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3-1 エネルギー利用

第3章 原子力のエネルギー・放射線利用

3-1 エネルギー利用

1 原子力発電

 東電福島第一原発事故は、福島県民をはじめ多くの国民に多大な被害を及ぼし、原子力への不信・不安が高まりました。こうした不信・不安に対して真摯に向き合い、その軽減に向けた取組を一層進めていくことにより、社会的信頼を回復していくことが必須です。
 その一方で、我が国のエネルギー資源の輸入依存度は94.4% 1 と、先進国の中でも極めて高い水準にあります。加えて、原子力発電所を代替する火力発電の焚き増しに伴う化石燃料の輸入増加や再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入が電気料金の上昇といった国民負担の増加につながっております。さらに、近年では、地球温暖化対策の観点から、温室効果ガス発生量低減の努力が求められています。このような直面する課題の解決に向けた取組を進めていく必要があります。


(1)エネルギー利用の現状

 「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)では、原子力発電を、「優れた安定供給性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付けた上で、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」としています。また、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」としています [1]

@ 我が国の原子力発電の状況
 1963年10月26日に「原子力機構の動力試験炉JPDR 2 (軽水型、電気出力12,500kW)が運転を開始し、我が国初の原子力発電が始まりました。その後、我が国の原子力発電設備容量は、1978年には1,000万kWに達し、1984年には2,000万kW、1990年には3,000万kW、1994年には4,000万kWを超え、東電福島第一原発事故前の2010年度には、我が国の発電設備に占める原子力発電設備容量の割合は20.1%で、発電量に占める原子力発電電力量の割合は28.6%となりました。なお、原子力発電の設備利用率は67.3%でした。しかし、2011年の東電福島第一原発事故を受けて我が国の原子力利用を取り巻く環境は大きく変化しました。事故後、全国の原子力発電所は順次運転を停止し、2012年5月に北海道電力(株)泊発電所3号機が定期検査のため停止に伴い、我が国で稼動している原子炉の基数は42年ぶりに0基となりました。2015年度末時点で原子力発電量が我が国の発電電力量に占める割合は依然として2%を下回っています(図 3-1、図 3-2)。
 2016年12月末時点で、九州電力(株)川内原子力発電所1、2号機、関西電力(株)高浜発電所3、4号機及び四国電力(株)伊方発電所3号機が再稼動しました。なお、関西電力(株)高浜発電所3、4号機は、2016年3月9日に大津地方裁判所が運転差し止めの仮処分を決定したことに伴い、2016年12月末時点で運転を停止しています。これらを含めて原子炉設置変更許可がなされた炉が8基、その他に、新規制基準への適合性を審査中の炉が18基、適合性の審査へ未申請の炉が19基となっています(表 3 1)(詳細は、コラム〜再稼働をめぐる情勢〜を参照)。このうち、建設中の実用発電用原子炉は、東京電力 東通原子力発電所1号機、中国電力(株)島根原子力発電所3号機及び電源開発(株)大間原子力発電所の3基、414.1万kWです。
 一方、事故後、東電福島第一原発では全ての炉が廃止されることが決定され、さらに日本原子力発電(株)敦賀発電所1号機、関西電力(株)美浜発電所1、2号機、中国電力(株)島根原子力発電所1号機、四国電力(株)伊方発電所1号機、九州電力(株)玄海原子力発電所1号機の廃止が決定され、運転を終了しています。また、研究開発が進められてきた原子力機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」は、2016年12月21日の政府の原子力関係閣僚会議で、廃止措置に移行することが決定されました。したがって、合計で18基、948.1万kWが運転を終了しています。

表 3-1 我が国の原子力発電設備容量(2016年12月末時点)

(出典)日本原子力産業協会「日本の原子力発電炉(運転中、建設中、建設準備中など)」(2016年12月末)に基づき作成

図 3-1 我が国の発電電力量の推移

(出典)電気事業連合会「INFOBASE2016」(2016年)に基づき作成
※「受電その他」には、新電力が発電し大手10電力を経由せずに消費された電力は含まれない。

図 3-2 我が国の原子力発電の設備容量 3 及び設備利用率 4 の推移(電気事業用)

(出典)独立行政法人原子力安全基盤機構「平成25年版原子力施設運転管理年報」(2013年)及び電気事業連合会 「INFOBASE2016」(2016年)に基づき作成

 2012年、原子炉等規制法の改正により、我が国では、原子炉の運転期間は運転開始から40年とされました。ただし、この改正では、運転期間の満了に際し、原子力規制委員会の認可を受けた場合に、1回に限り最大20年、運転期間を延長することを認める制度(運転期間延長認可制度)も導入されています。関西電力(株)は高浜発電所1、2号機について、2015年4月に運転期間延長認可申請を提出し、2016年6月20日に認可を受けました。また、同社の美浜発電所3号機についても、2015年11月に提出した運転期間延長認可申請に対し、2016年11月16日に認可を受けています(図 3-3)。

図 3-3 既設発電所の運転年数の状況(2016年12月末時点)

(出典)総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電気料金審査専門小委員会 廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ(第3回) 資料第4号 経済産業省「廃炉を円滑にすすめるための会計関連制度の課題」(2014)を一部編集

コラム 〜再稼動をめぐる情勢〜

 東電福島第一原発事故以降、運転停止した原子炉は、原子力規制委員会が世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し運転を再開することになっています。2016年12月末時点で、国内4か所の発電所の8基の原子炉が新規制基準の適合性審査に合格し、運転再開又は再開に向けた準備をしています。しかし、一部の原子炉の再稼動に関しては、地元自治体や地元住民が運転差し止めを求める仮処分を裁判所に申請する、運転停止を原子力事業者に要請するなどの動きがあります。
 例えば、関西電力(株)高浜発電所3号機及び4号機は、原子力規制委員会の新規制基準への適合性審査に合格し、それぞれ2016年1月29日、2月26日に起動操作を開始しました(4号機については、2月29日に自動停止し、2016年12月末時点でも停止中)。しかし、2016年3月9日、大津地方裁判所は高浜発電所3号機及び4号機の運転の安全性に関する説明の不足等を理由として、再稼動禁止の仮処分命令を決定しました。これに伴い、関西電力(株)は高浜発電所3号機を停止し、2016年12月末時点で同炉は運転を停止しています。
 また、九州電力(株)川内原子力発電所1号機及び2号機については、2016年8月26日に三反園鹿児島県知事が、7月に発生した熊本地震を背景として、同発電所を一旦停止し、点検を実施するよう同社に要請しました。この要請に対し九州電力(株)は、熊本地震の発生を受けた同発電所の安全性の確認等を実施していること、両機の定期検査(1号機は10月6日〜、2号機は12月16日〜)に併せて、特別点検を実施することを説明し、同発電所の運転を継続しました。
 このように、原子力発電所の運転再開をめぐる情勢は地域によって様々です。原子力事業者は原子力規制委員会の規制基準への適合を進めるだけでなく、運転再開後も自主的に原子力発電所の安全性の向上に努めるとともに、地元自治体や住民の方のために積極的な情報公開や丁寧なコミュニケーション活動等の取組を行うことが求められています。

