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原子力委員会ホーム > 決定文・報告書等 > 原子力白書 > 「平成28年版 原子力白書」HTML版 > はじめに

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はじめに

1. 原子力委員会について

 我が国の原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)は、1955年12月19日に制定された原子力基本法(昭和30年法律186号)に基づき厳に平和の目的に限り、安全の確保を前提に、民主、自主、公開の原則の下で開始されました。同法に基づき、原子力委員会は、国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的運営を図るため、1956年1月1日に設置されました。原子力委員会は、様々な政策課題に関する方針の決定や、関係行政機関の事務の調整等の機能を果たしてきました。

2.原子力委員会の役割の改革

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「東電福島第一原発事故」という。)を受けて、原子力を巡る行政庁の体制の再編が行われるとともに、事故により原子力を取り巻く環境が大きく変化したことを踏まえ、「原子力委員会の在り方見直しのための有識者会議」が2013年7月に設置され、原子力委員会の役割についても抜本的な見直しが行われ、2014年6月に原子力委員会設置法が改正されました。
 その結果、原子力委員会は、関係組織からの中立性を確保しつつ、平和利用の確保などの原子力利用に関する重要事項にその機能の主軸を移すこととになりました。その上で、原子力委員会は、原子力に関する諸課題の管理、運営の視点に重点を置きつつ、原子力利用の理念となる分野横断的な基本的な考え方を打ち出しながら、我が国の原子力利用の方向性を示す「羅針盤」として役割を果たしていくこととなりました。
 このような求められる役割を踏まえ、2014年12月に新しい原子力委員会が発足し、岡芳明委員長、阿部信泰委員、中西友子委員の3名で活動を開始しました。新しい原子力委員会では、東電福島第一原発事故の発生を防ぐことができなかったことを真摯に反省し、その教訓を活かしていくとともに、より高い見地から、国民の便益や負担の視点を重視しつつ、原子力利用全体を見渡し、専門的見地や国際的教訓等に基づき、課題を指摘し、解決策を提案し、その取組状況を確認していくといった活動を行ってきました。こうした活動などを通じて、原子力委員会は、原子力利用における「羅針盤」としての機能を果たせるよう、今後も努めてまいります。

3.我が国の原子力利用の方向性

 このような原子力委員会の役割に鑑み、かつて策定してきた「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」や「原子力政策大綱」のような網羅的かつ詳細な計画を策定しないものの、今後の原子力政策について政府としての長期的な方向性を示唆する羅針盤となる「原子力利用に関する基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)を策定することとしました。
 新しい原子力委員会が発足して以降、東電福島第一原発事故及びその影響や、原子力を取り巻く環境変化、国内外の動向などについて、有識者から広範に意見を聴取するとともに、意見交換を行い、これらの活動等を通じて国民の原子力に対する不信・不安の払しょくに努め、信頼を得られるよう検討を進め、その中で様々な価値観や立場からの幅広い意見があったことを真摯に受け止めつつ、今般、2017年7月20日に「基本的考え方」を策定しました。さらに、翌21日の閣議において、政府として「基本的考え方」を尊重する旨が閣議決定されました。
 「基本的考え方」では、原子力政策全体を見渡し、我が国の原子力の平和利用、国民理解の深化、人材育成、研究開発等の目指す方向性や在り方を分野横断的な観点から示しております。この中では、特に、東電福島第一原発事故の教訓と反省の上に立ち、安全性の確保を大前提に国民の理解と信頼を得つつ進めていくことの重要性を改めて強調しました。今後、「基本的考え方」で指摘しました原子力政策の本質的な課題や、幅広い国民の方々の声ともしっかり向き合っていくことで、国民の理解と信頼を得られるよう努めてまいります。

4.「原子力白書」の再開

 このような考えから、「基本的考え方」では、原子力利用に求められる高い透明性の確保や説明責任について、真摯に対応することとともに、国民の方々の声に謙虚に耳を傾けるとともに、原子力利用に関する透明性を確保し、国民一人一人ができる限り理解を深め、それぞれの意見を形成していくことのできる環境を整えていくことの必要性を指摘しました。加えて、そのために、原子力関連機関は、科学の不確実性やリスクにも十分留意しながら、双方向の対話等をより一層進めるとともに、科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報を提供する取組を推進することの必要性も指摘しました。
 この点について、原子力委員会としても、真摯に対応していきたいと考えております。原子力委員会が設置されて以来、継続的に発刊してきた「原子力白書」が、原子力利用に関して国民の方々に説明責任を果たしていく役割の一端をこれまで担ってきたと考えておりますが、東電福島第一原発事故の対応及びその後の原子力委員会の見直しの議論と新委員会の立ち上げを行う中で、これまで約7年間休刊してきました。しかしながら、我が国の原子力利用に関する現状及び取組の全体像について、国民の方々に説明責任を果たしていく重要性を再認識し、この度、「原子力白書」を再開することとしました。
 今般の「原子力白書」では、まず、今後の原子力利用全体の長期的方向性を示す「基本的考え方」を掲載し、原子力を取り巻く環境や国際的な知見等に関するデータを示しつつ、我が国の原子力の平和利用、国民理解の深化、人材育成、研究開発等の目指す方向性やあり方を分野横断的に紹介しております。
 加えて、原子力白書の発行は7年ぶりであることから、第1章では、東電福島第一原発事故の教訓や反省に基づき実施された取組を俯瞰的に見られるよう、現状の取組だけではなく、その経緯や進捗を概説しております。さらに、国会事故調や政府事故調等による提言等を踏まえて、新たに実施された原子力安全に関する体制や制度の見直し、その後の取組状況等を概説し、加えて、原子力事業者による安全性向上への不断の努力について紹介しております。事故後、実施してきた福島の復興・再生、東電福島第一原発の廃炉・汚染水対策の進捗についても概説しています。
 第2章以降では、平和利用の担保、原子力安全対策、国民理解の深化、放射性廃棄物の処理・処分、人材育成、研究開発、放射線利用、核セキュリティ、国際連携といった原子力利用全体の現状や継続的な取組等の進捗について俯瞰的に説明しています。
 なお、本書では、原則として、2016年12月までの取組等を記載しています。ただし、一部の重要な事項は、2017年8月までの取組等を記載しています。
 来年以降についても、継続的に「原子力白書」を発行し、我が国の原子力に関する現状及び国の取組等について、国民の方々に対し説明責任を果たしていくとともに、「原子力白書」や原子力委員会の活動を通じて、「基本的考え方」で指摘した事項に関する原子力関連機関の取組状況について、原子力委員会自らが確認し、専門的見地や国際的教訓等を踏まえつつ指摘を行うなど、今後も必要な役割を果たせるよう努めてまいります。

「原子力利用に関する基本的考え方」
(2017年7月20日に原子力委員会決定、翌21日に政府として尊重する旨を閣議決定)

