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1-2 原子力安全に関する東電福島第一原発事故後の取組と体制見直し

1-2 原子力安全に関する東電福島第一原発事故後の取組と体制見直し

 国会事故調及び政府事故調の提言等を受けて、国における原子力安全規制及び原子力災害対策に関する体制が強化されました。
 新たに発足した原子力規制委員会は、原子力利用における安全の確保の事務を一元的に実施し、国民の安全を最優先とした活動に取り組んでいます。特に、シビアアクシデント対策の強化等を盛り込んだ、世界で最も厳しい水準の新規制基準を制定し、適合性の審査を行っています。
 また、原子力災害対策特別措置法の改正により、大規模な自然災害等による原子力災害の発生も想定し、対応策の整備等原子力災害の防止に関し万全の措置を講ずることが国の責務として明確化されるとともに、原子力基本法の改正により、原子力防災に関する平時からの総合調整を行う原子力防災会議の設置など、体制の強化が図られています。
 また、安全確保に第一義的な責任を有する原子力事業者は、より高いレベルの安全を目指して自主的かつ継続的な安全性向上活動に取り組んでいます。


(1)原子力安全規制に関する取組

@ 原子力行政体制の見直しと原子力規制委員会の発足
 東電福島第一原発事故以前、原子力エネルギー利用の推進を担う経済産業省に、原子力発電所等の安全規制を担当する原子力安全・保安院が設置されており、規制組織としての独立性が不十分でした。さらに、安全規制については、原子力施設等の種類に応じて、原子力安全・保安院の他に文部科学省、国土交通省等の各省が担当するとともに、内閣府原子力安全委員会がその判断の妥当性の確認(ダブルチェック)を行っており、縦割り行政の弊害が危惧されていました。
 東電福島第一原発事故の反省を踏まえ、これらの問題点に対処するため、「規制と利用の分離」、「原子力安全規制に係る関係業務の一元化」、「規制の在り方や関係制度の見直し」等が検討され、「原子力安全規制に関する組織等の改革の基本方針」(2011年8月)が閣議決定されました [13]。この方針に従い、2012年6月に「原子力規制委員会設置法」(平成24年法律第47号)が成立し、2012年9月に環境省の外局として原子力規制委員会とその事務局である原子力規制庁が発足しました。これに伴い、原子力安全・保安院と原子力安全委員会は廃止され、これらの組織と文部科学省及び国土交通省が所管してきた原子力安全規制に係る事務は、極めて高い独立性を持つ 5 原子力規制委員会が一元的に行うことになりました。また、2014年3月には、原子力規制庁の専門性を向上させるため、独立行政法人 原子力安全基盤機構が原子力規制庁に統合されました。原子力規制委員会の主な所掌事務 6 は、@原子力利用における安全確保、A保障措置の実施のための規制、B放射線障害の防止、C放射性物質及び放射線の水準の監視と測定、D核物質防護等となっています [14]。 東電福島第一原発事故前後の原子力行政体制の比較を図 1-1に示します。

図 1-1 東電福島第一原発事故前後の原子力行政の体制


A 新規制基準の導入と原子力安全規制の継続的な改善
 東電福島第一原発事故後、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(昭和32年法律第166号)(以下「原子炉等規制法」という。)の改正により、その目的に、国民の健康の保護、環境の保全等が追加されました。また、改正後の原子炉等規制法では、原子力安全規制の強化のため、(1)重大事故(シビアアクシデント)対策の強化、(2)許可済み原子力施設に対して最新の技術的知見を踏まえた新たな規制基準が定められた場合の当該基準への適合の義務付け(バックフィット制度の導入)、(3)運転期間延長認可制度の導入(運転可能期間を、最初の使用前検査合格日から起算して40年とする。ただし、原子力規制委員会が認可した場合は、1回に限り20年を限度に延長可能とする。)、(4)発電用原子炉施設に関する規制の原子炉等規制法への一元化などが新たに規定されました。
 この改正を受け、最新の技術知見、IAEA安全基準を含む各国の規制動向等を取り入れて、2013年7月に、実用発電用原子炉施設の新規制基準が施行されました。同様に、2013年12月には核燃料施設等の新規制基準が施行されました [15]。新規制基準は、地震や津波等の自然災害や火災等への対策を強化するとともに、万一シビアアクシデントが発生した場合に対する十分な準備等を要求しています。また、意図的な航空機の衝突等のテロリズムへの対処としての施設の整備等についての規定が新設されました。(図 1-2)。

図 1-2 実用発電用原子炉施設に係る従来の規制基準と新規制基準の比較

(出典)原子力規制委員会「実用発電用原子炉及び核燃料施設等に係る新規制基準について(概要)」(2016年)