A 長期エネルギー需給見通しの策定
 エネルギー基本計画を受け、経済産業省は、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会 長期エネルギー需給見通し小委員会を設置して、現実的かつバランスの取れたエネルギー需給構造の将来像について、同委員会の下の発電コスト検証ワーキンググループにおける発電コストの試算も踏まえて検討を進め、2015年7月に「長期エネルギー需給見通し」を決定しました [1] [2]。長期エネルギー需給見通しでは、将来の我が国のエネルギー需給構造の見通し及びあるべき姿を示しています [2]。原子力については、徹底した省エネ、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力の高効率化等により可能な限り依存度を低減することを見込み、東日本大震災前に約30%を占めていた原発依存度が2030年度には20〜22%程度になるとの見通しが示されています。

B 世界の原子力発電の状況
 原子力発電が米国で開始されて以来、世界各国で原子力発電の開発が進められ(図 3-4)、2016年12月末時点で、世界で運転中の原子炉は447基にのぼり、原子力発電設備容量は3億9,138万kWに達しています。さらに、建設中、計画中のものを含めると総計671基、6億2,673万kWとなります。米国が、世界最大の原子力利用国であり、2016年12月末時点で99基の原子炉が稼働しています。

図 3-4 原子力発電設備容量(運転中)の推移

(出典)経済産業省資源エネルギー庁「平成28年度 エネルギー白書」(2017年)

 米国のスリー・マイル・アイランド(TMI)原子力発電所の事故 5 、ウクライナ(旧ソ連)のチェルノブイリ原子力発電所の事故 6 、さらに東電福島第一原発事故後、ドイツやイタリアなど欧米諸国の中には原子力発電に対し消極的な政策や脱原子力政策を掲げる国々が現れています。一方で、中国やインドを筆頭に、アジア、中近東、アフリカ等において、経済成長に伴う電力需要を賄うため、東電福島第一原発事故後も原子力開発が進展しています。中国では、東電福島第一原発事故後に一旦中断されていた政府による原子力発電所の建設の承認が2015年3月に開始され、インドでは、ロシアや米国等の国との協力による原子力発電所の新設計画が進められるなど、世界の原子力開発を牽引しています(図 3-5、図 3-6)。また、英国等の原子力利用先進国においては、自由化環境の下で様々な政策措置が模索され、低炭素電源としての原子力発電の重要性が再認識される動きも見られます。

図 3-5 世界における10年間ごとの営業運転を開始した原子炉の推移

(出典)日本原子力産業協会「世界の原子力発電の動向2015年版」(2015年)に基づき作成

図 3-6 日本の近隣諸国における原子炉の運転・建設状況(2016年12月末時点)

(出典)総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会(第7回) 資料第4号 経済産業省「世界の原子力平和利用への貢献」(2014年)に基づき作成

 IAEAが2016年9月に発表した年次報告書「2050年までのエネルギー、電力、原子力発電の予測2016年版」では、原子力発電の設備容量予測が示されています。予測では@現在の市場や大幅な技術革新など、原子力を取り巻く環境が大きく変化しないと仮定した、保守的で確実性の高い「低位ケース」と、A新興国の経済成長や電力需要の増大の継続を仮定し、パリ協定締約国による温室効果ガス排出削減で原子力の果たす役割が拡大することを前提にした「高位ケース」が設定されています。2015年の原子力発電設備容量は3.9億kWですが、@低位ケースの場合、設備容量は3.9億kWで横ばい、A高位ケースでは6.0億kWに拡大すると予測されています。
 なお、世界各国における原子力発電に関する動向は、資料編に記載しています。

コラム 〜米国における設備利用率の向上〜

 第2章のコラム「米国における安全性向上の取組」で紹介したように、米国では、スリー・マイル・アイランド(TMI)原子力発電所事故以降、産業界により自主的安全性向上やリスクマネジメントの実践、米国規制委員会(NRC)により規制の改善が進められてきました。こうした取組により、運転サイクルの長期化と燃料交換のための運転停止期間の短縮が可能となり、加えて、トラブルの発生頻度が減少しました。その結果、1990年頃に70%程度だった設備利用率が、2000年以降、90%程度の高い設備利用率を維持しています。

各国の原子力発電所の設備利用率の推移(暦年)

(出典)IAEA「IAEA-PRIS 」(2016年7月時点)に基づき作成

●運転サイクルの長期化と燃料交換のための運転停止期間の短縮
 NRCでは、規制の改善を進める中で、リスク情報の活用等により規制への科学的合理性の導入・合理化に取り組んできました。NRCは、1991年に、12〜18か月だった燃料交換サイクルについて、一定要件を満たした場合、18〜24か月まで延長できるようにしました。この変更が順次、実施され、運転サイクルが長期化しています。
 加えて、NRCは、1996年に、リスク情報を活用して原子炉の保守作業と検査制度を見直しました。その見直しにより、一定の要件を満たした場合、燃料交換のために原子炉を停止する際に行っていた保守作業の一部を運転中に行えるようなりました。これを受け、米国原子力エネルギー協会(NEI)はガイドラインを作成し、事業者の保守作業の改善を促進しました。その結果、1990年代初頭には、100日近くなっていた燃料交換のための停止期間が、2000年代には平均40日程度となり、高い設備利用率実現の一つの要因となっています。

