、C)二酸化ウランへの再転換、D)ウラン燃料の成型加工、E)ウラン燃料を用いた発電から成ります。
 下流側のプロセスは、@)使用済燃料の中間貯蔵、A)使用済燃料からウラン及びプルトニウムを分離・回収し、残りの核分裂生成物等をガラス固化する再処理、B)ウランとプルトニウムの混合酸化物のMOX 34 燃料加工、C)MOX燃料を軽水炉で利用するプルサーマル、D)放射性廃棄物の適切な処理・処分等からなります。なお、再処理を行わない政策をとっている国では、原子炉から取り出した使用済燃料については、冷却後、直接、高レベル放射性廃棄物として処分(直接処分)する方針です。      

     

図 2-29 核燃料サイクルの概念

(出典)日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集2016」(2016年)

A 我が国の核燃料サイクルに関する取組の基本的考え方
 エネルギー基本計画(2014年4月閣議決定)では、核燃料サイクルに関する以下のような基本的考え方が示されています [1]
i)我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針とする。
ii)核燃料サイクルに関する諸課題は、短期的に解決するものではなく、中長期的な対応を必要とする。また、技術の動向、エネルギー需要、国際情勢等の様々な不確実性に対応する必要があることから、対応の柔軟性を持たせることが重要である。
 また、「原子力利用に関する基本的考え方」(2017年7月原子力委員会決定、政府として尊重する旨閣議決定)では、プルトニウム利用に当たって、利用目的のないプルトニウムは持たないという原則を引き続き堅持することを示しています。また、プルトニウムの回収と利用のバランスに十分考慮しつつ、プルサーマルを通じてプルトニウムの適切な管理と利用を行うとともに、再処理施設の竣工、MOX燃料加工工場の建設等を進めていくことが必要であることを指摘しています。一方、高速炉開発については、「もんじゅ」の開発によって得られた様々な教訓や技術的知見を踏まえ、国として、電力自由化等の国内環境の変化等を勘案し、商業化の在り方や方向性を検討する必要があるとしています。      

コラム 〜各国の使用済燃料の扱い〜

 各国の使用済燃料の扱いとしては、使用済燃料を再処理し、プルトニウム等を燃料に再利用する核燃料サイクルと、使用済燃料を放射性廃棄物としてそのまま処分する直接処分の2種類があります。主な諸外国の政策は以下のとおりです [51] 。なお、自国内で再処理を実施しているのは、米国、ロシア、英国、フランス、中国、日本、インドです。

国名 政策

米国

再処理技術を保有しつつも、核拡散防止の観点から再処理は実施せず、使用済燃料を直接処分する方針です。なお、先進的な核燃料サイクル技術に関する研究開発は引き続き行っています。

フランス

使用済燃料は再処理し、回収したウランやプルトニウムをMOX燃料に加工して国内の軽水炉で再利用しています。

英国 [48]

使用済燃料は再処理し、回収したウランやプルトニウムを、高速炉で再利用する方針でしたが、現在、高速炉開発は中止されています。政府は、使用済燃料の管理は必要な規制要件の下で事業者の商業的な判断に任せるとの立場ですが、既に長期貯蔵されている、使用済燃料から分離されたプルトニウムや、今後の再処理によって発生が見込まれるプルトニウムをMOX燃料に加工して国内の軽水炉で再利用するオプションを検討中です。

ドイツ

原子力法で使用済燃料を全量直接処分することが定められています。以前、使 用済燃料を国外に再処理委託し、回収したウランやプルトニウムについては、 MOX燃料に加工して、国内の軽水炉で再利用しています。

ロシア [50]

使用済燃料は再処理し、回収したウランやプルトニウムをMOX燃料等に加工 して高速炉や軽水炉で再利用する計画です。

中国

フランスと協力して商用再処理施設の建設に向けた取組を進めています。

     

(2)核燃料サイクルに関する取組

@ 天然ウランの確保
 天然ウランの生産国は、政治情勢が比較的安定している複数の地域に分散しており、国内での燃料備蓄効果が高く、資源の供給安定性に優れています。また、世界のウラン資源埋蔵量は、表2-4に示すとおり、探鉱費用に応じて増減しています。