 また、原子力規制委員会は、国内外における最新の技術的知見や動向を考慮して、規制の継続的な改善にも取り組んでおり、2016年1月には、IAEAが加盟国の原子力規制に関する法制度や組織等について、IAEA安全基準に照らして総合的なレビューを行う総合規制評価サービス(IRRS 7 )を受け入れました。IRRSにより明らかになった課題としては、検査と執行、放射線源規制・放射線防護及び人材育成・確保等があり、これら課題への対応を進めています [16] [17]

B 原子力規制行政に対する信頼の確保
 原子力規制委員会は、「原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守ること」を組織理念として、独立性、実効性、透明性、向上心と責任感、緊急時即応に関する5つの活動原則を掲げています [18]。また、行動規範や外部有識者の選定に係る要件を定め、組織の中立性の確保に努めています [19][20]。さらに、委員会の各種会合は原則として内容を公開するなど、情報公開を徹底し、意思決定プロセスの透明性を図っています。 一方で、原子力規制委員会は、国内外の多様な意見に耳を傾け、孤立と独善を戒めるとして、外部とのコミュニケーションにも取り組んでおり、規制活動の状況や改善に関して、原子力事業者、立地自治体、地域住民等との意見交換を行っています [14] [21]。また、IAEA及びOECD/NEA等の国際機関や諸外国の原子力規制機関との連携・協力を通じ、我が国の知見、経験を国際社会と共有することに努めています [22]

C 原子力の安全確保に向けた技術・人材の基盤の構築
 原子力規制委員会では、「規制基準等の整備に活用するための知見の収集・整備」、「審査等の際の判断に必要な知見の収集・整備」、「規制活動に必要な手段の整備」、「技術基盤の構築・維持」等を目的として、安全研究の成果を活用しています。


(2)原子力災害対策の充実に向けた取組

@ 原子力災害対策に関する枠組みの見直し
 東電福島第一原発事故後、各事故調査報告書の提言等を基に、我が国の原子力災害対策に関する枠組みは抜本的に見直され、原子力災害特別措置法(以下「原災法」という。)及び関連法令が改正され、関連の指針・計画等が整備されました(図 1-3)。

図 1-3 原子力災害対策に関する法令等

(出典)国立研究開発法人日本原子力研究開発機構原子力緊急時支援・研修センター「JAEA-Review「我が国の新たな原子力災害対策の基本的な考え方について−原子力防災実務関係者のための解説−」」(2013年)に基づき作成

 改正された原災法では原子力事業者の責務として、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずること、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む)の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関し誠意をもって必要な措置を講ずることが明記されています。また国の責務として、「大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為による原子力災害の発生も想定し、(中略)警備体制の強化、原子力事業所における深層防護の徹底、被害の状況に応じた対応策の整備その他原子力災害の防止に関し万全の措置を講ずる」ことが明記されています。さらに、国、原子力事業者、地方公共団体等による原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策の円滑な実施を確保できるように、原子力規制委員会が原子力災害対策指針を定めることも規定されています。これを受けて、原子力規制委員会は、2012年に「原子力災害対策指針」(2017年7月5日最終改正)を策定しました [23]。同指針には、原子力災害対策に係る計画の策定や対策の実施に当たって、「住民の視点に立った防災計画を策定すること」、「災害が長期にわたる場合も考慮して、継続的に情報を提供する体系を構築すること」及び「最新の国際的知見を積極的に取り入れる等、計画の立案に使用する判断基準等が常に最適なものになるよう見直しを行うこと」と規定し、原子力災害対策に係る専門的・技術的事項等を定めています。同指針は、2017年7月の改正を含めて、これまでに8回の改正が行われました。
 また、我が国の防災に関する総合的かつ長期的な計画である「防災基本計画」(1963年6月策定、2017年4月11日最終修正)の原子力災害対策編も修正されました [24]

A 原子力防災体制の強化
東電福島第一原発事故後、原子力規制委員会設置法等により、新たな原子力災害対策の枠組みが構築され、政府の原子力防災体制は図 1-4のようになりました。

図 1-4 平時と緊急時の原子力防災体制

(出典)内閣府「平成27年版 防災白書」(2015)