米国における平均燃料交換停止日数の推移

(出典)米国原子力エネルギー協会(NEI)に基づき作成

●プラント当たりのトラブルの発生頻度の減少
 NRCでは、現行の検査制度(原子炉監視プロセス)の中でプラントに対する規制措置に当たり、プラントごとの稼働実績を含めて総合的に判断しています。稼働実績の中では、安全上重要な機器の故障、計画外の原子炉の停止といったトラブル(重要事象)も評価の対象としています。重要事象は、1990年頃に0.5件/プラント程度でしたが、2000年代には0.1件/プラントまで減少しています。これは、産業界とNRCによる安全性向上の取組結果であるとともに、高い設備利用率実現の一つの要因となっています。

コラム 〜ドイツ脱原子力・再生可能エネルギー推進がもたらす影響〜

 ドイツは2000年頃から、「脱原子力」「再生可能エネルギー拡大」を中心としたエネルギー政策を推し進めてきました。
 脱原子力政策により、2000年に19基あった運転中の商用炉は、2016年末には8基まで減少しました。これら8基も、2022年までに全て閉鎖されることが原子力法で規定されています。一方で再生可能エネルギーは、固定価格買取制度(FIT 7 )に支えられ、2016年にはドイツの国内発電電力量全体の3割を占めるまでに成長しました。
 しかしこうした再生可能エネルギーの急激な成長は、様々な問題も引き起こしています。FITでは、送電事業者が再生可能エネルギー電力を市場での卸売価格より高い価格で買い取りますが、その差額は需要家が支払う電気料金から回収されます。ドイツでは現在、こうした負担や税金が電気料金の半分以上を占めており、電気料金が高止まりする原因となっています。政府は近年、FITを見直し、国民負担を抑制する対策を進めていますが、効果が明確になるには時間がかかる見込みです。
 なお、ドイツは2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で40%削減することを目指していますが、再生可能エネルギーの拡大にもかかわらず近年削減ペースが鈍化し、目標達成が危ぶまれています。原因のひとつとして、原子力発電の縮小や排出権価格の低迷を受けて、安価で安定した電源として、排出量の多い褐炭発電の利用がほぼ横ばいで推移していることが挙げられます。対策としてドイツでは2016年以降、段階的に2.7GW相当の褐炭発電所が閉鎖されることになりました。これに伴い電力会社に支払われる補償金も、電気料金を通じて需要家が負担します。

ドイツの電気料金内訳及び電源構成の推移

注)家庭用は、年間利用電力量が2500〜5000kWhの需要家の料金、産業用は、年間利用電力量が500〜2000MWhの需要家の料金
(出典)(一財)電力中央研究所社会経済研究所 研究資料Y16501「電気料金の国際比較-2015年までのアップデート-」


(2)エネルギー利用に関する最近の取組

@ 東京電力改革・1F問題委員会における「東電改革提言」取りまとめ
 東電福島第一原発事故に係る賠償や除染、廃炉等に伴う費用が増大していることや電力システム改革に伴う電力小売全面自由化が2016年4月から開始し、電力市場の構造変化に直面していることを踏まえ、経済産業省は「東京電力改革・1F問題委員会」(以下「東電委員会」という。)を設置しました。東電委員会では、福島復興と事故収束への責任を果たすために東京電力が実施すべき経営改革について検討し、「福島の被災者の方々が安心し、国民が納得し、現場が気概を持って働けるような東電改革」の具体的な提言の取りまとめを進めました。この結果、2016年12月20日の第8回東電委員会で公表された「東電改革提言」では、以下の方針が示されました。

  1. 経済事業:先行する燃料・火力分野の事例に倣い、送配電事業・原子力事業についても、課題解決に向けた共同事業体を他の電力会社の信頼と協力を得て早期に設立し、再編統合を目指すべく、時間軸を設定し、ステップ・バイ・ステップで進める。また、電力の低廉かつ安定的な供給を実現しつつ、世界市場を狙うグローバル企業を目指す。
  2. 原子力事業:事故を起こした発災事業者としての、過去の企業文化と決別し、安全性を絶えず問い続ける企業文化や責任感を確立する。地元本位・安全最優先の事業運営体制を確立して信頼を回復する。信頼回復を前提に電力コストの低減、エネルギー安全保障や地球温暖化対策の確保に貢献する。
  3. 福島事業:福島事業が東京電力存続の原点であり、国と協力しながら世界最先端の技術を集積し、福島への責任を果たす。
  4. 経済事業と福島事業とのブリッジ:東京電力存続の原点である福島事業を支えるため、まずは当面の確保が重要になる廃炉と賠償の資金は、主として送配電事業や原子力事業が担う。また、原賠機構が株式売却益により除染費用相当分を回収するための企業価値向上については、腰を据えてより長い時間軸の中で対応する。

 2017年以降、東京電力は「東電改革提言」を踏まえ、「新・総合特別事業計画」を改訂し、改革を実行していくこととしています。東電委員会は、新・総合特別事業計画の改訂内容と東電改革の実行体制が、この提言内容に沿ったものであるかどうかを確認することとしています。

A 電力自由化時代の原子力発電
 2013年4月、「電力システムに関する改革方針」が閣議決定されました。同改革は「広域系統運用の拡大」、「小売及び発電の全面自由化」、「法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保」の3つの柱で進められており、2015年4月1日に広域的運営推進機関が設立され、2016年4月1日からは電力小売の全面自由化がスタートしています。さらに、2020年4月からは送配電部門の法的分離が実施される予定です [3]
 電力システム改革により電力の安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、需要家の選択肢や企業の事業機会の拡大等のメリットが期待できます。
 一方で、原子力事業は、巨額の初期投資額の回収期間が長期にわたるため、これまでは地域独占 8 及び総括原価料金規制 9 により投資の回収が保証されてきました。しかし、小売及び発電の全面自由化により地域独占と総括原価料金規制が撤廃され、原子力事業では投資・費用の長期的な回収ができなくなる可能性が懸念されています。原子力事業の予見可能性が低下する中で、廃炉の円滑な実施、迅速かつ最善な安全対策、安定供給の確保に支障を来す可能性が指摘されています。
 このような課題について検討するため、経済産業省は2016年9月、総合資源エネルギー調査会の下に「電力システム改革貫徹のための小委員会」、同委員会の下に「市場整備ワーキンググループ」及び「財務会計ワーキンググループ」を設置しました。特に、後者において、電力自由化環境の下での原子力事故時の賠償への備えに関する負担や廃炉に係る会計制度について議論が行われています。
 2016年12月19日には電力システム改革貫徹のための改革小委員会の「中間とりまとめ」が公表(意見募集)され、2017年2月に取りまとめられました。「中間とりまとめ」では、更なる競争活性化に向けた施策が示される一方で、市場原理のみに基づく解決が困難な公益的課題への対応策の検討状況、自由化環境下における財務会計面での課題への対応について基本的な考え方が示されています(図 3-7)。ここで示された考え方の一つである管理型積立金制度については、事故炉の廃炉を確実に実施するため、事故炉廃炉を行う原子力事業者に対して、廃炉に必要な資金を原子力損害賠償・廃炉等支援機構に積み立てることを義務付ける制度を創設すべく、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年8月法律第94号、2014年8月改正)の改正法案が第193回通常国会へ提出され、2017年5月に成立しました。この他、電力自由化の下で原子力発電所を長期的に利用するに当たり、安全性向上に係る事業者の自立的・継続的な取組を促すための、「継続的な原子力の安全性向上のための自律的システム」を、2020年をめどに確立する方針も示されました [4]