 1. はじめに

<原子力委員会による「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」・「原子力政策大綱」策定の経緯>
 我が国における原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)は、原子力基本法(昭和30年法律第186号)に基づき、厳に平和の目的に限り、安全の確保を前提に、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興を図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上に寄与することを目的として始まった。
 昭和31年に設立された原子力委員会は、この目的を達成するための国の施策が計画的に遂行されることに資することを目的として、おおむね5年ごとに計10回にわたって「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(以下「長期計画」という。)や「原子力政策大綱」(以下「大綱」という。)を策定してきた。最後の大綱は平成17年10月に決定された。これは国内外の情勢の変化等を踏まえ、期間としては10年程度を一つの目安とした計画であった。

<長期計画・大綱から「原子力利用に関する基本的考え方」の策定へ>
 平成23年の東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「東電福島原発」という。)の事故(以下「東電福島原発事故」という。)後、原子力を取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、平成24年には、原子力委員会の在り方について抜本的な見直しが行われた。新たな原子力委員会では、原子力行政の民主的な運営を図るとの原点に立ち戻って、その運営を行ってきた。
 原子力委員会の見直しを受け、長期計画や大綱のような網羅的かつ詳細な計画は策定しないこととした一方で、関係組織からの中立性を確保しつつ府省庁を越えた原子力政策の方針を示すとの原子力委員会の役割に鑑み、原子力利用全体を見渡し、専門的見地や国際的教訓等を踏まえた独自の視点から、今後の原子力政策について政府としての長期的な方向性を示唆する羅針盤となる「原子力利用に関する基本的考え方」を策定することとした。

<「原子力利用に関する基本的考え方」の策定>
今回策定する「原子力利用に関する基本的考え方」は、

  • 原子力政策全体を見渡した、我が国の原子力の平和利用、国民理解の深化、人材育成、研究開発等の目指す方向と在り方を分野横断的な観点から示すものであること、
  • 原子力委員会及び関連する政府組織がその責務を果たす上でのよりどころとなるものであり、そのために必要な程度の具体性を確保しつつ施策の在り方を記述するものであること、
  • 政府の「エネルギー基本計画」、「科学技術基本計画」、「地球温暖化対策計画」等を踏まえ、原子力を取り巻く幅広い視点を取り入れて、今後の長期的な方向性を示唆するものであること、
等の性格を有するものである。

 これまで原子力委員会は、原子力利用を推進する、あるいは慎重に検討する等の立場にとらわれずに、世の中に存在する技術である原子力と向き合い、様々な課題等について検討を進めてきた。このような観点に立ち、原子力利用の在り方、東電福島原発事故及びその影響、福島の復興・再生に関すること、原子力を取り巻く環境等について、有識者から広範に意見を聴取するとともに、意見交換を行ってきた。これらの活動等を通じて国民の不安の払しょくに努め、信頼を得られるよう検討を進めてきたところであり、その中で様々な価値観や立場からの幅広い意見があったことを真摯に受け止めつつ、今般、「原子力利用に関する基本的考え方」を策定することとした。
 以下、第2章では考慮すべき原子力を取り巻く環境変化について確認を行い、第3章では原子力関連機関に内在する本質的な課題についての原子力委員会の認識を示す。第4及び5章では、これらに基づく今後の原子力利用の基本目標を示した後、戦略的に取り組むべき重点的取組とその方向性を示す。
 なお、今日も含め原子力を取り巻く環境は常に大きく変化していくこと等も踏まえ、「原子力利用に関する基本的考え方」も5年を目途に適宜見直し、改定するものとする。

 2. 原子力を取り巻く環境変化

2.1. 東電福島原発事故による影響
 東電福島原発事故は、福島県民をはじめ多くの国民に多大な被害を及ぼし、これにより、我が国のみならず国際的にも、原子力への不信や不安が著しく高まり、原子力政策に大きな変動をもたらした。今後、原子力利用を続けていく上では、放射線リスクへの懸念等を含むこうした不信・不安に対して真摯に向き合い、その軽減に向けた取組を一層進めていくことにより、社会的信頼を回復していくことが必須である。
 加えて、原子力利用の安全を確保するための取組を着実に進めるとともに、原子力の安定かつ安全な利用実績の積み重ねを通じて国民の不信や不安を軽減することの重要性も顕在化してきている。
 また、G7伊勢志摩サミットの首脳宣言(平成28年5月)において、原子力政策に対する社会的理解を高めるために、科学的知見に基づく対話と透明性の向上が重要である旨が盛り込まれるとともに、最高水準の原子力安全を達成し、維持していくことへのコミットメントが再確認された。

2.2. 原子力利用を取り巻く環境変化
 我が国においては、東電福島原発事故によりいったんすべての原子力発電所の稼働が停止し、原子力発電への依存度が低減した。また、電力小売全面自由化により、従前の地域独占と料金規制(総括原価方式による料金規制等 1 )が廃止されることとなり、電力事業の競争環境の下で原子力事業の予見可能性が低下しているとの指摘がある。
 国際的には、東電福島原発事故後、ドイツ、イタリア、スイスなど原子力発電からの撤退や中断を決定又は再確認した国・地域がある一方で、原子力発電所の大規模な増設が計画・推進されている中国やインドを筆頭に、アジア、中近東、アフリカ等において原子力発電を導入しようとする動きが見られる。また、英国等の原子力利用先進国においては、自由化環境の下で様々な政策措置が模索され、低炭素電源としての原子力発電の重要性が再認識される動きも見られる。
 また、原子力エネルギー分野に加えて、工業や医療、農業等の分野への放射線利用は着実に進んでおり、引き続き、その利用拡大の期待が高まっている。
 他方、原子力利用の拡大は、同時に核拡散のリスクに係る懸念の高まりをもたらすこともあり、平和利用や核不拡散の取組の重要性について関心が高まってきた。我が国は、プルトニウムの管理と利用について透明性を高める取組を行ってきたが、常に国内外から高い関心を向けられていることに留意する必要がある。

2.3. 地球温暖化問題を取り巻く環境変化
 18世紀半ばの産業革命以降、化石資源の利用やその他の経済活動によって排出される温室効果ガスによる地球温暖化問題は人類共通の課題と認識されている。2015年には、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、人為的な温室効果ガス排出と吸収源による除去の均衡を今世紀後半に達成するために温室効果ガスの早期大幅削減を目指す「パリ協定」が2020 年以降の新たな国際枠組みとして採択され、加盟するすべての国が削減目標を設定することなどが盛り込まれた。我が国は、温室効果ガス排出削減を2030年度に2013年度比26.0%減(2005年度比25.4%減)とする「日本の約束草案」を地球温暖化対策推進本部で決定し、国連気候変動枠組条約事務局に提出した(平成27年7月)。
 より長期的に温室効果ガスを更に大幅に削減していくことは、現状の取組の延長線上では達成が困難であり、イノベーションによる解決を最大限に追求することの必要性が指摘されている 。 2 また、我が国の排出量は世界全体の約3%に留まることや、我が国の高い技術力・ノウハウ等に鑑みれば、国内における排出削減の努力に加え、世界全体での排出削減に貢献していくことが期待される。
 こうした中、G7伊勢志摩サミットの首脳宣言(平成28年5月)では、原子力は将来の温室効果ガス排出削減に大いに貢献し、ベースロード電源として機能するものとされたことも踏まえ、今後、我が国が地球温暖化問題に対応しつつ電力供給の安定性を確保していくためには、低炭素電源としての原子力発電に一定の役割が期待されていることを考慮する必要がある。