表 2-4 世界のウラン資源埋蔵量
     

注1)四捨五入のため数値が一致しない場合がある
注2)詳細な見積値がない、あるいは、対外秘とした国もあるため、埋蔵量がデータよりも高い可能性がある

(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium2016:Resources, Production and Demand」 35 (2016年)及び「Uranium2011:Resources, Production and Demand」 36 (2012年)に基づき作成


 国際的なウラン価格は図2-30に示すとおり、1980年代中旬以降、50米ドル/kgU程度で推移していましたが、2005年以降は価格が大きく変動しており、2007年から2008年にかけてスポット契約価格が急上昇した後、2009年には急下落しています。一方で長期契約価格は2012年頃まで上昇を続けましたが、近年はスポット契約価格、長期契約価格とも、100米ドル/kgU程度で推移しています(図2-30)。  また、ウラン需給見通しは図2-31に示すとおりです。

     

図 2-30 ウラン価格の推移

(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium2016:Resources, Production and Demand」(2016年) 37 に基づき作成

     

図 2-31 ウラン需給見通し

(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium2016:Resources, Production and Demand」( 2016年) 38 に基づき作成

     

 我が国の電気事業者は、天然ウランの全量を海外から調達しています。中国やインド等、世界的に原子力発電が拡大し、中長期的にウラン需給逼迫の可能性が高まると見込まれる中、安定的に天然ウランを調達することは我が国の重要な課題です。経済産業省資源エネルギー庁は、資源国との関係強化に資する案件を中心に、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC 39 )が実施するウラン探鉱の探索への支援を実施しています [52]


A ウラン濃縮
 天然ウランには、原子力発電所で利用するウラン235が0.7%程度しか含まれていないため、この濃度を3〜5%まで濃縮して燃料として使用されています。日本原燃(株)の六ヶ所ウラン濃縮工場では、1992年から六フッ化ウランを用いて濃縮ウランが生産されています。世界的には、ウラン濃縮では「ガス拡散法」と「遠心分離法」が利用されています。日本では、日本原燃(株)が開発したより高性能で経済性に優れた新型遠心分離機による濃縮ウランが生産されています。既存の遠心分離機の新型遠心分離機への変更及び新規制基準の対応のため変更許可申請が申請され、原子力規制委員会により、2017年5月に事業変更の許可がなされました [53]
 なお、2015年時点での世界全体のウラン濃縮能力は以下の表2-5のとおりです [54]

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表 2-5 世界の濃縮能力(2015年)
事業者・施設 濃縮能力(トンSWU/年)

フランス

オラノ社、ジョルジュベスU

7,000

ドイツ、オランダ、英国

ウレンコ社、英カーペンハースト、 蘭アルメロ、独グロナウ

14,400

日本

日本原燃(株)、六ヶ所

75

米国

ウレンコ社、ニューメキシコ

4,700

ロシア

Tenex社、アンガルスク、ノヴォ ウラリスク、ジェレノゴルスク、セベルスク

26,578

中国

核工業集団公司(CNNC 40 )、陝西省漢中、甘粛省蘭州

5,760

その他

アルゼンチン、ブラジル、インド、パキスタン、イランの施設

100

(出典)世界原子力協会(WNA)「Uranium Enrichment」(2017年)に基づき作成


B 再転換・成型加工
 濃縮ウランから軽水炉用の核燃料(燃料集合体)を製造するためには、六フッ化ウランから粉末状の二酸化ウランにする「再転換」工程と、粉末状の二酸化ウランを成型、焼結し、ペレット状に加工し、被覆管の中に収納して燃料集合体に組み立てる「成型加工」工程の2つの工程が必要となります。
 再転換工程については、国内では三菱原子燃料(株)のみが実施しています。東電福島第一原発事故前、国内で必要とされる量について、同社で再転換されるもののほかに、海外で濃縮し、再転換された後に輸入したものでまかなっていました。
 成型加工工程については、国内では三菱原子燃料(株)、(株)グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン及び原子燃料工業(株)の3社が実施しています。東電福島第一原発事故前は、加圧水型軽水炉(PWR)用と沸騰水型軽水炉(BWR)用ともに国内で必要とされる量の大部分をこの3社でまかなっていました。なお、原子力規制委員会において、これらの施設の新規制基準への適合性の審査が行われた結果、(株)グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンについては2017年4月、三菱原子燃料(株)については再転換工程と合わせて同年11月に、原子燃料工業(株)東海事業所については同年12月に、原子燃料工業(株)熊取事業所については2018年3月に事業変更の許可がなされました [55] [56] [57] [58]。      