図 3-7 自由化の下での財務・会計上の課題への対応の基本的な考え方

(出典)総合資源エネルギー調査会基本政策分科会 電力システム改革貫徹のための政策小委員会「電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめ」 [4]に基づき作成

コラム 〜英国における固定価格買取制度(FIT-CFD)の導入〜

 英国では1990年に国有電気事業者を分割・民営化し、電力自由化が進められてきました。1990年代を通じて多数の発電事業者が参入しましたが、2000年代のM&Aの結果、現在では6大電気事業者に集約されています。自由化・民営化の効果で、電気料金は1990年代には低下しましたが、石炭や天然ガスなどの国内化石燃料資源の枯渇、国際的なエネルギー価格の高騰、地球温暖化対策等の影響によって、電気料金は2000年代半ばから急上昇しています。
 このため政府は2011年に電力市場改革を打ち出し、低炭素電源開発促進のため、大規模な再生可能エネルギー、原子力発電、二酸化炭素回収・貯留(CCS 10 )付火力発電に対する固定価格買取制度(FIT-CFD 11 )が導入されることとなりました。
 FIT-CFDでは、政府が株式を保有する低炭素契約会社(LCCC 12 )との間で、発電事業者が買取契約を締結し、設定された発電量(MWh)当たりの固定買取価格(ストライク・プライス)が市場価格(リファレンス・プライス)を上回った場合は、上回った額を事業者がLCCCに還元し、市場価格を下回った場合は、下回った額をLCCCが事業者に補填します。この制度は、事業者を電力価格の変動リスクから開放して長期的に安定的な発電収入を確保できる見通しが立つことで、新設投資のリスク軽減に資することが期待されています。


(3)関連の動向

@ 気候変動枠組条約への取組と原子力エネルギー技術の地球温暖化対策としての意義
 2015年末に、パリにおいて開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、全ての国が参加する公平で実効的な2020年以降の法的枠組みである「パリ協定」が採択されました(コラム〜COP21& 22〜後述)。パリ協定は、平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保つことなどを世界共通の目標としており、各国が削減目標・行動を5年ごとに提出し、世界全体の実施状況を確認すること等を規定しています。
 我が国においては、COP21に先立って提出した「日本の約束草案」(2015年7月17日、地球温暖化対策推進本部決定)で、2030年度の温室効果ガス削減を2013年度比で26.0%減(2005年度比25.4%減)にすることを目標にしています。
 国際エネルギー機関(IEA 13 )は、毎年、世界のエネルギー需給見通し(World Energy Outlook)を作成しています。IEAの試算によると、産業革命前に比べて長期的な気温上昇を2℃未満に抑えた場合のシナリオ(450シナリオ)では、2040年における世界全体の一次エネルギー需要の伸びは、2014年比の約1.1倍にとどまり、化石燃料利用は現状の8割程度に減少します。一方、再生可能エネルギーは現状の約2.4倍となり、一次エネルギーの約31%を占めると見込まれています。また、原子力発電も大きく増加し、現状の約2.4倍(一次エネルギーの約11%)になるとの見通しが示されています(図 3-8)。

図 3-8 世界の一次エネルギー消費量の試算

(出典)IEA「WorldEnergyOutlook2016」(2016年)に基づき作成 14

 また、IEAは、「エネルギー技術展望2016」(Energy Technology Perspective 2016)において、技術の普及を現在実施されている政策だけで推進するというシナリオ(6℃シナリオ、6DS)と比較して、低炭素技術への適切な支援を行うとするシナリオ(2℃シナリオ、2DS)では、2050年の発電分野における二酸化炭素の排出量が70%削減されると分析しています。この場合において、2015〜2050年の累積的な排出削減量への寄与率は、最終エネルギー消費における燃料・エネルギー利用の効率化が38%、再生可能エネルギーの利用が32%、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS 15 )及び原子力発電の寄与度がそれぞれ12%、7%と続いています(図 3-9)。

図 3-9 世界の二酸化炭素排出量削減の試算

(出典)IEA「Energy Technology Perspective 2015」(2016年) 16

 様々な電源のうち、原子力発電の運転時の温室効果ガスの排出量は少なく、石炭火力、石油火力、LNG火力と比較して著しく低いだけでなく、再生可能エネルギー等と同等レベルとなっています(図 3-10)。

図 3-10 各種電源別のライフサイクルCO2排出量

(出典)日本原子力文化財団「原子力エネルギー図面集2016」(2016年)

図 3-11 我が国の電力起源のCO2排出量推移

*) 電気事業低炭素社会協議会の速報値(会員事業者42社のうち、2015年度に事業活動を行っていた39社の実績)
(出典)第38回原子力委員会 資料第3-1号 電気事業連合会「原子力発電の現状について」(2016年)

 我が国の電力起源のCO2排出量推移は図 3-11に示すとおりです。我が国では、2016年5月13日に、「日本の約束草案」及び「パリ協定」を踏まえ、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するための計画である「地球温暖化対策計画」が閣議決定されました。同計画では、エネルギー起源の二酸化炭素を削減するため、様々な政策措置を講じていくこととしており、施策のひとつとして安全性が確認された原子力発電の活用を挙げています。