2.4. 国民生活や経済活動に影響を及ぼすエネルギーをめぐる状況
 「長期エネルギー需給見通し」(平成27年7月経済産業省)では、東電福島原発事故前に約3割を占めていた原発依存度について、これを可能な限り低減することを見込んだ2030年度の電力の需給構造の見通しが示された。
 我が国のエネルギー自給率は、海外の資源に対する依存度が高いことから先進国の中でも際だって低い上に、原子力発電所の停止に伴い、約20% 3 (震災前)からわずか6% 4 程度まで落ち込んだ。加えて、資源調達国や海上交通路(シーレーン)の情勢変化の影響による供給不安に直面するリスクを常に抱えていることからも、エネルギー安全保障の確保は我が国が抱える大きな課題である。
 また、原子力発電を代替する従来の火力発電の焚き増しに伴う化石燃料の輸入増加により、多額の国富が海外に流出するとともに、再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入等も相まって電気料金の上昇につながっている。電気料金の上昇は、すべての要因でないにしても、産業の国際競争力の低下や雇用機会の喪失等、国民生活及び経済活動に多大な影響を及ぼしていると考えられる。

 3. 原子力関連機関に継続して内在している本質的な課題

 我が国の原子力利用では、1990年代以降、様々なトラブルに伴う長期間の運転停止や計画の遅延等が生じ、国民の不信・不安を招くとともに、2011年3月に東電福島原発事故が発生し、国民生活に深刻な影響を及ぼした。東電福島原発事故の反省のみならず、我が国における原子力利用の閉塞を以前からもたらした、原子力関連機関に内在する本質的な課題を解決することが不可欠である。
 安全文化に国民性が影響を及ぼすという指摘 5 があるように、国民性は価値観や社会構造に組み込まれており、個人の仕事の仕方や組織の活動にも影響を及ぼす。我が国では、特有のマインドセット 6 やグループシンク(集団思考や集団浅慮)、多数意見に合わせるよう暗黙のうちに強制される同調圧力、現状維持志向が強いことが課題の一つとして考えられる。
 また、我が国では、組織内で部分最適に陥り、情報共有の内容や範囲について全体での最適化が図られない結果として必要な情報が適切に共有されない状況も生じており、組織内外を問わず、根拠に基づいて様々な意見を言い合える文化を創り出す必要もある。
 このような従来の日本的組織や国民性の特徴が原子力の安全確保のみならず原子力利用全体にも影響を及ぼしたとの認識の下に、それぞれの原子力関連機関が抜本的な改善策を検討することが必要である。あわせて、原子力利用に求められる高い透明性や説明責任について、真摯に対応することが必須である。

 4. 原子力利用の基本目標について

 上述の「2.原子力を取り巻く環境変化」を踏まえたとき、責任ある体制のもと徹底したリスク管理を行った上での適切な原子力利用は必要である。その適切な利用に当たっては、平和利用を旨とし、安全性の確保を大前提に国民からの信頼を得ながら、原子力技術が環境や国民生活及び経済にもたらす便益とコストについて十分に意識して進めることが大切である。このため、「3.原子力関連機関に継続して内在している本質的な課題」に留意し、適切な原子力利用に当たっての個別の方向性を「原子力利用の基本目標」として以下のとおり位置付ける。

(1)東電福島原発事故の反省と教訓を真摯に学ぶ
 福島の復興・再生は、東電福島原発事故後の原子力政策の再出発の起点であり、廃炉・汚染水対策等の諸課題に着実に対応し、福島の復興・再生に全力で取り組まなければいけない。同時に、原子力関連機関は、事故から学ぶべき教訓を常に見直し、これら教訓を真摯に受け止めて原子力安全を最優先課題として取り組むことが必要である。

(2)地球温暖化問題や国民生活・経済への影響を踏まえた原子力エネルギー利用を目指す
 地球温暖化問題に対応しつつ、国民生活と経済活動の基盤であるエネルギーを安定的かつ低廉に供給することを通じて、国民生活の向上と我が国の競争力の強化に資することが求められている。現在ある技術として、原子力のエネルギー利用は有力な選択肢であり、安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定供給、地球温暖化問題への対応、国民生活・経済への影響を踏まえながら原子力エネルギー利用を進める。

(3)国際潮流を踏まえた国内外での取組を進める
 原子力関連機関においては、国際感覚の向上に努め、グローバル・スタンダードや国際潮流を適時的確に踏まえ、戦略的に国内外での取組を進める。

(4)原子力の平和利用の確保と国際協力を進める
 我が国では、平和目的に限って原子力利用を進めており、その方針を堅持するとともに、国際協力を進める。
 プルトニウム利用に関しては、透明性の向上及び核セキュリティ確保のための措置が、国内はもとより世界規模で厳格に実施されるよう、我が国として不断の努力を継続する。

(5)原子力利用の大前提となる国民からの信頼回復を目指す
 東電福島原発事故を契機に、我が国における原子力利用は、原発立地地域に限らず、電力供給の恩恵を受けてきた消費地を含めた国民全体の問題として捉えられるようになった。原子力利用を考えるに当たっては、国民の方々の声に謙虚に耳を傾けるとともに、原子力利用に関する透明性を確保し、国民一人一人ができる限り理解を深め、それぞれの意見を形成していくことのできる環境を整えていくことが必要である。そのため、原子力関連機関は、科学の不確実性やリスクにも十分留意しながら、双方向の対話等をより一層進めるとともに、科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報を提供する取組を推進する。

(6)廃止措置及び放射性廃棄物の対応を着実に進める
 原子力発電所及び研究開発機関や大学の研究炉等において、その廃止を決定したものについては、計画性をもって放射性廃棄物の処理・処分と一体的に廃止措置を確実に進める。
 放射性廃棄物は、現世代が享受した原子力による便益の代償として実際に存在していることに鑑み、現世代の責任としてその処理・処分を着実に進める。

(7)放射線・放射性同位元素の利用により生活の質を一層向上する
 放射線及び放射性同位元素(ラジオアイソトープ)は工業や医療、農業等の幅広い分野で利用されている。生活の質の向上とともに、環境問題や食糧問題等の地球規模課題の解決に資するため、放射線等の利用をより一層推進する。

(8)原子力利用のための基盤強化を進める
 知識基盤や技術基盤、人材といった基盤的な力は原子力利用を支えるものであり、その強化を図る。特に、研究開発機関と原子力関係事業者がそれぞれの役割の違いを認識及び尊重した上で連携し、厚い知識基盤の構築を進める。加えて、研究開発機関の機能の変革を促すとともに、原子力関連機関の自らの役割に応じた人材育成や基礎研究を推進する。