C 使用済燃料再処理

1)使用済燃料再処理機構の設立
 電力自由化など原子力事業をめぐる事業環境が変化する中においても、再処理等が将来にわたって着実に実施されるよう、2016年5月に再処理等拠出金法が成立しました。その上で、この法律に基づき、再処理等に必要な資金を管理し、再処理等を着実に行う責任を有する認可法人として、同年10月に使用済燃料再処理機構が設立されました(図2-32)。
 2016年10月に同機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の認可に当たり、経済産業大臣より意見を求められ、原子力委員会は、再処理を実施する前に、再処理や再処理関連加工の実施時期及び量を含む実施中期計画が提示されるよう求めました。また、再処理や再処理関連加工の実施時期及び量に関する記述を含む実施中期計画の認可に際して、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則の下、プルトニウム需給バランスについて、具体的かつ現実的な見通しが明示されていること、電気事業者が策定するプルトニウム利用計画との整合性が図られていることが確認されることへの期待を示しました [59] 。  

          

図 2-32 原子力発電における使用済燃料の再処理等のための拠出金制度の概要

(出典)経済産業省資源エネルギー庁


2)むつ中間貯蔵施設及び六ヶ所再処理工場に関する取組
 使用済燃料対策を着実に進める観点からは、リサイクル燃料貯蔵(株)のリサイクル燃料備蓄センター(むつ中間貯蔵施設)や日本原燃(株)の六ヶ所再処理工場(図2-33)について、地元の理解を得つつ、着実に竣工させることは重要な課題です。
 むつ中間貯蔵施設は、2018年後半に貯蔵容量3,000トン規模で操業を開始し、最終的に貯蔵容量を5,000トンまで拡大する予定です。2018年3月時点では、原子力規制委員会において、新規制基準への適合性の審査が行われています。
 六ヶ所再処理工場では、アクティブ試験はほぼ終了しており、トラブルのあったガラス固化試験については、2013年に社内試験を終了しています。六ヶ所再処理工場には2000年12月以降、使用済燃料受入れ・貯蔵が開始されており、2018年2月末時点で約3,393トンが搬入されています [60] 。そのうち、約425トンがアクティブ試験の段階で再処理されています。同施設の竣工に向けて、原子力規制委員会において、新規制基準への適合性の審査が行われていますが、2017年8月に再処理施設非常用電源建屋への雨水浸入が発生したこと等を踏まえて、日本原燃(株)は同年10月、原子力規制委員会に対し、審査対応を中断し、安全管理の改善活動を優先する方針を表明しました [61] 。その後、2018年4月に原子力規制委員会による安全審査が再開されることとなりました。なお、2017年12月に同社は、一層の安全性向上の観点から、施設の竣工時期を2021年度上期に変更することを公表しました [62] 。  

          

図 2-33 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場

(出典)日本原燃(株)「再処理事業の概要」 41


3)原子力機構における取組
 我が国ではこれまで、原子力機構を中心として、主に東海再処理施設にて、再処理及び再処理技術に関する研究開発を行ってきました。同施設での使用済燃料の累計再処理量は、試験運転期間を含め1977年9月から2007年5月までに、約1,140トンとなっています。ただし、2014年9月に取りまとめられた「日本原子力研究開発機構改革報告書」において、同施設の新規制基準対応は困難であるとの判断により、2017年6月には原子炉等規制法の規定に基づき、廃止措置計画の認可を原子力規制委員会に申請しました [63]
 また、原子力機構は、東海再処理施設での軽水炉等の使用済燃料の再処理を通じて得た技術について、日本原燃(株)と技術協力を進めてきました。特に、日本原燃(株)六ヶ所再処理工場におけるガラス固化体を製造する工程でのトラブルに対応し、実規模モックアップ試験施設(KMOC)を利用して、トラブルを起こした溶融炉の構造の改良、運転方法の立案等の協力を行ってきており、原子力機構から日本原燃(株)への技術移転は、ほぼ完了しました。  