コラム 〜COP21及び22に関する動向〜

 国際社会では、気候変動は生態系や人類に悪影響を及ぼすおそれのある問題であるという認識の下、1992年に「気候変動に関する国際連合枠組条約」(以下「気候変動枠組条約」という。)を採択しました。この条約の締約国会議は、COP 17 と略称されています。
 気候変動枠組条約は、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるという目的を実現するために議定書を定めることとしています。1997年に京都で開催されたCOP3では、2008年から2012年までの期間中における先進国の温室効果ガス削減目標などが定められました。
 2015年の11月から12月にかけてパリで開催されたCOP21では、京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みであるパリ協定が採択されました。パリ協定は、気候変動枠組条約の全加盟国が参加する枠組みとなっています。
 パリ協定は、2016年11月4日に発効しました。また、パリ協定の発効直後の同月7〜18日にかけてCOP22がモロッコのマラケシュで開催されました。COP22で我が国は、気候変動対策に関する取組や意欲を発信したほか、パリ協定の実施指針は、先進国と途上国とを二分化したものとすべきではないといった考え方を提示しています。
 しかし、2017年6月に、米国はパリ協定からの脱退を表明しました。この表明を受けた我が国のステートメントを発表し、パリ協定の実施に向けての日本の強固な意思を表明しました。

第21回気候変動枠組条約締約国会議COP21でスピーチする安倍総理大臣

(出典)外務省ウェブサイト「COP21首脳会合における安倍総理大臣スピーチ」 18

A エネルギー利用に係る我が国の国際的貢献
 国際的なエネルギー需給構造は、国際的なエネルギー供給体制の変化、世界的な技術革新の進展、地球温暖化対策等に応じて変化します。このようなエネルギー国際環境において、一国のエネルギー需給構造を安定化・効率化するためには、国際的なエネルギー協力の枠組みを戦略的、包括的に構築していくことが重要です。我が国においてもIEAやG7等の多国間枠組みを通じた協力や先進諸国及びアジア各国等との二国間協力が進められています。
 2016年5月、我が国が議長国となった先進主要7か国によるG7伊勢志摩サミットの首脳宣言では、以下のような点が盛り込まれております。

  • 最高水準の原子力安全を達成し、維持していくことへのコミットメントを再確認した
  • 原子力は、将来の温室効果ガス排出削減に大いに貢献し,ベースロード電源として機能する
  • 原子力政策に対する社会的理解を高めるために、科学的知見に基づく対話と透明性の向上が重要である
  • 独立した効果的な規制当局を含め、安全性、セキュリティ及び不拡散において世界最高レベルの水準を確保し、その専門的な知見や経験を交換することを求める

B 原子力損害賠償制度に関する状況
 原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合における損害賠償に関する基本的制度を定め、被害者の保護と原子力事業の健全な発達に資することを目的として、1961年に原賠法が制定されました。
 東京電力福島第一、第二原子力発電所事故の被害者への賠償について、国は、原賠法に基づき、原子力損害賠償紛争審査会を設置し、当該審査会において賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示した指針を策定するとともに、原子力損害賠償紛争解決センターでは和解仲介手続を実施するなど、被害者のための様々な措置を講じています。また、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて、東京電力による円滑な賠償の支援を行っています。詳細は、第1章1-3に記載しています。
 原子力損害賠償制度は、原賠法の制定以降、必要な見直しが行われてきました。2014年に制定されたエネルギー基本計画においては、見直しについて、原子力の位置付け等を含めたエネルギー政策を勘案しつつ、現在進行中の福島の賠償の実情等を踏まえ、総合的に検討を進めることとされています [1]
 当面対応が必要な事項及び今後の進め方について整理するため、「原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議」(2014年6月内閣総理大臣決裁)が設置されており、当面の課題として「原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC 19 )」の締結について議論が行われました。同会議における議論を基に、国会にCSCが提出され承認されるとともに、必要な関連法 20 が成立し、我が国は2015年1月にCSCに署名しました。その結果、CSCは同年4月に発効されました。
 また、今後の進め方について、2015年1月に開催された同会議にて、原子力損害賠償制度の課題及び今後の進め方について議論が行われ、今後万が一原子力事故が発生した際の原子力損害賠償の在り方については、原子力委員会で検討を行うことが適当であるとされました [5]
 これを受け、原子力委員会は、2015年5月に「原子力損害賠償制度専門部会」を設置し、今後発生し得る原子力事故に適切に備えるための原子力損害賠償制度の在り方について、専門的かつ総合的な観点から検討を行っています。2016年8月に開催された第12回の部会では、これまでの議論を踏まえ、今後更に議論が必要と考えられる論点等を「原子力損害賠償制度の見直しの方向性・論点の整理」としてとりまとめました。その後、原賠法等の関係法令の改正に向け、残された論点について議論を行っています。


2 核燃料サイクル

 エネルギー資源の大部分を輸入に依存している我が国では、原子力発電所で発生する使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を再び燃料として有効利用する「核燃料サイクル」の確立を国の基本方針としています。この基本方針に基づき、立地地域を始めとする国民の理解と協力を得つつ、安全の確保を大前提に、国や事業者等による取組が進められています。核燃料サイクルは、ウラン燃料の生産から発電までの上流側プロセスと、使用済燃料の中間貯蔵や再処理、混合酸化物(MOX)燃料製造及び放射性廃棄物の適切な処理・処分等からなる下流側プロセスに大別されます(図 3-12)。
 上流側のプロセスは、@)天然ウランの確保・採掘・製錬、A)六フッ化ウランへの転換、B)ウラン235の割合を高めるウラン濃縮、C)二酸化ウランへの再転換、D)ウラン燃料の成型加工、E)ウラン燃料を用いた発電からなります。
 下流側のプロセスは、@)使用済燃料の中間貯蔵、A)使用済燃料からウラン及びプルトニウムを分離・回収し、残りの核分裂生成物等をガラス固化する再処理、B)ウランとプルトニウムの混合酸化物のMOX燃料加工、C)MOX燃料を軽水炉で利用するプルサーマル、D)放射性廃棄物の適切な処理・処分等からなります。なお、再処理を行わない政策を取っている国では、原子炉から取り出した使用済燃料を直接、高レベル放射性廃棄物として処分(直接処分)します。
 ウラン濃縮施設や使用済燃料の再処理施設は核兵器の材料になる高濃縮ウランやプルトニウムの製造に転用される可能性があります。そのため、国内にこれらの施設を保有する我が国は、原子力利用は原子力基本法に則り、厳に平和の目的に限り行うとともに、国内的及び国際的懸念を生じさせないよう平和利用に係る透明性の向上を図っている。我が国の核燃料サイクル立地地点を図 3-13に示します。