 5. 重点的取組とその方向性

5.1. 共通的留意事項
 東電福島原発事故の発生を防ぐことができなかったことを真摯に反省し、事故の反省と教訓を活かし、このような事故の再発防止のための努力や、更なる安全性の高みを追求することが求められる。今後の原子力利用に当たって、原子力委員会としては、以下の点について留意することが必要であると認識している。
 まず、原子力関連機関及び関係者は、社会からの信頼回復を図ることを大前提に、原子力利用を改善していく必要がある。そのためには、「3.原子力関連機関に継続して内在している本質的な課題」で述べた課題について、現場の実態も的確に把握し、国際的な知見や経験を利用して解決を図り、我が国としての安全文化を高水準に築き上げるとともに、国民への説明責任を果たしつつ成果を国民に還元するという視点で環境変化に適応することが重要である。その際、実現可能性(feasibility)の検証・確認を的確に行い、限られた資源の中で、効果的かつ効率的な原子力利用を進めていくべきである。
 加えて、原子力政策は、広範な視点から策定・実行されるべきであり、歴史の検証に耐え得るようなものでなければならない。
 原子力利用に関わる主体としては、国、自治体、原子力関係事業者(電力事業者や原子力産業に関わるメーカー等)、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「日本原子力研究開発機構」という。)を含む研究開発機関、大学等が挙げられる。これらの原子力関連機関及びその関係者は、自らの足元を厳しく見つめ直し、東電福島原発事故を契機に生まれ変わる必要があることを改めて認識し、役割と重い責任(accountability)を明確に意識し、今後の原子力利用にあたることが求められる。

5.2. 重点的取組とその方向性
5.2.1. ゼロリスクはないとの認識の下での不断の安全性向上
(1)福島の着実な復興・再生の推進と教訓の活用
 福島の復興・再生に向け、全力で取り組み続けることは重要であり、加えて、避難されている 方々に対して、避難の長期化等への配慮が不可欠である。また、避難に伴う心理的な負担の軽減や帰還環境の整備等の社会的な課題を解決していくべく、帰還や復興に向けて対策をきめ細かに講じていくとともに、自発的・自立的な活動を尊重しつつ、事業や生業、生活の再建及び自立を実現することが求められている。除染等によって生じる除去土壌や廃棄物の保管の長期化への対応は、引き続き安全確保を旨として、各自治体の理解と協力を得つつ進める必要がある。今後、緊急時対策、原子力防災対策において、原子力関連機関は、この経験を活かすことが重要である。さらに、一部残っている農水産物等の風評被害や外国による輸入制限の問題への対応を引き続き進めていく必要がある。
 原子力関連機関は、国際原子力機関(IAEA)や国会事故調、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)による各種事故報告書 7 の指摘事項等の東電福島原発事故の反省と教訓への対応状況についての体系的かつ継続的なフォローアップに加え、本項の(2)から(5)で取り上げる取組を通じて、東電福島原発事故に至った根本要因の分析とそれを踏まえた今後の対応を徹底することが重要である。

(2)過酷事故の発生防止とその影響低減
 国民の安全を確保する上で、過酷事故の発生防止及び万が一発生してしまった場合の影響低減は、非常に重要であり、これらに注目して安全を理解し、安全確保の努力に傾注する必要がある。このため、国、日本原子力研究開発機構を中心とした研究開発機関及び原子力関係事業者は、明確な役割分担と相互連携の下、東電福島原発事故の知見等を活かしつつ、過酷事故の現象とその影響、低減策の俯瞰的・体系的な検討と理解を進め、将来起こり得ると考えられる様々な事態に対する理解力と対応力を涵養(かんよう)していくべきである。これらに関する知見と方策を取りまとめ、普及を図り、過酷事故の防止やその影響低減に必要な対策に役立てるべきである。

(3)原子力分野の構造的特性を踏まえた安全性向上への対応
 東電福島原発事故後、安全に関する行政体制や規制基準の見直し、原子力関係事業者の自主的な安全性向上に向けた取組等が進められてきている。規制基準を満たせば事故が起きないという誤解を再び生まないためにも、国や原子力関係事業者等の原子力関連機関の関係者は常に緊張感を持ち、国民や自治体等のステークホルダーの声に耳を傾け、不断の安全性向上に取り組み、事故に至った構造的要因や組織の閉鎖性に起因する課題の分析を踏まえて、引き続き対応を徹底するべきである。
 また、従来の日本的組織や国民性の弱点を克服した安全文化の確立が不可欠である。例えば、原子力関連機関において、集団思考に陥るのではなく、意思決定過程における組織内部の役割と責任の明確化や、その継続的改善を促す環境を組織内に確立することなどが重要である。

(4)ゼロリスクはないとの認識の下での安全性向上への不断の努力
 東電福島原発事故のような事故を二度と起こしてはならず、「安全神話」とは決別し、安全を常に追い求める姿勢(安全文化)を組織全体に確立することが重要である。このため、あらゆる科学技術がリスクとベネフィットの両面を持つように、原子力についてもゼロリスクは有り得ず、事故は起きる可能性があるとの認識の下、「残余のリスク 8 をいかにして小さく抑え、顕在化させないか」との認識を定着させ、国及び原子力関係事業者等は安全性向上に努めるべきである。
 現在、原子力関係事業者が取り組んでいる自主的安全性向上のための活動については、米国の好事例も参考に、より一層効果的なものとなるような改善が求められる。例えば、シナリオ等を含めたリスク評価結果を総合的に踏まえ、経営トップがリスクマネジメントにコミットし、多数の選択肢の中から判断して必要な措置を講じることが重要である(ISO31000 9 の考え方とも共通)。このリスクマネジメントの概念を関係者全員で共有し、実効性を確保していくべきである。また、事故やトラブルの背後にあるヒューマンエラーも含めた運営管理に係る事例を収集し、それらの分析とこれに基づく実効的な改善というサイクルを原子力関係事業者において継続的に実施するとともに、これらの情報を関係者間で共有し、全体として安全水準の向上を図るべきである。さらに、国及び原子力関係事業者等は東電福島原発事故の経験を活かした安全研究を推進し、安全対策に活用していくことも必要である。
加えて、原子力関係事業者は、国との間でリスク情報を共通言語として活用し、対等で建設的な意見交換を透明なプロセスの下で行い、効果的かつ効率的な安全確保の仕組みの構築に寄与することが求められる。特に、新たな検査制度の下で、一貫性や予見性、透明性が確保された状態で、安全上の実質的な影響・リスク評価を踏まえた安全確保対策が取られるよう、緊密かつ継続的なコミュニケーションを図り、実質的な安全性と透明性を効果的に向上させることが重要である。
 また、このリスクマネジメントの構造を社会全体として確立するためには、原子力関係事業者や国をはじめとした関係者だけでなく、自治体や住民、国民等すべてのステークホルダーにより、この認識の共有を図っていくべきである。
 上述の取組等により、規制基準を満たすことのみを重視した「取締まり型」から、様々な事象を想定し未然に防ぐことを重視した「予防型」の安全確保への移行が実現すると考える。

(5)健康影響の低減に重点を置いた防災・減災の推進
 原子力発電所や原子力施設に係る事故の際、放射線被ばくリスクは、国民の主要な不安要因である上、東電福島原発事故では、無理な避難により災害関連死等の被害が生じたことにより、避難等に伴う健康上のリスクも考慮すべきであったとの指摘がある。このため、防災・減災の推進に当たっては、放射線被ばくリスクとその他の健康上のリスクとの比較の観点や、事故による被災者の心理的・社会的な影響の軽減といった観点を考慮することが重要である。こうした東電福島原発事故で得られた教訓を活かし、実効性のある防災・減災策の取組等を全国規模で継続していく必要がある。また、避難計画の策定、訓練や研修等による人材育成、道路整備等による避難経路の確保、放射線防護施設の整備等の充実・強化を推進し、住民の安全・安心の確保に努める必要がある。

