平成21年版

原 子 力 白 書
     
平成22年3月

原子力委員会





平成21年版 原子力白書 概要(1.73MB)





刊行によせて


 我が国における原子力の研究、開発及び利用は、原子力基本法に則り、これを平和の目的に限り、安全の確保を旨とし、民主的な運営の下に自主的に行い、成果を公開し、進んで国際協力に資するという方針の下、将来におけるエネルギー源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与するべく行われています。

 原子力委員会は、このための国の政策を企画・審議・決定する責任を踏まえ、「原子力政策大綱」にその基本的方針を示して関係者に尊重していただいています。「原子力白書」は、この方針に基づく我が国の原子力研究、開発及び利用における新しい動きについて、広く国民の皆様にご紹介するものです。

 昨年9 月に発足した新政権は、地球温暖化対策に関して意欲的な政策目標を打ち出しました。9 月22 日に行われた国連気候変動首脳級会合で、鳩山総理大臣がすべての主要国による公平かつ実効性ある国際枠組の構築や意欲的な目標の合意を前提に、我が国は2020 年までに1990 年比25%の温室効果ガスの排出削減を目指す旨を表明したのです。

 原子力発電は、発電過程において二酸化炭素を排出しない、大規模かつ安定的な発電技術として、我が国をはじめ世界の主要国で地球温暖化対策やエネルギー安全保障の確保の観点から基幹電源の一つとして活用されていますから、この目標の実現に向けて大きな貢献が可能です。

 また、昨年4 月の米国オバマ大統領の「核兵器のない世界を目指す」との決意表明を受けて、核軍縮、核不拡散に関する新たな動きが始まりました。昨年9 月には国連安全保障理事会首脳級会合が開催され、鳩山総理大臣をはじめとする主要国首脳により核軍縮、核不拡散、原子力平和利用、核セキュリティに関して国際社会が共同して取り組むことが合意されたことは画期的なことでした。

 さらに12 月には、政府が「グリーン・イノベーション」や「ライフ・イノベーション」等を日本の強みを活かす成長のための戦略課題とする「新成長戦略(基本方針)」を閣議決定しました。原子力委員会は、原子力に係る科学・技術に関する研究開発を推進し、その成果を踏まえて、我が国の発電設備に占める原子力発電の割合を増加させ、海外において高まる原子力発電所新設需要に対して原子力発電機器設備を供給し、医療分野におけるCT やPET による診断技術や放射線によるがん治療技術を内外の医療分野における普及させていくことにより、これに貢献することができると考えています。

 このように、最近に至り、原子力の研究、開発及び利用に関する取組を巡って様々なイノベーションをという期待が高まっていることが強く感じられます。そこで、この原子力白書では、「原子力利用の新しい時代の始まりに向けて」と題する第1 章において、こうした取組の現状を概観するとともに、今後の課題についてまとめています。

 現在、我が国においては、新元素の発見につながる成果を産み、重粒子線を用いたがん治療技術が高度先進医療技術として高い評価を得ているなど、学術分野から医療、農業、工業などの多岐にわたる分野で放射線が利用されており、供用が開始された大強度陽子加速器施設(J− PARC)の生み出す成果に世界の注目が集まっています。他方、原子力発電の分野においては、54 基の原子力発電所がエネルギー安全保障と温室効果ガス排出抑制に貢献しており、新潟県中越沖地震を踏まえた各原子力施設の耐震安全性の再確認、諸外国と比較して低水準にある原子力発電所の設備利用率の改善、使用済燃料の貯蔵能力の増強、プルサーマルの推進、原子力発電所の新増設、六ヶ所再処理施設の本格稼働、高速増殖原型炉「もんじゅ」の再稼働、高レベル放射性廃棄物の処分施設建設地の選定等、その役割の一層の充実と拡大に向けて重要な取組が進められています。

 これらの取組の中には困難に直面しているものもあります。そうした事業にあっては、いまいちど足下を見直し、その困難の克服に向けて、リスク管理を行いつつ、しっかり取り組むことを期待します。また、政府と民間はそれぞれの役割と責任を踏まえつつ、国民の利益の観点からその推進に協力していくべきでしょう。

 もちろん、こうした活動を進めるに際しては、国民の皆様に、それが国民の利益に資することについてご理解をいただき、ご協力をいただくことが不可欠です。原子力委員会は、これまで、我が国の原子力政策を、企画、審議、決定するにあたっては、透明性を確保し、広く国民の声を聴き、対話を重ねて参りました。今後ともこのことの重要性を片時も忘れることなく、その任務を果たして参ります。この原子力白書が、原子力政策に対する皆様のご理解を深めるための一助となれば幸いです。

平成22年3月
原子力委員会委員長 近藤駿介






目  次


目次・刊行によせて(468KB)

第1章 概観 〜原子力利用の新しい時代の始まりに向けて〜(2.27MB)
第2章 原子力の研究、開発及び利用に関する基盤的活動の強化(2.55MB)
第3章 原子力利用の着実な推進(2.30MB)
第4章 原子力研究開発の推進(1.23MB)
第5章 国際的取組の推進(1.23MB)
第6章 原子力の研究、開発及び利用に関する活動の評価の充実(172KB)
資料編(1.73MB)

第1章〜第6章 一括ファイル(9.98MB)