図 3-12 核燃料サイクルの概念

(出典)日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集2016」(2016年)

図 3-13 我が国の核燃料サイクル施設立地地点(2017年8月時点)

(出典)日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」を一部編集


(1)我が国の取組の基本的考え方

 エネルギー基本計画(2014年4月閣議決定)では、核燃料サイクルに関する以下のような基本的考え方が示されています [1]

  1. 我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針とする。
  2. 核燃料サイクルに関する諸課題は、短期的に解決するものではなく、中長期的な対応を必要とする。また、技術の動向、エネルギー需要、国際情勢等の様々な不確実性に対応する必要があることから、対応の柔軟性を持たせることが重要である。

(2)核燃料サイクルに関する取組

@ 天然ウランの確保
 天然ウランの生産国は、政治情勢が比較的安定している複数の地域に分散しており、国内での燃料備蓄効果が高く、資源の供給安定性に優れています。また、世界のウラン資源埋蔵量は、表3-2に示すとおり、探鉱費用に応じて増減しています。

表 3-2 世界のウラン資源埋蔵量

注1)四捨五入のため数値が一致しない場合がある
注2) 詳細な積もり値がない、あるいは、対外秘とした国もあるため、埋蔵量がデータよりも高い可能性がある
(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium2016:Resources, Production and Demand」 21 (2016年)及び「Uranium 2011:Resources, Production and Demand」 22 (2012年)に基づき作成

 国際的なウラン価格は図 3-14に示すとおり、1980年代中旬以降、20米ドル/ポンドを下回る水準で推移していましたが、2005年以降は価格が大きく変動しており、2007年6月には136米ドル/ポンドの最高値を記録し、近年は40米ドル/ポンド前後で推移しています。

図 3-14 ウラン価格の推移

(出典)経済産業省資源エネルギー庁「平成27年度 エネルギー白書」(2016年)

また、ウラン需給見通しは図 3-15に示すとおりです。

図 3-15 ウラン需給見通し

(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium2016:Resources, Production and Demand」 (2016年) 23 に基づき作成

 我が国の電気事業者は、カナダ、オーストラリアなどから主として長期購入契約により天然ウランを確保しているほか、我が国の企業がカザフスタン、ウズベキスタンなどにおいてウラン鉱山の自主開発を進めています。我が国としては、今後も供給国の多様化に努めるとともに、ウラン鉱山開発・探鉱プロジェクトへの参画など、自主開発輸入の比率を高める必要があります。このためには、資源外交の強化、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による探鉱事業へのリスクを軽減させる金融支援、株式会社日本貿易保険や株式会社国際協力銀行等の政策金融による支援などが重要です。

A ウラン濃縮
 天然ウランには、原子力発電所で利用するウラン235が0.7%程度しか含まれていないため、この濃度を3〜5%まで濃縮して燃料として使用しています。日本原燃(株)の六ヶ所ウラン濃縮工場では、1992年から六フッ化ウランを用いて濃縮ウランが生産されています。世界的には、ウラン濃縮では「ガス拡散法」と「遠心分離法」が利用されています。日本では、日本原燃(株)が開発したより高性能で経済性に優れた新型遠心分離機による濃縮ウランが生産されています。既存の遠心分離器をこの新型遠心分離機への変更及び新規制基準の対応のため変更許可申請が申請され、原子力規制委員会により、2017年5月に事業変更の許可がなされました。

B 再転換・成型加工
 濃縮ウランから軽水炉用の核燃料(燃料集合体)を製造するためには、六フッ化ウランから粉末状の二酸化ウランにする「再転換」工程と、粉末状の二酸化ウランを成型、焼結し、ペレット状に加工し、被覆管の中に収納して燃料集合体に組み立てる「成型加工」工程の2つの工程が必要となります。
 再転換工程について、国内では三菱原子燃料(株)のみが実施しています。東電福島第一原発事故前、国内で必要とされる量について、同社で再転換されるもののほかに、海外で濃縮し、再転換された後に輸入したものでまかなっていました。なお、現在(2016年12月時点)、三菱原子燃料(株)の再転換施設は原子力規制委員会において、新規制基準への適合性の審査が行われています。
 成型加工事業について、国内では三菱原子燃料(株)、(株)グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン及び原子燃料工業(株)の3社が実施しています。東電福島第一原発事故前、加圧水型軽水炉(PWR)用と沸騰水型軽水炉(BWR)用共に国内で必要とされる量の大部分をこの3社でまかなっています。なお、現在(2016年12月時点)、原子力規制委員会において、これらの施設の新規制基準への適合性の審査が行われています。そのうちグローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンについては原子力規制委員会により2017年4月に事業変更の許可がなされました。

C 使用済燃料の貯蔵
 使用済燃料は、再処理されるまで各原子力発電所の貯蔵プール等で貯蔵・管理されており、2016年9月末時点で、合計約14,830トンの使用済燃料が貯蔵・管理されています(表 3-3)。

表 3-3 各原子力発電所(軽水炉)の使用済燃料の貯蔵量及び管理容量(2016年9月末時点)

(出典)電気事業連合会「使用済燃料貯蔵対策への対応状況について」(2016年)

 貯蔵容量が逼迫している原子力発電所が一部存在しており、今後、原子力発電所の再稼動や廃止措置が進む中、貯蔵能力の拡大が重要な課題です。このような状況を踏まえ、最終処分関係閣僚会議は2015年10月に、「使用済燃料対策に関するアクションプラン」を策定し、政府がこれまで以上に積極的に関与しつつ、事業者の一層の取組を促すなど、安全の確保を大前提として、貯蔵能力の拡大に向けた取組の強化を官民が協力して推進することとされました。このアクションプランを踏まえ、同年11月、電気事業者が「使用済燃料対策推進計画」を策定しました。電気事業者は同計画において、発電所敷地内の使用済燃料貯蔵施設の増強(貯蔵用プールのリラッキング、乾式貯蔵施設の設置等)、中間貯蔵施設の建設・活用等により、2020年頃に4,000トン程度、2030年頃に2,000トン程度、合わせて6,000トン程度の使用済燃料貯蔵対策を行う方針としています。同計画を確認・フォローアップするために使用済燃料対策推進協議会を2015年11月に設置し、使用済燃料対策に対する電気事業者の取り組み状況について確認を行っています。