(6)原子力損害賠償制度による適切な賠償の実施
 東電福島原発事故の賠償については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号)等に基づき、引き続き、東京電力の責任において適切に行われる必要がある。
 東電福島原発事故の経験を踏まえ、万が一原子力事故が起きた場合に、迅速かつ適切に被害者を救済する必要がある。このため、電力システム改革等の事業環境変化の中で、原子力事業者の予見可能性に留意しつつ、被害者が適切な賠償を迅速に受けられるよう、原子力事業者と国との役割分担の在り方等について、専門的かつ総合的な観点から検討を行い、必要な措置を講じる必要がある。

5.2.2. 地球温暖化問題や国民生活・経済への影響を踏まえた原子力エネルギー利用の在り方
(1)国内外の原子力利用を取り巻く環境変化への適応
 電力小売全面自由化に伴う国内電力市場の競争環境の進展や、中国、インド等の原子力の開発・利用新興国の台頭といった状況が発生し、国内利用を前提として考えられてきた我が国の原子力産業及び研究開発活動において競争的視点及び国際的視点がより強く求められるようになるなど、原子力発電を取り巻く環境が急速に変化している。このような変化に対し、国、原子力関係事業者及び研究開発機関等は、適時かつ効果的に適応していくべきである。
 特に、国内における競争環境の出現などの環境変化により、原子力発電所の設備等への巨額投資の回収の確実性が低下している。また、長期間に及ぶ事業期間全体で見れば運転コストは低廉であるものの、政策変更リスク等多くの特殊なリスクから原子力発電事業の予見可能性が低いと判断される可能性もある。国は、全体で見たときにエネルギーコストの増加が最小限に抑えられる形で原子力発電の特性を活かせるよう、こうした課題の解決に向けた措置について検討していくことが必要である。

(2)国民生活・経済への影響と地球温暖化問題を踏まえた総合的な判断に基づく対応
 地球温暖化問題への対応が求められている中で、その対策に当たっては、国民生活・経済との両立を図る必要があり、欧米の教訓も参照しつつ、総合的な視点に立って進めることが重要である。
 地球温暖化問題への対応については、我が国が温室効果ガスの排出を削減するための限界費用は高いレベルにあると分析されているものの、2030年度の削減目標は、エネルギーミックスと整合的なものとなるよう、技術的制約、コスト面の課題などを十分に考慮した裏付けのある対策・施策や技術の積み上げにより実現可能な目標とされている。その上で、2050年までの80%の温室効果ガスの排出削減を目指すこととしている。これは従来の取組の延長では実現が困難であると考えられることから、抜本的排出削減を可能とする革新的技術の開発・普及などイノベーションによる解決を最大限追求するとともに、国内投資を促し、国際競争力を高め、国民に広く知恵を求めつつ、長期的・戦略的に取り組んでいくことが必要である。

 国民生活や経済面から見たとき、原子力発電が停止する中で火力発電の焚き増しによる化石燃料の輸入増加や、再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入に伴い、電気料金が上昇している。家庭及び産業向け電力料金の増加した状態が恒常化し、家庭及び産業ともに節電努力は既に相当程度定着しているものの、一部製造業では他国との競争や事業継続性に問題を抱える声も出るなど、電気料金の上昇が国民生活のみならず、産業の国際競争力の低下等我が国の経済活動に影響を及ぼしている。
 これらの現状を踏まえ、温室効果ガスの削減が求められている中で、国民生活や経済面への影響を最小限に抑えることも重要であり、総合的な視点に立ち最適な方策を考えるべきである。
 原子力発電は、既に利用可能な技術の中では、低炭素かつ運転コストが低廉なベースロード電源であり、長期間安定的な原子力発電の利用を確保することが、温室効果ガス削減のみならず国民生活や経済面及び、安定供給面でも必要である。このため、今後、国は、原子力発電の長期的に果たし得る役割を明らかにし、必要な対策を検討すべきである。

注1)
旧一般電気事業者10社を対象。
注2)
電灯料金は、主に一般家庭部門における電気料金の平均単価で、電力料金は、各時点における自由化対象需要分を含み、 主に工場、オフィスなどに対する電気料金の平均単価。平均単価は、電灯料収入、電力料収入をそれぞれ電灯、電力の販売 電力量(kWh)で除したもの。
注3)
電気事業連合会「電力需要実績」、「電気事業便覧」を基に経済産業省が作成

図4 我が国の電気料金の推移

(出典)経済産業省「平成28年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2017)」



(3)着実な軽水炉利用に向けた取組
 国内外の環境変化に鑑みれば、必要な原子力技術や人材を維持し、安全を大前提として、地元と国民の理解を図りつつ、必要な原子力発電所の再稼働及び安定的な利用に取り組むことが必要である。その際、米国において、自主的安全性向上及び規制の改善を進めた結果として、原子力発電の安全性と経済性を両立させた事例も参考に、原子力関係事業者は原子力エネルギーの安全かつ安定な利用の実績を重ね、国民からの信頼回復につなげていくことを期待する。
 原子力発電の発電コストに占める割合は、資本費が高く、燃料費等が低いため、原子力発電所を適正水準で長期間利用するほど発電コストは低下することから、軽水炉の長期利用の取組を安全性向上とともに進めることが必要である。
 また、長期にわたる軽水炉の利用に向けて、原子力関連機関は、使用済燃料の中間貯蔵の能力拡大に向けた取組を強化していく必要がある。

(4)核燃料サイクルの取組
 我が国では、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウムを有効利用する核燃料サイクル事業が原子力関係事業者によって行われている。プルトニウムの有効利用等に当たっては、平和利用を大前提に、核不拡散に貢献し国際的な理解を得ながら進めるため、利用目的のないプルトニウムは持たないという原則を引き続き堅持する。プルトニウムの回収と利用のバランスに十分考慮しつつ、プルサーマル 10 を通じてプルトニウムの適切な管理と利用を行うとともに、再処理施設の竣工、MOX燃料加工工場の建設等を進めていくことが必要となる。
 六ヶ所再処理工場の竣工を控えた我が国は、再処理技術やMOX燃料加工技術に関する能力を蓄積し、より成熟させていくために、ある程度の時間を必要とすると考えられる。そうした国内での技術の蓄積・成熟動向を一つ一つ確認しながら進めていく必要がある。
 また、高速炉開発については、「もんじゅ」に係る経緯とその反省とともに、これまで得られた様々な技術的成果や知見を踏まえ、国として、電力自由化をはじめとする国内電力環境の変化等を勘案し、戦略的柔軟性を持たせつつ、商業化ビジネスとしての成立条件や目標を含めてその在り方や方向性を検討していく必要がある。

5.2.3. 国際潮流を踏まえた国内外での取組
(1)グローバル・スタンダードへの適応
 社会・経済全体がグローバル化する中、世界の中での我が国の原子力利用の在り方が問われている。原子力関連機関は、国際感覚の向上に努め、国際的知見や経験を収集・共有・活用し、グローバル・スタンダードである様々な仕組みを我が国の原子力利用に適用していくべきである。