 具体的には、原子力災害対策指針に基づく施策の実施の推進に係る総合調整を行う原子力防災会議が常設されています。原子力緊急事態が発生した場合には、原子力災害に係る応急対策及び事後対策の総合調整を行う原子力災害対策本部が設置されます。さらに、発電用原子炉の事故時には、内閣官房長官、環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力防災)、原子力規制委員会委員長等を原子力災害対策副本部長に充てることとなっています。また、2014年10月には、「内閣府政策統括官(原子力防災担当)」が設置され、地域の原子力防災体制の充実・強化に係る業務を推進するとともに、関係省庁、地方公共団体等との平時及び緊急時の原子力防災に係る総合調整を一元的に担うことができるように組織体制が強化されました。また、防災基本計画(原子力災害対策編)には、災害予防、災害応急対策、災害復旧、原子力艦の原子力災害において、各機関が果たすべき役割等が具体的に記載されています [24]
 また、原子力災害発生時における原子力災害対策本部の事務局機能の強化を図るため、政府の具体的な対応体制等を定めた「原子力災害対策マニュアル」(2012年原子力防災会議幹事会決定、2016年12月7日最終改訂)が見直されました [25]
 なお、原子力防災体制は、今後も継続的な改善が必要であり、訓練等を通じて課題の抽出や改善が図られています [26]

B 地域防災計画・避難計画の策定と支援
 防災基本計画及び原子力災害対策指針により、原子力災害対策重点区域を設定する都道府県及び市町村は、当該区域の対象となる原子力事業所を明確にした地域防災計画(原子力災害対策編)を策定し、情報提供や防護措置の準備を含めた必要な対応策をあらかじめ定めておくこととされています。
 2013年9月、原子力防災会議は、政府を挙げて地域の防災計画の充実化を支援するため「地域防災計画の充実に向けた今後の対応」を決定しました [27]。これを受けて、同月内閣府原子力災害対策担当室が、原子力発電所の所在する地域毎に問題解決のための「ワーキングチーム」を設置し、関係府省庁による支援の取組を開始。2015年3月、ワーキングチームについては「地域原子力防災協議会」に改称し、機能強化の内容とともに、災害対策基本法に基づく防災基本計画にも明確に位置付け、関係省庁と関係地方自治体等が参加し、地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化に取り組んでいます。地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化が図られた地域については、避難計画を含む緊急時対応をとりまとめ、地域原子力防災協議会において、それが原子力災害対策指針等に照らし、具体的かつ合理的なものであることを確認しています。また、内閣府は原子力防災会議の了承を求めるため、地域原子力防災協議会における確認結果を原子力防災会議に報告することとしています。2016年12月末時点で、川内地域、伊方地域、高浜地域、泊地域、玄海地域の計5地域の緊急時対応について、原子力防災会議でそれらの確認結果了承されています。

C 緊急時の放射線モニタリングの充実
 原子力災害対策指針では、緊急時モニタリング等の実測値に基づいて緊急時における避難及び一時移転等の防護措置の実施を判断する基準(運用上の介入レベル)を導入しています [23]。また、国の統括の下で、地方公共団体や原子力事業者等の関係機関が連携して緊急時モニタリングを実施することと定めています。原子力規制庁は、原子力災害対策指針を補足し、緊急時モニタリングの目的、体制、内容等を示す資料として「緊急時モニタリングについて(原子力災害対策指針補足参考資料)」(2014年作成、2017年3月最終修正)を作成し、公表しています [28]
 原子力規制庁は、緊急時モニタリングの中核となる緊急時モニタリングセンターの体制やその運営に関し「緊急時モニタリングセンター設置要領」(2014年10月)を、緊急時モニタリングに係る要員や資機材の動員計画に関し「緊急時モニタリングに係る動員計画」(2015年1月)を策定し、緊急時モニタリング体制の強化を図っています [29]。また、地方公共団体と緊密に連携・協力しながら実効性のある緊急時モニタリングを行うため、2017年8月末までに、13箇所の原子力規制事務所に上席放射線防災専門官を配置しています。加えて、緊急時モニタリングの結果を集約し、関係者間での共有及び公表を迅速に行うことが可能な「緊急時放射線モニタリング情報共有・公表システム」を構築し、各種訓練において活用するなどして、緊急時モニタリングの実効性の向上を図っています [30]

D 原子力事業者における原子力災害対策
 原災法第3条には、原子力災害の拡大の防止及び復旧に対する原子力事業者の責務が明記されています。さらに、原子力災害対策指針では、「原子力事業者が、災害の原因である事故等の収束に一義的な責任を有すること及び原子力災害対策について大きな責務を有していることを認識する必要がある」と規定されています [23]
 原子力事業者は、原災法の規定に基づき、原子力事業者防災業務計画を作成し、原子力規制委員会に提出しています。この防災業務計画は原子力規制委員会のウェブサイト 8 上で公表されています [31]
 また、原災法では、原子力事業者に対して、防災訓練の実施とその結果の原子力規制委員会への報告及びその要旨の公表が義務付けられています。原子力規制委員会は、提出された原子力事業者防災業務計画及び防災訓練の報告に対して、必要な場合には、修正や改善等を命ずることができます。最近では、2016年6月に第6回目となる「原子力事業者防災訓練報告会」を開催し、各原子力事業者が実施した訓練の評価結果の説明や良好事例の紹介を行うなど、防災訓練の改善を図る取組をしています。