D 使用済燃料再処理
1) 使用済燃料再処理機構の設立
 電力自由化など原子力事業をめぐる事業環境が変化する中においても、再処理等が将来にわたって着実に実施されるよう、2016年5月に再処理等拠出金法が成立しました。その上で、この法律に基づき、再処理等に必要な資金を管理し、再処理等を着実に行う責任を有する認可法人として、同年10月に使用済燃料再処理機構が設立されました(図 3-16)。

図 3-16 原子力発電における使用済燃料の再処理等のための拠出金制度の概要

(出典)経済産業省資源エネルギー庁 

経済産業大臣より、再処理等拠出金法律案に対する附帯決議を踏まえ意見を求められた、同機構の実施中期計画について、2016年10月に原子力委員会は以下の意見を示しました。

  • 今般の実施中期計画では、法律上の要件である、再処理や再処理関連加工の実施場所等について述べているが、これらの施設は、国際原子力機関の保障措置下にあること等から、平和利用の観点からは妥当であると考える。他方、再処理や再処理関連加工の実施時期及び量に関する記述は無いことから、プルトニウムの需給バランス確保の観点からは現時点において意見を申し上げる状況にはない。
  • 今後、これらの再処理や再処理関連加工の実施時期及び量を含む実施中期計画が再処理を実施する前に提示されることを求める。
  • 再処理や再処理関連加工の実施時期及び量に関する記述を含む実施中期計画の認可に際しては、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則の下、プルトニウム需給バランスについて、具体的かつ現実的な見通しが明示されていること、電気事業者が策定するプルトニウム利用計画との整合性が図られていることを確認するよう期待する。
  • 同機構の実施中期計画の下で事業を推進するに当たり、機構及び事業を委託する事業者の双方のガバナンスが重要であると認識しており、その観点から実施中期計画を実施するための適切な役割分担、実施体制の下、効率的・効果的に事業が推進されることを期待する。
  • 日本原燃(株)は適切な工程管理と施設周辺の環境保全に加えて技術的知見の蓄積・継承に取り組むとともに、学理を取得し、技術的知識も有する人材育成についても強力に推進されることを期待する。

2) むつ中間貯蔵施設及び六ヶ所再処理工場に関する取組
 使用済燃料対策を着実に進める観点からは、リサイクル燃料貯蔵(株)のリサイクル燃料備蓄センター(むつ中間貯蔵施設)や日本原燃(株)の六ヶ所再処理工場(図 3-17)について、地元の理解を得つつ、着実な竣工を進めることは重要な課題です。現在(2016年12月時点)、原子力規制委員会において、これらの施設の新規制基準への適合性の審査が行われています。
 なお、むつ中間貯蔵施設は、2018年後半に貯蔵容量3,000トン規模で操業を開始し、最終的に貯蔵容量を5,000トンまで拡大する予定です。

図 3-17 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場

(出典)日本原燃(株)ウェブサイト「再処理事業の概要」 24

 六ヶ所再処理工場では、アクティブ試験はほぼ終了しており、トラブルのあったガラス固化試験については、2013年に社内試験を終了しております。同施設の竣工は、2018年度上期の予定となっています。六ヶ所再処理工場には2000年12月より以降、使用済燃料受入れ・貯蔵が開始されており、2016年12月末時点で約3,393tUが搬入されています。そのうち、約425tUがアクティブ試験の段階で再処理されています。

3) 原子力機構における取組
 我が国ではこれまで、原子力機構(特に、東海再処理施設)を中心として、再処理及び再処理技術に関する研究開発を行ってきました。同施設での使用済燃料の累計再処理量は、試験運転期間を含め1977年9月から2007年5月までに、約1,140tUとなっています。ただし、2014年9月に取りまとめられた「日本原子力研究開発機構改革報告書」において、同施設の新規制基準対応は困難であるとの判断により、2017年度には再処理事業規則に定める廃止措置計画を策定し、認可申請する予定です。  また、原子力機構は、東海再処理施設での軽水炉等の使用済燃料の再処理を通じて得た技術について、日本原燃(株)と技術協力を進めてきました。特に、日本原燃(株)六ヶ所再処理工場におけるガラス固化体を製造する工程でのトラブルに対応し、実規模モックアップ試験施設(KMOC)を利用して、トラブルを起こした溶融炉の構造の改良、運転方法の立案などの協力を行ってきており、原子力機構から日本原燃(株)への技術移転は、ほぼ完了した状況です。

E ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料製造
 日本原燃(株)は、商業の軽水炉用民間MOX燃料加工施設(最大処理能力は年間130tHM 25 )の建設を、2019年度上期の竣工を目指しています。現在(2016年12月時点)、原子力規制委員会において、この施設の新規制基準への適合性の審査が行われています(図 3-18)。
 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場で回収されるプルトニウムは、このMOX燃料加工施設でMOX燃料体に加工され、我が国の軽水炉で利用される予定です。六ヶ所再処理工場と歩調を合わせて、国内のMOX燃料加工事業が着実に進められることが期待されます。
 なお、海外の再処理施設において回収されたプルトニウムについては、海外においてMOX燃料体に加工され、我が国に輸送されます。
 また、我が国では、原子力機構を中心として、「もんじゅ」、「常陽」等の高速増殖炉、新型転換炉等に使用するためのMOX燃料製造(成形加工)に関する研究開発の実績があります。その実績は2016年度末までの累積でMOX燃料重量約173tHMに達しています。

図 3-18 日本原燃(株)MOX燃料加工施設(イメージ)