(2)グローバル化の中での国内外の連携・協力の推進
 東電福島原発事故の経験と教訓を世界と共有し、国内外の安全な原子力利用に活用していくことが不可欠である。そのためには、国、原子力関係事業者、研究開発機関及び大学が、それぞれの責任において、また、原子力発電の新規導入国をはじめ国際社会における安全性強化の取組を推進する国際原子力機関(IAEA)、OECD原子力機関(NEA)等の国際機関への支援を含めて、国内外で連携や協力を進め、役割を果たすべきである。加えて、我が国の優れた原子力技術やノウハウの国際的な事業展開や国際共同研究を行う際には、国際感覚を養い、達成すべき具体的な目標・方策を明確にするなど、より一層戦略的に進める必要がある。なお、海外への事業展開だけでは我が国のサプライチェーンのすべてを維持できないことに留意し、国内の高いレベルでの原子力技術力・人材の維持・強化も忘れてはならない。
 また、工業や医療、農業等の分野への放射線利用の便益を広く新興国に広げるような、国際的な取組も併せて充実させていくべきである。

5.2.4. 平和利用と核不拡散・核セキュリティの確保
 我が国は唯一の被爆国として、核軍縮・核不拡散と原子力の平和利用の推進に貢献する役割がある一方、非核兵器国としては唯一、商業規模の再処理施設を含めた核燃料サイクルを有し、また、原子力関連資機材・技術を供給する能力がある「原子力供給国」でもある。我が国としては、「核なき世界」を目指して、これまでにも増して国際的な貢献を果たしていくとともに、国際的にはテロの対象となり得る可能性が十分にあることを踏まえ、国及び原子力関係事業者等には、従来の取組に加えて、原子力施設に対するサイバー攻撃等の新たな脅威に対する取組を進めていくことも求められる。
 我が国は、IAEA保障措置の厳格な適用により、原子力の平和利用を担保するとともに、一層の透明性担保のため、プルトニウムの管理状況の公表等の取組を行ってきた。特に、プルトニウム利用については、その透明性の向上を図ることにより国内外の理解を得ることが不可欠である。このため、利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持する。しかしながら、国際社会におけるプルトニウム管理とその削減の必要性に対する関心が高まっており、我が国におけるプルトニウムの管理とバランス確保の必要性は益々高まっている。そのため、現在では、唯一、現実的な手段である軽水炉を利用したプルサーマルでの対応が求められるとともに、国際社会に対して我が国の方針について適切に説明していくことが重要である。
 また、グローバル化が進展する中、原子力関連資機材、原子力汎用品・技術の輸出について、厳格な輸出管理を通じて核不拡散に貢献するとともに、厳格な管理を国際的にも展開していく必要がある。
 このような平和利用の推進と国際協力を支える原子力人材の育成と確保及び核セキュリティ等の研究開発は重要であり、そのための継続的な努力を続ける。

5.2.5. 原子力利用の前提となる国民からの信頼回復
(1)理解の深化に向けた方向性
 東電福島原発事故は、福島県民はじめ多くの国民に多大な被害を及ぼし、依然として国民の原子力への不信・不安が根強く残っている。また、東電福島原発事故により避難している児童生徒に対するいじめが起きている。今後、原子力利用を考えるに当たっては、国民一人一人が、科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づいてできる限り理解を深め、原子力関係者に限らず一般の個々人がそれぞれの意見を形成していくことのできる環境が重要である。
 特に、東電福島原発事故以降、我が国における原子力利用は、原発立地地域に限らず、これまで電力供給の恩恵を受けてきた消費地を含めて国民全体の問題として捉えられるようになった。こうした状況も踏まえ、国や原子力関係事業者、研究開発機関等の原子力関連機関は、理解を深めるために必要なあらゆる取組をより一層充実させていくべきである。原発立地地域をはじめとして国民の方々の関心に応えるためには、双方向の対話や広聴等のコミュニケーション活動をより一層進めるとともに、国民の方々が疑問に思ったときに、インターネット等を活用して、自ら調べ、疑問を解決し、理解を深められるような情報体系を整備すべきである。

図7 原子力やエネルギーに関する日頃の情報源

(出典)日本原子力文化財団 「平成27年度 原子力利用に関する世論調査」を基に内閣府作成

(2)科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報体系の整備
 国民の方々が疑問に思ったときに、自ら調べ、理解を深めるためには、科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)の提供のみでは不十分であり、科学的な知見等を分かりやすく解説したものが必要である。さらに、国民の方々が関心に応じて、より専門的な知見までたどり着き、より一層理解を深められるような情報のトレイサビリティを整備することも求められる。例えば、米国や英国では、科学的な知見やその解説又は要約が、国や国際機関、原子力関係事業者等の原子力関連機関で多数作成され、インターネット等により提供され、組織横断的に関連づけされており、検索性にも配慮されているため、必要な情報を探し当てて根拠を理解できることが多い。こうした事例も参考に、原子力関係事業者及び研究開発機関等は、科学の不確実性やリスクに十分留意しながら、科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報を作成し、提供していくべきである。その際、まずは、国民の関心が高く、原子力政策の観点でも重要な、地球環境・経済性・エネルギーセキュリティー関連や、安全・防災、放射性廃棄物、放射線被ばくリスクの4点から着手することが考えられる。また、国においても、自らが実施する原子力政策について、国民の方々に分かりやすく情報発信することは行政の責務であり、諸外国の事例も参考に、その努力がなされるべきである。

(3)コミュニケーションの強化
 国民の方々の原子力利用に対する社会的関心に応えるため、国や原子力関係事業者、研究開発機関等の原子力関連機関は、それぞれの役割に応じて、科学の不確実性やリスクも明らかにしつつ科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づいた対話やリスクコミュニケーションを進めるべきである。その際には、形式的で一方向的な活動に陥らず、相互理解のための双方向の対話を進めるとともに、トランスサイエンス 11 を認識しつつ、国民の方々に原子力関連の知見を橋渡しすることが重要である。加えて、国民の方々の意見の多様性を考慮しつつ、効果的な活動を進めることも大切である。また、実施に当たっては、海外の先行事例等を参照するとともに、ソーシャル・ネットワーク・サービスをはじめとした国民の方々のコミュニケーション手段の変化に対応しつつ、常に改善を図っていくべきである。

(4)原子力関係事業者による情報発信
 上述のような情報提供やコミュニケーションの確立を国が重視することは当然であるが、安全確保や原子力関係事業の実施において責任を有するのは原子力関係事業者である。しかしながら、我が国では原子力関係事業者による情報発信の取組が十分とは言えず、更なる改善の余地がある。そのため、電力競争環境下においても原子力エネルギー利用を事業として行う上では、米国の事業者が行っている事例等を参考としつつ、原子力関係事業者による情報発信がなされるべきである。