    

D ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料製造
 日本原燃(株)は、商用の軽水炉用民間MOX燃料加工施設(最大加工能力は年間130tHM 42 )の建設を進めています(図2-34)。現在、原子力規制委員会において、この施設の新規制基準への適合性の審査が行われております。また、2017年12月に同社は、一層の安全性向上の観点から、竣工予定時期を2022年度上期に変更することを公表しました [64]
 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場で回収されるプルトニウムは、このMOX燃料加工施設でMOX燃料体に加工され、我が国の軽水炉で利用される予定です。六ヶ所再処理工場と歩調を合わせて、国内のMOX燃料加工事業が着実に進められることが期待されます。
 なお、これまでに海外の再処理施設で回収された我が国のプルトニウムについては、海外でMOX燃料体に加工され、我が国に輸送されています。
 また、我が国では、原子力機構を中心として、「もんじゅ」、「常陽」等の高速増殖炉、新型転換炉等に使用するためのMOX燃料製造(成形加工)に関する研究開発の実績があります。2010年まで実施された研究開発の結果、累積で約173tHMのMOX燃料が製造されました [65] 。  

          

図 2-34 日本原燃(株)MOX燃料加工施設(イメージ)

(出典)日本原燃(株)「MOX燃料加工事業の概要」 43


E 軽水炉によるMOX燃料利用(プルサーマル)
 プルトニウムの利用において、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分考慮して、軽水炉でのMOX燃料利用(プルサーマル)を行うことが求められています。また、エネルギー基本計画においても、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、プルサーマルを着実に推進することとされています。
 軽水炉でのMOX燃料利用は、海外において約6,350体の実績(2014年1月時点)があり、我が国では、九州電力(株)玄海原子力発電所3号機は2009年12月より、四国電力(株)伊方発電所3号機は2010年3月より、東電福島第一原発3号機(2012年4月廃止)は2010年10月より、関西電力(株)高浜発電所3号機は2011年1月より、同4号機は2017年5月より、プルサーマルを実施した実績があります。
 「我が国におけるプルトニウム利用の基本的考え方について」(2003年8月原子力委員会決定)に基づき、電気事業連合会はプルサーマル計画を策定・公表し、2009年に策定した計画では、2015年度までに全国の16〜18基の原子炉でプルサーマルを順次実施するとしていました。しかし、その後、東電福島第一原発事故による原子力発電所の運転停止や、六ヶ所再処理工場でのプルトニウムの回収がなかったこと等から、プルトニウム利用計画の策定/公表は見合わされてきました。2018年3月に電気事業連合会は、16〜18基の導入目標については、「海外に保有するプルトニウムを含め、六ヶ所再処理工場において800トン再処理時に回収されるプルトニウムを各社で確実に利用するために導入することとしている基数であることから、電気事業者としては、この方針を堅持」することを明らかにしました。また、プルトニウム利用の透明性確保の観点から、再処理工場の竣工を目途に、プルトニウム利用計画を作成し、公表することも明らかにしました [66] 。なお、プルサーマルを行う計画を有している原子力発電所のうち、四国電力(株)伊方発電所3号機、関西電力(株)高浜発電所3、4号機、九州電力(株)玄海原子力発電所3号機の4基が原子力規制委員会の新規制基準適合性審査を終え、実際にMOX燃料を使用してプルサーマルを行っています。2017年6月末時点での電気事業者のプルサーマル実施状況は図2-35のとおりです。  

          

図 2-35 電気事業者のプルサーマル実施状況(2017年6月末時点)

(出典)総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会(第16回) 資料3号 資源エネルギー庁「 核燃料サイクル・最終処分に向けた取組」(2018年)