E 原子力防災における国際的な連携の強化
 原子力施設の周辺地域に対する原子力防災に関して、IAEA等の国際機関や諸外国においても様々な取組や議論が行われています [32]。 我が国の原子力防災の水準向上を図るためには、原子力防災に関わる国際機関や各国の動きを把握し先進的な知見を取り入れること、我が国の知見や経験を発信することが必要です。このため、原子力規制委員会では、IAEAの安全基準等の最新の国際的知見を積極的に取り入れる等、原子力事業者、国、地方公共団体等が原子力災害対策に係る計画の立案に使用する判断基準等が常に最適なものになるよう原子力災害対策指針の見直しを行うとともに、内閣府原子力防災担当では、各国の原子力防災を担当する部局との連携体制を強化するため定期的な意見交換の実施や、多国間訓練への参加を行うとともに、IAEA基準及び主要な原子力発電利用国の制度・運用等の調査を行っています [33]


(3)原子力事業者を含む産業界の原子力の自主的安全性向上に関する取組

 東電福島第一原発事故の教訓を踏まえ、原子力事業者には、規制基準に適合するにとどまらず、安全性向上への不断の努力を積み重ねることが求められます。
 原子力事業者を含む産業界は自主的安全性向上に取り組むに当たり、第三者の視点からの知見、意見も活用するため、2012年11月に、自主規制組織として原子力事業者等の意向に左右されることなく安全性を評価し、その改善に関する助言を行う一般社団法人原子力安全推進協会を設立しました。また、東電福島第一原発事故の以前には、発生頻度が極めて低い大規模な地震・津波などの自然災害への対応が十分ではありませんでした。このような災害のリスクを見逃さず、安全性を更に向上させるため、リスク評価の活用にも取り組んでいます。その手法として、確率論的リスク評価(PRA 9 )等を用いて、原子力発電所等の施設で起こり得る事故のシナリオを網羅的に抽出し、その発生頻度と影響の大きさを定量的に評価することで、原子力発電所の脆弱箇所を見つけ出し、その対策を図ろうとしています。原子力事業者を含む産業界は、一般財団法人電力中央研究所の下に設置された原子力リスク研究センターとの連携を通じて、PRAの高度化に取り組んでいます。原子力リスク研究センターは、原子力事業者を含む産業界による自主的安全性向上に係る研究開発の中核を担い、高い専門性を必要とする共通課題を解決するための研究開発を進めています。
 さらに、東電福島第一原発事故後に重要性が再認識されたシビアアクシデント対策強化の一環として、原子力事業者は、緊急時にも利用可能な移動式発電機やポンプ車などの資機材の配備といった、ハード面の対策だけではなく、事故時の作業員の対応能力を向上させるため、緊急事態を的確にマネジメントできる判断能力を備えた人材の育成を目指し、様々な事故状況を想定した訓練や体制の整備などソフト面の対策整備にも取り組んでいます。
 これらの取組の実施の前提には、原子力事業者に適切なリスクマネジメント体制が構築されている必要があります。このため原子力事業者は、安全を最優先して事業活動を行うことを宣言し、原子力発電所のリスク情報が経営判断に反映される仕組みを導入しています。安全性向上への取組については、原子力事業者におけるハードやソフト面の充実だけではなく、これらの活動について、立地地域の住民を含む関係者や国民に理解いただくことも重要であり、原子力施設におけるリスクやその対策に関して、情報提供や対話活動も行っています。
 これらの産業界の取組と並行して、経済産業省は、産業界が自主的に安全性を向上していく取組の在り方について検討を行うため、2013年7月、総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会の下に「原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ」を設置しました。さらに、学協会、原子力事業者、メーカー、産業界団体、政府の幅広い参加を得て、2014年5月、今後必要とされる取組の在り方と然るべきロードマップの骨格として「原子力の自主的・継続的な安全性向上に向けた提言」を取りまとめました。
 また、エネルギー基本計画(2014年4月閣議決定)策定後、軽水炉の安全技術・人材の維持・発展への対応も視野に入れ、2014年8月に、総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会の下に「自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループ」を設置しました [34]。原子力事業者を含めた産業界、学会、政府等による自主的安全性向上に係る取組を点検し、2015年5月に、「原子力の自主的安全性向上の取組の改善に向けた提言」を取りまとめました [35]。さらに、日本原子力学会と協力して、東電福島第一原発以外の廃炉を含めた軽水炉の安全技術・人材の維持・発展のため、国、事業者、学会等の関係者が担うべき役割や各技術課題の優先度を明確化した「軽水炉安全技術・人材ロードマップ」も策定し、原子力事業者の自主的安全性向上を促しています [36]