5.2.6. 廃止措置及び放射性廃棄物への対応
(1)東電福島原発の廃止措置
 地元及び国民の不安を解消し、福島の復興・再生を進めるためにも、原子力関連機関は、東電福島原発の廃止措置等に向けた取組について、リスク低減を旨として、国内外の知見を集め、地元と国民の理解を得ながら、引き続き進めていくべきである。廃炉作業や汚染水対策、放射性廃棄物の処理・処分等について、既存技術も利用しつつ必要な技術開発も併せて進め、安全かつ着実に進めることも重要である。また、これらを通じて得られる経験や技術について、更に国内外の通常の廃止措置にも展開していくことが必要である。
 東電福島原発事故に伴う賠償・事故炉の廃止措置等に伴う費用の増加が見込まれる中、国民負担を可能な限り抑制しつつ、廃炉・汚染水対策に関する進捗状況を含めて、国民に適切に情報提供を行うべきである。

(2)原子力発電所及び研究開発機関や大学における原子力施設の廃止措置
 我が国の原子力発電所の中には、既に廃止措置を決定し、その作業を開始しているものもある。解体引当金制度及び廃炉会計制度等を適切に活用し、原子力関係事業者は、原子力発電所の廃止措置を適切に進める必要がある。 研究開発機関及び大学等の試験研究炉等の原子力施設の中には、廃止決定又は高経年化したものもある。その設置者は、長期にわたる安定的な財源確保を図って計画的に廃止措置を進めていくべきである。
 これら廃止措置を行うに当たっては、原子力関係事業者、国及び研究開発機関等は、既存技術を適切に利用しつつ、廃止対象施設の設計・建設・運転・保守点検に基づく施設に特有の知見と経験や、国内外の他の施設の廃止措置で蓄積された経験を活用していく必要がある。また、廃止措置は長期にわたることから、技術及びノウハウの円滑な継承や人材の育成も同時に進めることも重要である。なお、廃止措置の解体や除染等の作業は放射性廃棄物を発生させることから、廃止措置はこれらの放射性廃棄物の処理・処分と一体的に検討し、取り組む必要がある。

(3)現世代の責任による放射性廃棄物処分の着実な実施
 放射性廃棄物の処理・処分に当たっては、原子力利用による便益を享受し放射性廃棄物を発生させた現世代の責任として、その処分を確実に進め、将来世代に負担を先送りしないとの認識を持つことが不可欠である。
 一部の原子力関係事業者や研究開発機関等に保管容量の逼迫も見られる中、今後本格化する廃止措置等を円滑に進めるに当たっては、必要な処分場の確保、クリアランス 12 による再利用の拡大、これらの前提としての国民や住民の理解の醸成等が喫緊の課題である。 これらの課題に適切に対応するためには、発生者責任の原則に基づき、放射性廃棄物を発生させた原子力関係事業者等が一層主体的かつ積極的に取り組むとともに、原子力関係事業者等は懸念事項のある場合には規制当局と積極的に意見交換すべきである。その上で、国としても全体的な進捗管理をより強化することが必要である。
 このため、国は、各種放射性廃棄物に関する保管・処理・処分状況を一元的に把握し総合的な施策を推進するための仕組みを構築するとともに、処分場の確保に向けた、原子力関係事業者や研究開発機関の取組を促すべきである。
 また、高レベル放射性廃棄物等の地層処分については、他の原子力利用国と知見や経験を積極的に共有しつつ、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」に基づき、可逆性・回収可能性の担保、国民理解の醸成、「科学的特性マップ」の提示等の国が前面に立った取組、地層処分の安全性・信頼性の向上に向けた研究開発等を引き続き推進すべきである。
 なお、発生者や発生源によらず放射性廃棄物の性状に応じて一元的に処理・処分することが効果的かつ効率的である場合には、国又は原子力関係事業者等において必要に応じて対応策を検討することが望まれる。

5.2.7. 放射線・放射性同位元素の利用の展開
 放射線及び放射性同位元素(ラジオアイソトープ)利用は原子力エネルギーと共通の科学技術基盤を持ち、先端的な科学技術や工業、医療、農業、環境保全、核セキュリティ等の幅広い分野で利用され、国民の福祉、国民生活の水準向上等に大きく貢献している。すでに我が国においては、原子力エネルギー技術に匹敵する経済規模を産み出しており、また、加速器技術等の格段の進歩により、量子ビームテクノロジーという、イノベーションの有力なツールとしての一分野を形成してきている。
 今後も、研究開発機関や大学等は、既存基盤の戦略的な有効利用を進めるとともに、量子ビームを含め放射線及び放射性同位元素を更に活用していくための基盤整備(老朽化対策や適切な人材配置等)を行うことが期待される。また、新たな技術シーズの発掘や技術の高度化とともに、放射線による健康や環境等への影響の研究にも注力していくことが重要である。さらに、放射線及び放射性同位元素の利用が国民生活の向上に貢献しているという認識を広めることも重要である。
 これらの取組によって、今まで想定されていなかった領域も含めて、イノベーションが創出されることを期待する。

5.2.8. 原子力利用の基盤強化
(1)研究開発マネジメントの改善と研究開発機関の機能の変革
 東電福島原発事故の反省・教訓や原子力を取り巻く環境の変化や国際展開の必要性を踏まえた研究開発計画の策定やマネジメントの仕組みの新たな構築により、新たな知見や技術を創出することが求められる。
 特に、日本原子力研究開発機構においては、環境の変化や国際潮流等を的確に踏まえて成果を最大化していくために、意識改革に留まらず、目標管理手法等、経営上の手法・仕組みといった具体的な組織マネジメントの改善を進めていくことが必要である。さらに、我が国全体の原子力利用の基盤と国際競争力の強化に資するため、我が国における原子力に関する総合的研究開発機関として、プロジェクトの抽出とその実施を重視する従来の志向から脱却し、ニーズ対応型の研究開発を行うとともに、その駆動力としての役割を果たすことが求められる。このため、日本原子力研究開発機構は、産学官の連携によるシーズの創出、基盤技術の充実、科学的知見や知識の収集・体系化・共有による知識基盤の構築、研究開発の基盤である施設や設備の供用・利用サービスの提供を先導する組織に変革していくべきである。

(2)研究開発機関と原子力関係事業者の連携・協働の推進
 新しい技術を市場に導入するのは主として原子力関係事業者である一方、技術創出に必要な新たな知識や価値を生み出すのは研究開発機関や大学であり、両者の連携や協働が重要である。効果的な具体的取組としては、まず第一歩として原子力関係事業者と研究開発機関との間の壁を越えた知識基盤を構築すること、その上で、新しい技術を迅速に市場に導入するための連携や協働を進めること、の2つが挙げられる。しかしながら、我が国の原子力分野ではこのような取組は十分とは言えず、科学的知見や知識も組織ごとに存在している状況である。
 このため、研究開発機関や大学、原子力関係事業者の原子力関連機関が、情報交換しつつ、それぞれの役割を互いに認識し尊重し合いながら連携や協働を行う場を構築し、まずは、科学的知見や知識の収集・体系化・共有により厚い知識基盤の構築を進めるべきである。その際、国民への便益の観点や世界的な潮流をしっかりと把握した上で分野を選択すべきである。現時点において、具体的には、例えば軽水炉利用長期化、過酷事故対策・防災、廃止措置・放射性廃棄物等の分野が考えられる。あわせて、こうした連携や共同の中で専門的人材の育成が図られることも期待する。