F 高速炉に関する検討状況
 我が国の将来的な高速炉開発方針案の検討・策定作業を行うために設置された「高速炉開発会議」での検討を踏まえ、2016年12月に開催された第6回原子力関係閣僚会議では、「『もんじゅ』の取扱いに関する政府方針」[67] とともに、「高速炉開発の方針」[68] が決定されました。「もんじゅ」については、原子炉としての運転は再開せず、今後、廃止措置に移行し、あわせて将来の高速炉開発における新たな役割を担うよう位置付けることとされました。
 「高速炉開発の方針」に則って、今後10年程度の開発に関する戦略ロードマップの策定を目指すため、高速炉開発会議の下に「戦略ワーキンググループ」が設置されました。同ワーキンググループは2017〜2018年にかけて、有識者ヒアリングを実施した後、開発目標の再設定、今後獲得すべき技術・時期の具体化、国際協力と国内技術基盤の活用方策の特定等の個別の論点に関する検討を進めていく方針です [69] 。また、原子力委員会では、2017年1月に「高速炉開発について(見解)」を取りまとめ、今後の取組に関して留意すべき点を述べました。その中では、国内電力環境の変化等を勘案し、商業化ビジネスとしての成立条件や目標を含めて在り方や方向性を検討していく必要があるとともに、その際、国際的なウランの資源の賦存状況等にも留意することが求められることを指摘しました。  

    

コラム 〜フランスの核燃料サイクルの状況について〜

 石油や石炭などのエネルギー資源に乏しいフランスでは、第一次石油危機を契機に、原子力開発によるエネルギー自立を目指してエネルギー政策を進めており、現在でも国内の発電の大部分を原子力で補っています。
 2018年3月末時点でフランスでは58基(90万KWe級のPWRが34基、130万KWe級の原子炉PWRが20基、145万KWe級のPWRが4基)の原子炉が運転しています。そのうち、90万KWe級のPWRの22基がMOX燃料を装荷して、プルサーマルを実施しています。
 フランスでは、使用しない余分なプルトニウムの蓄積を避けるため、分離プルトニウムの一定期間に亘る利用見通しに基づいて使用済燃料の再処理を実施し、プルサーマルを実施しています。このため、プルトニウムは資源として認識されているものの、再処理されない使用済燃料とMOX使用済燃料は、原子力発電所の敷地内やラ・アーグ再処理工場の使用済燃料プールに貯蔵されています。
 フランスでは再処理を行った後に発生する高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の管理について、1991年12月に「放射性廃棄物管理の研究に関する法律」(バタイユ法)が制定され、長寿命核種の分離・変換、深地層処分、長期貯蔵の3つのオプションに関する研究が開始されました。同法に基づき、法律の制定以降15年間の研究を総括評価した報告書が2005年に議会に提出されました。同報告書では、分離・変換できるのは、アメリシウム・キュリウム・ネプツニウムなどの限られた核種のみであるため、残る廃棄物を処分するための地層処分場が必要となること、加えて、分離・変換の過程でも地層処分が必要となる廃棄物が発生するとの結論が示されています。また、フランス原子力安全機関(ASN)は分離・変換技術について、技術的可能性が証明されておらず、必要とされるコスト(国民負担)の観点と実用性(放射能毒性の低減効果)の観点から、疑問視する意見を出すなど、分離・変換技術の開発については、成果を挙げられず、結果として国民からの不信が高まる可能性も考えられます。     

     


  1. Mixed Oxide
  2. OECD/IAEA (2016), Uranium 2016: Resources, Production and Demand, OECD Publishing, Paris. DOI: http:// dx.doi.org/10.1787/uranium-2016-en
  3. OECD/IAEA (2012), Uranium 2011: Resources, Production and Demand, OECD Publishing, Paris. DOI: http:// dx.doi.org/10.1787/uranium-2011-en
  4. OECD/IAEA (2016), Uranium 2016: Resources, Production and Demand, OECD Publishing, Paris. DOI: http:// dx.doi.org/10.1787/uranium-2016-en
  5. OECD/IAEA (2016), Uranium 2016: Resources, Production and Demand, OECD Publishing, Paris. DOI: http:// dx.doi.org/10.1787/uranium-2016-en
  6. Japan Oil, Gas and Metals National Corporation
  7. China National Nuclear Corporation
  8. http://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/cycle/summary/history.html
  9. MOX燃料中のプルトニウムとウラン金属成分の質量です。
  10. http://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/mox/summary/

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