コラム 〜原子力利用のリスクマネジメントについて〜

 原子力委員会は2016年12月27日に「軽水炉利用について(見解)」を取りまとめました。
 見解は、「依然として国民の原子力への不信・不安が根強く残っている状況で、原子力の利用にあたっては、大前提として、国や関係機関が国民の不信や不安に対して真摯に向き合い、理解を深めるためのあらゆる取組をより一層充実させることが必須である。また、国民の理解を得るためには、さらなる安全性向上に向けた十分な取組がなされていることが必要不可欠である。この状況を踏まえ、我が国の原子力発電所において運用されている技術は全て軽水炉技術であり、しっかりと足元を見るべき」との原子力委員会の考えを示したものです。
 その中の留意すべき事項のひとつとして「安全性向上〜リスクマネジメントの概念〜」を取り上げ、以下のような点を指摘しました。

  • 東電福島第一原発事故以前、「規制基準を満たせば安全である」という認識が原子力関係者間で共有され、事業者による継続的かつ自主的な安全性向上に向けた取組が定着しなかった。その反省・教訓を踏まえ、事業者が中心となって取り組んでいる自主的安全性向上のための活動が、米国の好事例も参考に、より一層効果的なものとなるような改善も求められる。
  • 米国では、スリー・マイルアイランド原子力発電所事故以降、原子力発電運転協会(INPO)・原子力エネルギー協会(NEI)等を中心とした自主的な安全性向上やリスクマネジメントの実践とともに、稼働実績及びリスク情報に基づいた規制の導入による客観性の向上に取り組んできた。その結果として、重要事象の発生頻度の減少や、稼働率向上、出力向上を達成し、発電電力量の増加にもつながり、安全性と経済性を両立させた。
  • 我が国においても、自主的安全性向上の取組の一環としてリスク評価を活用しつつあるが、確率論的リスク評価(PRA:Probabilistic Risk Assessment)手法等を用いたリスク評価を実施すること自体を目的として捉えている場合がある。本来は、算出された定量的情報(リスク値)のみならずシナリオ等も含めたリスク評価結果及び第三者による評価を総合的に踏まえて、経営トップがリスク管理にコミットし、多数の選択肢の中から判断して必要な措置を講じることが重要である(ISO31000の考え方とも共通)。このリスクマネジメントの概念を関係者全員で共有していくとともに、実効性を確保していくことが求められる。
  • さらに、事業者側と政府側の間で、リスク情報も活用し、対等で建設的な意見交換を透明なプロセスの下で行い、効果的・効率的な安全確保の仕組みを構築していくことも重要である。
  • このリスクマネジメントの構造を全体的に確立するためには、事業者や政府等の原子力関係者だけでなく全てのステークホルダーにより、この認識の共有を図っていくべきである。これにより、「取り締まり型」から「予防型」の安全確保への移行が実現されると考えられる。

コラム 〜原子力事業者間の相互協力体制の強化について〜

 東電福島第一原発事故の発生を防ぐことができなかったことを真摯に反省し、事故の反省と教訓を活かし、このような事故の再発防止のための努力や、更なる安全性の高みを追求していくことが求められます。このような状況を踏まえ、原子力事業者間で連携して安全性向上が進められています。例えば、炉型ごとの相互技術協力協定を締結し、自主的安全性向上に係る情報共有等を図るとともに、地域ごとの相互協力協定を締結し、原子力災害時における協力、廃止措置実施時における協力についての取組を強化しています。

(出典)第38回原子力委員会 資料第3-2号 関西電力株式会社「安全性向上に向けた関西電力の取組みについて」(2016年)

(出典)第38回原子力委員会 資料第3-2号 関西電力株式会社「安全性向上に向けた関西電力の取組みについて」(2016年)



  1. 国家行政組織法第3 条第2 項の規定に基づき、設置され、上級機関(例えば、設置される府省の大臣)からの指揮監督を受けず、独立して権限を行使することが保障されている合議制の機関です。
  2. 原子力規制委員会設置法第4条第1項において規定されています。
  3. Integrated Regulatory Review Service
  4. https://www.nsr.go.jp/activity/bousai/measure/emergency_action_plan/index.html
  5. Probabilistic Risk Assessment

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