(3)研究開発活動や人材育成を支える基盤的施設・設備の強化
 試験研究炉や放射性物質を取り扱う研究施設等の基盤的施設・設備は、研究開発や人材育成の基盤となる不可欠なものであるにもかかわらず、新規制基準への対応や高経年化により大学及び研究開発機関等における利用可能な基盤的施設・設備等は減少し、研究開発及び人材育成に影響が出ている。このように我が国における基盤的施設・設備の強化・充実が喫緊の課題となっていることから、国、日本原子力研究開発機構及び大学は、長期的な見通しの下に求められる機能を踏まえて選択と集中を進め、国として保持すべき研究機能を踏まえてニーズに対応した基盤的施設・設備の構築・運営を図っていくべきである。そのためには、施設の規模に応じた安全確保として、新規制基準に対応した上での研究炉等の再稼働や、高経年化した施設の対応を進めるとともに、新規設置を含めた中長期的に必要な原子力の研究・教育基盤に関する検討を早急に進めることが必要である。
 また、日本原子力研究開発機構等の研究開発機関が有する基盤的施設・設備は、研究開発の進展に貢献するのみならず、それを通じた異分野も含めた多種多様な人材の交流や連携、協働による、効果的かつ効率的な成果の創出への貢献も期待される。このため、産学官の幅広い供用の促進や、そのための利用サービス体制の構築(関連人材や技術支援を含む)、共同研究等を充実させることが求められる。

(4)人材の確保及び育成
 原子力利用を取り巻く環境変化や世代交代等の要因により、人材の枯渇や知識・技術の継承への不安といった問題が生じている。例えば、大学における原子力関連学科等の学生数の減少や、原子力発電所の施設運営に必要な機械・化学等の関連分野の原子力関係事業者への採用数の減少、離職者の増加が顕著にみられる。しかしながら、廃止措置等を含め原子力関係事業が存在する限り、原子力関連人材の必要性が薄れることはないため、今後、原子力関連機関においては、国内外問わず優秀な人材の確保に努める必要がある。

図9 発電所の運転停止に伴う影響

(出典)原子力産業協会 「原子力発電に係る産業動向調査2016」

注1)
学校基本統計の学科系統分類表における中分類「原子力理学関係」及び「原子力工学関係」の合計。

原子力工学関係(大学):
原子(力)核工学、原子力工学、原子炉工学、原子工学、応用原子核工学、システム量子工学、量子エネルギー工学、原子力技術応用工学、原子力安全工学
原子力理学関係(大学院):
原子核理学、原子核宇宙線学、原子物理学
原子力工学関係(大学院):
原子核工学、原子力工学、原子工学、応用原子核工学、量子エネルギー工学、エネルギー量子工学、原子力・エネルギー安全工学、共同原子力、原子力システム安全工学、量子放射線系

注2)
文部科学省「学校基本統計」を基に文部科学省が作成

図10 原子力関連学科等における学生数の推移

(出典) 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力科学技術委員会 原子力人材育成作業部会(第1回) 資料4-2 文部科学省 「学校基本統計における学生動向」(2015年)

注1)
アンケート対象11社:北海道、東北、東京、北陸、中部、関西、中国、四国、九州、日本原電、電源開発)   原子力希望者数、原子力部門離職率ともに、11社のうち、回答のあった社のデータを使用
注2)
電気事業連合会まとめ

図11 原子力事業者における原子力希望者数と離職者数(2010年度比)

(出典)電気事業連合会調べ

 そのためには、国、原子力関係事業者、研究開発機関及び大学が、原子力分野の社会インフラ産業としての重要性や、科学技術のフロンティアとその応用の可能性や魅力、原子力発電や放射線利用を始めとしてキャリアパスが多様であることを発信していくことが有効である。
 その一方で、大学における原子力分野の教育が希薄化しているため、原子力分野の基幹科目を充実させるとともに、学んだ知識について基礎実習や実験等を通して体系的に習得し実践的能力を身につけさせるなど、基礎力をしっかりと育てることも重要である。 加えて、就業後の人材育成の基本は、現場経験を含む業務を通じた人材育成であるとの認識の下、原子力関係事業者、研究開発機関及び大学では、各組織が達成すべき目的や目標に応じて人材育成を行っていく必要がある。この際、管理職が果たす役割とともに、周囲の知識や経験を有する人材や、研究開発インフラ等の環境も影響を及ぼすことに留意する。これを補うものとして継続教育や研修の充実が必要であり、人材の流動性を踏まえて転職者も含め、組織的かつ体系的に行っていくことを期待する。なお、多様なステークホルダーとの対話や取り巻く環境への対応に当たるような人材については、技術や規制面に加えて社会的側面も含めた総合的な能力の育成も必要である。
 こうした取組に加えて、組織や専門分野の枠を超えた人材育成、知識・技術の継承を図るため、異分野の多種多様な人材の交流・連携を行う必要がある。また、グローバル化が進行する中で、我が国の人材が国内外で活躍できるように、組織や研究開発活動の国際化及び国際機関や海外の研究開発機関での業務経験を通じた人材育成も有効である。
 また、人材育成に関する取組の重要性は、研究開発機関や原子力関係事業者に限られたものでなく、安全規制や放射線防護に携わる規制側の人材の能力向上・維持も重要である。

(5)原子力科学技術の基礎研究とイノベーションの推進
 原子力科学分野は、知の探究を行う基礎科学分野として原子核物理学や素粒子物理学、量子力学、宇宙論等とともに、応用科学分野として、工学や生命科学、医学、農学等に放射線や量子ビームを利用する技術や、エネルギーとして利用する核分裂技術・核融合技術等の幅広い領域と深く関連している。これらの宇宙の起源から医療応用まで幅広い分野に関連する原子力科学技術の現状を俯瞰的に見て、その発展と適切な利用を図る取組を進める必要がある。加えて、環境変化やニーズを踏まえながら、イノベーションの源である基礎研究や基盤技術の研究開発及び産業応用に向けた技術開発や技術の標準化に取り組むことが必要である。


  1. 電気事業法に基づき、電気料金は「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」とされている。
  2. 地球温暖化対策計画(平成28年5月閣議決定)
  3. エネルギー自給率の実績値は2010年時点のもの(IEA「Energy Balances of OECD Countries 2012 Edition」)
  4. エネルギー自給率の実績値は2014年時点のもの(IEA「World Energy Balances 2016」)
  5. OECD/NEA「THE SAFETY CULTURE OF AN EFFECTIVE NUCLEAR REGULATORY BODY」
  6. 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)「国会事故調報告書」
  7. 国際原子力機関(IAEA)「福島第一原子力発電所事故 事務局長報告書」
    東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)「国会事故調報告書」
    東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)「最終報告」
  8. 安全対策を講じた後に残るリスク
  9. リスクマネジメントに関する国際標準規格
  10. 使用済燃料の再処理により回収されるプルトニウムをMOX燃料として一般の原子力発電所(軽水炉)で利用すること
  11. 科学に問うことはできるが、科学によってのみでは答えることができない問題が存在するとの考え方
  12. 放射線レベルが低く人の健康への影響が無視できる放射性物質又は放射性の物体を放射線防護規制の対象から除外すること

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