(出典)日本原燃(株)ウェブサイト「MOX燃料加工事業の概要」 26

F 軽水炉によるMOX燃料利用(プルサーマル)
 プルトニウムの利用において、現時点では、現実的な手段である、軽水炉でのMOX燃料利用(プルサーマル)での対応が求められております。また、エネルギー基本計画においても、着実に推進することとされております。
 軽水炉でのMOX燃料利用は、海外において約6,350体の実績(2014年1月時点)があり、我が国では、九州電力(株)玄海原子力発電所3号機は2009年12月より、四国電力(株)伊方発電所3号機は2010年3月より、東電福島第一原発3号機(2012年4月廃止)は2010年10月より、関西電力(株)高浜発電所3号機は2011年1月より、プルサーマルによる運転を実施した実績があります。
 「我が国におけるプルトニウム利用の基本的考え方について」(2003年8月原子力委員会決定)に基づき、電気事業連合会はプルサーマル計画を策定・公表し、2009年に策定した計画では、2015年度までに全国の16〜18基の原子炉でプルサーマルを順次実施するとしていました。しかし、東電福島第一原発の事故後の再稼動の状況を踏まえ、電気事業連合会は2016年3月、「2015年度」という導入目標時期については見直す必要があるが、プルサーマルの実施方針に変更はなく、六ヶ所再処理工場において新たなプルトニウムの回収が開始されるまでにプルサーマル計画を検討し、公表することとしています。なお、プルサーマルを行う計画を有している原発のうち、2016年8月に再稼働し、実際にMOX燃料を使用してプルサーマルを行っている伊方原発3号機など3基が原子力規制委員会の新規制基準適合性審査を終え、7基が審査を受けています(図 3-19)。

図 3-19 電気事業者のプルサーマル実施状況(2016年7月末時点)

(出典)第1回高速炉開発会議 資料第2-2号 経済産業省「我が国のプルトニウム・バランスと高速炉」(2016年)

G 高速炉に関する検討状況
 高速炉開発を取り巻く近年の環境変化も踏まえ、2016年9月に開催された第5回原子力関係閣僚会議における決定を受け、我が国の将来的な高速炉開発方針案の検討・策定作業を行う「高速炉開発会議」が設置されました。同会議での検討を踏まえ、2016年12月に開催された第6回原子力関係閣僚会議において、「高速炉開発の方針」を決定しました。また、「もんじゅ」については、昨年12月に開催された原子力関係閣僚会議において「『もんじゅ』の取扱いに関する政府方針」が決定され、原子炉としての運転は再開せず、今後、廃止措置に移行し、あわせて将来の高速炉開発における新たな役割を担うよう位置付けることとされました。前者の「高速炉開発の方針」 [6]では、以下の4つの原則が示されています。
 【原則1】国内に蓄積した技術・知見・人材の徹底活用(国内資産の活用)
 【原則2】国際ネットワークを利用した最先端知見の吸収(世界最先端の知見の吸収)
 【原則3】費用対効果の高い、コスト効率的な開発の推進(コスト効率性の追求)
 【原則4】国、メーカー、電力、研究機関の責任関係を一元化した体制(責任体制の確立)
 「高速炉開発の方針」では、これらの4原則に則った開発方針を具体化するため、高速炉開発会議の下に「戦略ワーキンググループ」を設置し、2018年を目途に、今後10年程度の開発に関する戦略ロードマップの策定を目指すこととされています。一方、原子力委員会では、2017年1月に「高速炉開発について(見解)」を取りまとめ、今後の取組に関して留意すべき点を述べました。その中では、国内電力環境の変化等を勘案し、商業化ビジネスとしての成立条件や目標を含めて在り方や方向性を検討していく必要があるとともに、その際、国際的なウランの資源の賦存状況等にも留意することが求められるといったことを指摘しました。


  1. 2015年データ時点です。IEA「Energy Balance of OECD countries 2015 Edition」
  2. Japan Power Demonstration Reactor
  3. 発電設備の最大能力で、発電所が単位時間にどのくらい電気を作ることができるかを示します(W、kWで表す)。
  4. 発電所が、ある期間において実際に作り出した電力と、その期間休まずフルパワーで運転したと仮定した時に得られる電力量(定格電気出力とその期間の時間との掛け算)との百分率比です。
    年間の設備利用率(%)=[実際の年間発電電力量(kW)÷(設備容量(kW)×365日×24時間)]×100
  5. 1979年3月28日に、米国のスリー・マイル・アイランド(TMI)原子力発電所2号機で発生した事故で、原子炉内の一次冷却材が減少して炉心上部が露出し、燃料の損傷や炉内構造物の一部溶融が生じるとともに、周辺に放射性物質が放出され、住民の一部が避難しました。INES(国際原子力事象評価尺度)でレベル5と評価されています。
  6. 1986年4月26日に、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号機で発生した事故で、急激な出力の上昇による原子炉や建屋の破壊に伴い大量の放射性物質が外部に放出され、ウクライナ、ロシア、ベラルーシや隣接する欧州諸国を中心に広範囲にわたる放射能汚染をもたらしました。INES(国際原子力事象評価尺度)でレベル7と評価されています。
  7. Feed-in-Tariff
  8. 特定地域の電力販売をその地域の電力会社1社が独占できる枠組みです。
  9. 総原価を算定し、これを基に販売料金単価を定める枠組みです。
  10. Carbon capture and storage
  11. Feed-in-Tariff with Contracts for Difference
  12. Low Carbon Contracts Company
  13. International Energy Agency
  14. (c) OECD/IEA 2016 World Energy Outlook, IEA Publishing.
    Licence: www.iea.org/t&c as modified and translated into Japanese by MRI Research Associates, Inc.
  15. Carbon dioxide Capture and Storage
  16. (c) OECD/IEA 2016 Energy Technology Perspectives, IEA Publishing.
    Licence: www.iea.org/t&c
  17. Conference of the Parties
  18. http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page24_000543.html
  19. Convention on Supplementary Compensation for Nuclear Damage
  20. 「原子力損害の補完的な補償に関する条約の実施に伴う原子力損害賠償資金の補助等に関する法律」(平成26年11月28日法律第133号)及び「原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律」(平成26年11月28日法律第134号)です。
  21. Based on data from OECD/IAEA (2016), Uranium 2016: Resources, Production and Demand, OECD Publishing, Paris. DOI: http://dx.doi.org/10.1787/uranium-2016-en
  22. Based on data from OECD/IAEA (2012), Uranium 2011: Resources, Production and Demand, OECD Publishing, Paris. DOI: http://dx.doi.org/10.1787/uranium-2011-en
  23. Based on data from OECD/IAEA (2016), Uranium 2016: Resources, Production and Demand, OECD Publishing, Paris. DOI: http://dx.doi.org/10.1787/uranium-2016-en
  24. http://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/cycle/summary/history.html
  25. MOX燃料中のプルトニウムとウラン金属成分の質量
  26. http://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/mox/summary/

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